ローズside
これで最後です。
ウィルバートがジュリアと離婚させられた原因となった、ローズ視点の話です。
よろしくお願いします。
うちは貧乏。
私が生まれた時から貧乏。
父親は下位文官。領地無し。
位だけ。
王都に住んでるけど、裕福な平民の方がいい暮らしをしてる。
私はローズ・ディケ男爵令嬢。18歳。
焦げ茶色の髪と目の色。少し背が低い。けど胸は大きい。
垂れ目気味の大きな目で顔はタヌキっぽいと思う。
友達は可愛いって言ってくれるけど。
成績は悪い。
だけど、仕方ないじゃん。
勉強する暇なんて無いんだから。
父親はいつまで経っても出世しない。気が弱い。ボソボソしゃべる。何言ってるかわかんない。
父親の方がお母様より5歳も年下。
私の容姿はお父様に似てる。
母親は散財ばかり。いつもツンケンしてる。
自分の母親を悪く言うのは良くないけどさ。
子爵家令嬢だったんだって。
お母様はバツイチでお父様と結婚した。
お母様は「家が貧乏なのはお父様が全然出世しなくてお給金が安いから」って、お父様をなじる。
お父様はしょんぼりしてるだけ。
私はお母様が散財するから貧乏だと思う。
私は両親2人とも、、、、あんまり好きじゃない。
影は薄いけどお兄様もいる。お兄様も気が弱い。優しいけど。お兄様は容姿はお母様に似てる。だから、お母様はお兄様がお気に入りだ。
貧乏なせいで、我が家はお父様の乳母だった夫婦だけが使用人。
サムじいとネリーって名前。もう、年寄り。今では、あんまり働けない。身体が辛そうだ。
私もお兄様も乳母夫婦に育てられた。
だから、私は乳母夫婦の仕事の手伝いをしてる。少し大きくなってお手伝いが出来る頃から、ずっと。
朝は早く起きてネリーと朝ご飯の支度。お弁当の用意。お父様、お兄様、自分の。
家事をしてから学校へ行く。
ネリーと洗濯をして、掃除して、洗濯物を干してから。
学校は下位で貧乏な貴族令嬢がほんの少しいる。
そこそこ裕福なお家の平民達が通う女学校に通ってる。
学校では疲れて寝不足で居眠りしてしまう。
宿題も提出を忘れたり、遅れてばかり。勿論成績は悪い。
友達は少しだけど、いるんだ。友達は優しい。
私の家の愚痴を聞いてくれる。
お菓子をくれたり。文房具をくれたりする。
可哀想に思ってくれている。
事実、私は可哀想だと思う。ありがたく貰う。
お菓子は持って帰って、サムじいとネリーと、3人で食べるの。
帰宅したら、洗濯物を取り込んで、アイロンをかける。
衣類をチェックして繕うものはこの時間にする。
それが終わったら夕食の支度。
夕食がすんだら、後片付け。
家族と乳母夫婦が入った風呂に最後に入って、風呂を洗う。
クタクタで、宿題せずに寝てしまう。
コレが私の1日。
お父様はお仕事へ。
お兄様もお仕事。お兄様は騎士団員なんだ。
お兄様のお友達で、優しい人を紹介してもらうつもりなの。
学校を出たら、この家を出たいから。
お母様はお茶会へ。
頑張って節約しても、お母様の衣装代に消えてしまう。
お母様がお友達にあげる手土産とかプレゼントにもお金がかかる。見栄っ張りなんだから。
こんな私でも、貴族令嬢だから年に数回だけ、王家のパーティに行けるんだ。半年くらい前に初めて行った。
とってもとっても素敵だった。
お母様のドレスを手直しして、リメイクして若者風にした。私はお針子さんになれそうなくらい上手なんだ。子供の頃からしてるから。
お母様は若作りだから、ドレスも男爵夫人にしては派手目。だから、何とかなった。
「ローズお嬢様、お綺麗ですよ」
ネリーが髪を結ってくれた。シワシワの震える指で、頑張ってくれた。
「素敵な殿方に出会えると良いですね」とネリー。
「うん、頑張るよ」
素敵な人に出会えたら良いな。
だけど、王宮は別世界だった。
ご令嬢達の華やかなドレス。素敵な扇。
貴公子のスマートな立ち振る舞い。
私達とは全然違う。
友達とコソコソ隅でパーティを見学。美味しいお料理を食べた。
友達は早めに帰って行った。
「ローズ、早く帰った方が良いよ」って言われた。
「素敵だもの。もう少し眺めていたいの」私。
間違いだった。
デブの中年男に絡まれた。
断ってるのに、引き摺られるように休息室に連れ込まれかけたのだ!
