第四話 特別クエスト-3
気球に見慣れてくると、今度はワクワクのほうがだんだん勝ってきた。こんなものに乗ってたどり着く場所が、一体どんなところなのか。どんな気候、どんな地形、どんな生態系――
「ワクワクするなぁ」
満面の笑みでテトに言われ、一度は邪険に返そうかとも思ったが、これから仲間としてよろしくやっていかなくてはならないと思い直す。
それに、そんなに悪いやつじゃないってことは、分かってきた。
「そうだな」
薄く笑って、俺達は同時にバスケットへ乗り込んだ。芝生の上を大きく弾んだバスケットは、四人が入ると膝を曲げてしゃがむのも一苦労なほど窮屈になった。
頭上には、ゴォォォ…と音を立てて炎を噴出する大きなバーナー。温めた空気が昇り、分厚い球皮を膨らませつつ上方へ押し上げる。球皮から伸びた頑強なワイヤーがバスケットの四方に連結して引っ張り、今にも俺たちを空に運ぼうとしている。
「お気をつけて」
バスケットの底部を繋いでいたロープが切られると、いよいよ気球はゆっくり浮上を始めた。手を伸ばせば触れるところにあった芝生がするりと離れていく。内臓が重たくなるような不安感と、それを上回る高揚で四人まとめて歓声を上げた。
「いってきまーす!」
カンナが地上に手を振る間にもゆっくり着実に上昇していき、国を守る壁面の木目がどんどん眼下に流れ、やがて途切れた。気がつけば、風に揺れる小麦畑も、俺と白皇の家も、中央区の城や街並み、そして、堅牢な木の壁にぐるりと囲まれたルミエール王国の全てが、鳥になったように一望できた。
あまりの美しさに息を呑む。俺たちを乗せた気球は、まるで茜色の空へ吸い込まれるように、なおもゆっくり上昇を続けていった。




