第十四五話「舞台裏」
「このキャラ作り、そろそろやめにしたいんですけど、エンタさん」
「いや、いや、視聴者のためにもやってもらわないと困るよ~、ムゲンちゃん」
撮影終わりのスタジオで演者たちは、べらべら楽しく会話していた。
「スタジオ側はもう少し演者のことを考えてもらいたいですよ!」
「…あと、ギャラも渋いし」
ぼそっと言うムゲンちゃんの目は、しおれた花だけが咲いている花壇のようで、
どこからも感情が沸いていないよう…
「あんまり言わない方がいいと思うよ、お偉いさんに聞かれたら大変だ」
少し距離を置いて、エンタはしゃべる。
「……」
「そうですよ、お偉いさんは地獄耳かもしれません」
「……」
「あなた、誰ですか?」
ムゲンちゃんが言葉を発した次の瞬間…
彼女の顔面は地面に打ち付けられていた。
「イタっ」
「……」
「…等実様、…いつもお世話になっております」
ただ深く頭を下げる二人、ムゲンちゃんの頭を力強く抑える、エンタさん。
まるで、静かな絶対王政のような形がそこにはあった。
「……」
「そんな勢いよく頭を下げなくてもいいですよ、せっかくのかわいいお顔が汚れてしまいますから」
等実は流血するムゲンちゃんの額に絆創膏を貼り、こう言った。
「私、あなたのきれいな演技が好きだったのですが…」
「……」
ゲホ、ゲホ…
「……」
真っ白なキャンバスにイチゴをぶつけたときのような作品が、
最優秀賞に選ばれる理由をムゲンちゃんはこのとき初めて知った。
ゲホ、ゲホ…