そこに良い服を着たカッコ良い貴族男性が声をかけた。
「ワルード男爵、お久しぶりですね。先日頂きましたワイン、美味しく頂きました。あのワインについてお聞きしたくて、よろしいですか?」
「あ、ザステイル伯爵の、ウィルバート様。こ、こんばんは。今は、その、取り込み中でして。ご、後日お伺いいたします」デブ中年。
「そうですか。おや、君はもう帰るところだろう?送ろう」
ザステイル伯爵家の人がデブ中年から私を引き剥がした。
「な、な、その娘は今からわしと」デブ中年。
「お知り合いかい?」
ザステイル伯爵家の人が私に聞いた。
「いいえ!違います!帰ります!」
ザステイル伯爵家の人が素敵にエスコートしてくれた。
小説の中の王子様って、こんな人だと思った。
「一人でいたら危ないよ。ご家族は?」
聞かれたけど。
うちは家族バラバラだから。
一緒に来たけど、それぞれ1人で帰るように言われた。
そう言ったらザステイル伯爵家の馬車に乗せてくれた。
素敵な場所。豪華な内装。クッションも手の込んだ刺繍がしてある。
馬車に住所を伝えて、送ってもらった。
お姫様の気分。心がフワフワした。
馬車は王宮へ戻っていった。
ザステイル伯爵家のウィルバート様、素敵な人。かなり年上だけど、素敵。
学校で素敵な人の話を友達にした。
「ウィルバート・ザステイル伯爵家令息?だめ!有名よ」
友達がその人の噂を言った。
曰く、誰とでも一夜を共にする、って。
そんな人に見えなかった。
噂より、私を助けてくれたあの人を信じるよ。紳士で素敵な人。
お母様が勝手に私の結婚を決めた。
学校が休みの日、突然着飾らせて連れ出された。
同じ男爵位のお屋敷。
雲泥の差。
文官でも出世すると、暮らしが違うと実感した。
もしかしたら、素敵な人かもしれない。
ちょっと夢を見た。
現実は酷かった。
王宮パーティでの、デブ中年がいた。デブ中年の父親だろう老人と、デブ中年の息子とおぼしき少年(私より少し年下くらい)。
お母様はペコペコして挨拶した。
私も挨拶した。
けど、絶対嫌だ。どうすれば良い?
「私がローズの夫になる」
そう言ったのはデブ中年の父親の老人。
ええ??!!
親子孫の3人は私の身体をジロジロ見て(特に胸)ニヤニヤした。
怖い。恐怖で漏らしそうになった。ガタガタした。
「学校を卒業したら、わしの家に来い」老人が言った。
「わしの家で2人で暮らすのだ。社交は無い。家族がたまに来るだけだ。そこの息子と孫がな」
老人がゲス中年と少年を横目で見た。
ゲス中年と少年がニヤニヤした。
「そうだな、たまに知り合いも来る。お前に接待を頼む」老人がニヤーッとした。
お母様がお金の話をした。
私は売られた。
死にたい。
卒業まで、あと半年。
それまでに何とかしなきゃ。逃げなきゃ。
家出?お金が全くない。
私は馬鹿だから、働ける所なんてあるかな?
お友達に協力してもらって、家に置いてもらえないかな?
私の未来は酷い。
娼婦と同じ。ううん、それ以下。奴隷。
死にたい。死ぬのは怖い。
逃げたい。どこへ?行くあてなんか無い。
わかってる。私は臆病だから。
あのゲス3人に良いようにされて、惨めに生きるんだ。
どうせなら。
あの素敵な人と一度で良いから一夜を過ごしたい。
そうしたら、あとの人生どんだけ惨めでも、少し幸せになれる。
だから。
王宮パーティへ行った。
あの人を探した。
声をかけた。
一夜だけ。
誘った。
「お願いします。家のために年取った方と結婚させられるんてす」
ウィルバート様は受けてくれた。
「良いけど、私は跡継ぎになる子供が欲しい。男子だ。いいかい?私の妻はジュリアだけ。子供だけが欲しい。そこを間違えないでね」ウィルバート様。
わかってる。
でも、子供が出来たら、家を出れる。あのクソゲスと結婚せずに済む。そうなったら良いな。
ウィルバート様と一夜を共にした。
優しくしてくれた。
その思い出だけで良い。
もしも、子供が出来たら嬉しいな。
神様はいた。
私はウィルバート様のお子を授かった!
