表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
魔法少女が死ぬ前に  作者: 宮塚慶
第1章 普通の世界を、変える出逢い

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

18/53

第17話 二人の魔法少女

 俺が廊下に出て施設の中を見回していると、向こうから二人組の少女が歩いてきた。

 一人は褐色肌の女性で、メッシュの入った派手な金髪を左側にまとめて巻いている。指先には長い爪とキラキラのデコレーションが光っており……一言で言うなら、ギャルだ。

 あれも魔法少女なのだろうか。ウイカとはあまりにも印象が違いすぎて戸惑う。

 もう一人はウイカと同じぐらいの低身長少女。ミディアムショートの髪は癖っ毛で跳ね回っており、装飾品も特に身に着けていない。パッと見は内向的な印象。対照的な組み合わせの二人だと思った。

 と、ギャルの方が俺に気づいた。何故かニヤりと微笑み、高いヒールのブーツをカツカツと響かせてこちらに駆け足で近づいてくる。


「あー! 君が噂の……ふーん。へえー」


 言いながら、俺を上から下までじろじろと見まわしている。


「な、なんですか」


 近づいてきて分かったが、身長も俺より少し高い。ヒールの分を差し引いてもギリギリ負けている気がする。

 大きく胸元の開いた服を着ていて、グラマラスな体型は目のやり場にも困るのだが、少女は俺の反応を一切意に介さず、さらにずいと近づいてきた。


「君、あれでしょ? ウーちゃんの任務の子」

「う、ウーちゃん……?」

「そう、ウイカ・ドリン・ヴァリアンテ。あれ? 知らない?」


 いや、ウーちゃんと言われてピンと来るわけないだろ!

 かなり軽い口調の少女だが、おかげで警戒心は薄れた。ジェラルド司令との会話では緊張感があったので、俺もだいぶ不安になっている。

 少女はにこやかに挨拶した。


「あたしはドロシー・スターホーク。よろしくー! こっちはメアちゃん」

「め、メアリ・ファース。……どうも」

「ああ、えっと。荒城勇人です」


 丁寧に名乗られたのでこちらも返したが、ギャルのドロシーさんとは打って変わって、メアリさんはあまりこちらに良い反応を見せていない。元々目つきはかなり鋭そうだが、それとは別にこちらを睨みつけている。

 俺、何かしたかなあ。

 そんなメアリさんの反応にも構わず、ドロシーさんは俺に提案してきた。


「あれでしょ、ウーちゃん捜してるっしょ? もう部屋に戻ってるから、案内してあげよっか?」

「ありがとうございます、助かります」

「あたしらも居住区戻るからねー。それに、君のことは知っておきたかったし」

「?」


 よく分からないが、渡りに船だ。この施設の構造はまったく分からないし、そもそも言語も入り乱れている。案内図も確認したが英語表記で、俺の語学力では心許なかった。

 ……そういえば。


「お二人とも、日本語お上手ですね」


 二人が歩き出したので、付き従いながら問いかける。

 ドロシーさんは再びニヤりと笑う。笑顔を見せてくれるのは助かるが、笑うところなんてあっただろうか。


「あたしらね、今の任務が終わったら日本担当になるんだってー」

「担当?」


 魔法少女は地域別に割り当てられていたのか。それも初耳だ。

 日本での任務があるから日本語を覚えたのだろうか。どれぐらい勉強したのか分からないが、まったく気にならないネイティブな発音で感心する。

 というか、そういう仕組みならウイカの日本語も勉強の賜物たまものなのかもしれない。


「日本は比較的安全だったから、ウーちゃん一人で大丈夫だったんだけどね。最近は獣魔の量も増えちゃったし、増員タイミングだったんだー」

「へえ。そういう感じだったのか」


 日本の担当はこれまでウイカ一人だったようだ。戦闘中、増援が来ないのかと藁にもすがる思いで願ったのに、無駄だったのだと分かった。

 しかし、獣魔が増えているというのは只事じゃない。今日のバトルでは明らかにウイカも苦戦していたし、あんなのがどんどん出てくれば本当に身がもたないだろう。

 ……やっぱり、俺が。


「そうそう。君さ、魔法が使えるってマジ?」

「そう、みたいです。今日はじめて使いましたけど。……というか、もう知られてるんですね」

「ま、ねー。特例ってことで、今施設内はその話題で持ち切りだよーん」


 言われてみると、廊下をすれ違う他の魔法少女らしき人たちもみんな俺の方を見ている。最初に此処へ着いた時もそうだった。

 が、正直言ってその反応はあまり心地よくないものだった。ドロシーさんの隣にいるメアリさんも明らかにこちらを警戒しているし、他の人たちも基本的に俺には嫌疑の目を向けている気がする。俺から視線を送ると全員逸らしてくるし。

 ドロシーさんだけが優しい。


「みんな見てるねー。しゃーないか」

「あの、あんま好意的な感じがしないんですけど」

「んー? そりゃしゃーないよ。あたしも、君のこと嫌いだし」

「……え?」


 訂正。ドロシーさんも優しくなかった。

 嫌われるようなことをしたつもりは一切ないし、なんならジェラルド司令は彼女らを助けるために力を貸せとまで言っていたのに。

 救世主として崇め奉られるのは趣味ではないが、それにしたって温度差が激しい。ジェラルド司令も歓迎してくれるような温和な人ではなかったので、基本的にみんな冷たいのかもしれないが……。


「俺、なんで嫌われてるんです……?」

「えー? 分かんないかあ。まだまだだねー」


 質問したのに、思いきりはぐらかされた気がする。

 メアリさんの様子もチラりと確認するが、やはりこちらを警戒しているというか、できれば会話したくないという反応だ。

 なんだか知らないが歯がゆい。

 とにかく、話しながら廊下をぐねぐねと曲がり、階段を上って別のフロアに出たところでドロシーさんは足を止めた。


「はい。道案内はここまでー。ウーちゃんの部屋はそこね」


 いくつか並んでいる扉の一つを指差す。ご丁寧に表札が出ており、アルファベット表記だがウイカの部屋だと分かった。

 嫌われているのは釈然としないが、ここまでの道のりは助かったのでお礼はきちんとしておこう。


「丁寧に、ありがとうございました」

「いいっていいって。……あ、そだ」


 ドロシーさんが俺の耳元に顔を近づけてきた。

 彼女の長いまつ毛がやたらと印象的に映り、俺はドキッとする。


「ウーちゃんと話し終わったらさ。あたしの部屋にも来てよ。この廊下の突き当たりの部屋だからさ」

「えっ!?」


 話の内容もかなり緊張するものだった。それって、どういう……?

 しかし、詳しく聞く暇もなくドロシーさんは手を振りながら離れていく。一緒に歩いていたメアリさんは俺に一切目もくれず、二人一緒に廊下の向こうへと消えていった。


「……なんだったんだ」


 一見優しく接してくれたが、ドロシーさんはハッキリ俺が嫌いだと言った。メアリさんも態度から見て同意見なのは明らかだ。

 すれ違った他の魔法少女たちも、外から来た俺が物珍しいというだけではない、明らかな警戒心を見せていたように思う。

 しかしその上で、ドロシーさんは俺を部屋へと招待した。なんだか煽情的せんじょうてきな誘い文句だったが……これ、大丈夫か? めちゃめちゃ俺のことを憎んでいて、部屋で拷問されたりしないよな?

 考えてもらちが明かない。

 まずはウイカと話をするところからだ。俺は意を決して、彼女の部屋の扉をノックする。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