身体がだるく、食べ物が食べれない。吐く。月のものが来ない。
学校の友達に相談したの。
妊娠中かわかるってギフト持ちの子が学校にいて、お腹の中の子供の性別もわかるんだって。
見てもらって、男の子だったの!
私はあの夜、一度だけ、ウィルバート様としかしてない。ウィルバート様の子供!
家を出れる!
私はザステイル伯爵家へ向かった。
保護された。もうあの家に帰らなくて良い。
妻になんて望んでなかった。そんな烏滸がましいこと。
ザステイル伯爵家の用意した家で暮らした。使用人までつけてもらえた。幸せだった。
だけどウィルバート様に一度も会えなかった。、、さみしい。
男の子を産んだ。
ザステイル伯爵ダリオン様が大喜びした。
男の子はトーマスと名付けられた。
ダリオン伯爵の亡くなったお兄様のお名前なんだって。
赤ちゃん、とっても可愛い。
離れたくないな。
遠くない日に、私はこの子を取り上げられる。
生活は見てくれるって言ってたから、何とかなる。家に戻ったら売られるもの。
ザステイル伯爵ダリオン様が来て言った。
「ウィルバートの妻になりなさい。もっと男児を産んでほしい。準備するから待っていなさい」
ウィルバート様が奥様と離婚した。
そして、なんと私と結婚したと聞いた。
いいの?
こんな私がウィルバート様の妻になって良いのかな?
一度もウィルバート様に会っていない。ウィルバート様に会いたい。
ダリオン様が私とトーマスをザステイル伯爵家に迎え入れてくれた。
ウィルバート様に会えると思って嬉しかった。
ウィルバート様は居なかった。
ウィルバート様はザステイル伯爵家を出たそうだ。
そんな。
ダリオン伯爵も伯爵夫人も滅多に見かけない。
会えても挨拶するだけ。
私と伯爵夫妻とは生活の場所が違っていた。
伯爵夫妻は本館で暮らして。
私もトーマスは西館の端っこ。
暮らし始めてわかった。
私は伯爵夫妻から蔑まれてる。
馬鹿だから?位が低いから?
使用人達が私によそよそしい。
同じ位の年のメイドを捕まえて、話を聞いた。
なんてこと。
私はウィルバート様に憎まれていた。
ウィルバート様の奥様とお嬢様はダリオン伯爵にこの家を追い出されていた。私のせいで。
ごめんなさいごめんなさいごめんなさい。
ワンワン泣く私。
使用人達がビックリしたみたい。
使用人が優しくなった。
乳母の名前を呼んだ。
「ネリーに会いたい。サムじいにも会いたいよー」
いつの間にか執事さんが来てた。
「ネリーとサムじいとは?」と聞かれたから。
「ディケ家の使用人で、私を育ててくれたの。年寄りで、私が居なくなって困ってると思う」って言った。
一ヶ月くらいしたら、ネリーとサムじいがザステイル伯爵家に来た。執事が雇ってくれたんだって。
2人は別れた時よりヨボヨボになってた。お母様に殴られたり蹴られたりしてた。ネリーは足を引きずって杖をついている。
2人に再会してワンワン泣いた。
執事さんが二人の様子を見てお医者様を呼んでくれた。
ネリーは足を骨折してた。お母様のせい。
ネリーが私の専属侍女になった。
ネリーもサムじいもトーマスを可愛がってくれた。
ザステイル伯爵家で、侍女さんから勉強を教えてもらった。
マナーとかも。
伯爵家の侍女さんは私の通った学校より良い学校に通ってたお嬢様だから。
このお屋敷にウィルバート様はいない。
寂しい。
いつか、会えたら良いな。
話を聞いてほしい。せめて、謝りたい。
奥様が戻られたら、出ていくから。ううん。いつでも出て行く。
ネリーとサムじいとで、3人で暮らさせてほしい。
トーマスは、ザステイル伯爵家に渡さなきゃならない。ゴメンね。
何年かたった。
ウィルバート様はこの家に帰らない。
サムじいが亡くなった。
泣いた。
少ししてネリーも亡くなった。
二人を穏やかに逝かせてもらえて、ザステイル伯爵家には感謝してる。
心がポッカリ穴が空いたみたい。
私は家族が欲しかった。
愛して欲しかった。
私は愛されない。
私に家族はいない。血がつながった他人が家族だった。
サムじいとネリーは私を愛してくれた。もういない。
トーマスとも、離れなきゃならない。
トーマスを愛している。
可愛い。
抱っこをせがんで、ギュッてしてくれる。幸福だ。
束の間の幸福。いつか失くす幸福。トーマスだけが私を必要としてくれる。愛してくれてる。私とウィルバート様を繋いでくれる宝物。ウィルバート様と私の子供。
トーマスが5歳になった。
お城から人が来た。
色々聞かれて、正直に答えた。
なんだろう?
「あなたは◯◯で、◯◯◯◯◯◯◯◯◯◯◯◯◯◯◯◯◯。お気の毒ですが◯◯◯◯◯◯◯◯」
???
何言ってるの?
私はウィルバート様の子供だから、産んだの。
好きな人の子供だから産んだの。
そんな覚えは無いもの。
ウソよウソウソウソウソウソウソウソウソウソウソウソウソ、、、、、、、。
助けて。
助けて。知らない。
幸せになりたいの。
私は幸せになっちゃダメなのかな?
ネリー、助けて。私ももうネリーの所へ行きたい。
誰も愛してくれないの。
信じたくないの。
トーマスはウィルバート様との子供じゃないなんて。
知らない男の子供を妊娠して、育ててたなんて。
知らないうちに殺人犯の男に犯されていたの?知りたくない。信じたくないの。
もう何も知りたくない。
愛されないと突きつけられるのは嫌。
世界は辛い。逃げさせて。もう何も知りたくない。
世界は辛いことしか用意してくれない。
私は暗闇に眠ることにした。
起きなくていい。
辛いことしかないもの。
もう嫌なの。起こさないで。知らせないで。
神様は私にはいないから。
聞いたことのあるかもしれない、声がする。
誰だったたかな?
名前を呼んでくれるの。
でも、もう辛いのは嫌。
起こさないで。
誰も私を愛さない。
わかってる。わかってるから。
私なんか生まれて来なければ良かった。
目が覚めたら、朝から晩まで働かなきゃならない。
目が覚めたら、あのクソゲス達がいるかも知れない。
、、、、目が覚めたら、大好きなウィルバート様から蔑んだ目でみられる。
ウィルバート様に「嘘つき」って言われる。きっと酷い言葉を言われる。罵られるの。
トーマスがウィルバート様の
子供じゃないから。
私はウィルバート様を騙したから。
騙してウィルバート様の奥様とお嬢様を追い出したから。
怖い。怖い。怖い。怖い。
愛してるトーマスを愛せない。
もう嫌なの。目覚めたくない。
死なせたままにして。
、、、声がするの。
大好きなウィルバート様の声がする。
そんなわけないの。
ウィルバート様が優しくしてくれるわけ、ないの。
私は罪人なの。
愛されたいの。愛されないの。
傷つきたくないの。傷つけられるの。
だから、この暗闇が私の居場所。
暗闇が私を守ってくれる。
ここにいさせて。
居場所がないの。
もう、嫌なの。
声が、するの。
きっと幻想がそうさせてる。
ウィルバート様が優しくしてくれる、夢。
なら、この夢の中にずっと居させて。
お願い。
嬉しい言葉の幻想の日々。
夢の中で、私は幸福なの。
夢の中でウィルバート様が笑いかけてくれる。
私も笑う。
夢の中でウィルバート様がトーマスのお父さんになってくれた。嬉しいな。
夢の中で、私はウィルバート様と家族なの。幸せ。
神様、ありがとう。
素敵な夢を見せてくれて。
評価して下さった方、ありがとうございました。
ブックマーク下さった方も、ありがとうございました。
設定だけのローズって、どんな子なんだろう?
と考え始めて、できた子です。
拙い物語に最後までお付き合い下さったかた、ありがとうございました。
何個でもいいので、星に評価つけて頂けたら嬉しいです。




