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僕はテイマー  作者: 鳥越 暁
伯爵昇爵と領内経営
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儀式の裏で(ラトレル編2)

昇爵式、婚姻の儀までのラトレルの動き

身なりを整えさせると不審者?はそれなりに見られるようになった。やせ細ってはいるので、武に秀でている訳ではなさそうだ。


「名前は?」


「クルカンド・キースです」


「何処から参られた?」


彼は罪人ではない。領に入り込んだ訳ではないし、大鉈を持っているとはいえ、それで何かをやらかしたとは聞いていないからな。


「ブッタカギのカミナリ村です」


「ほう。随分と遠いな」


ブッタカギ都市はカラブレット王国の北東部の都市だ。シムオール都市(グオリオラ領)やパドレオン領からはメディシナルの森を挟んでカトゥチャ都市が、その更に北に位置する都市である。規模は小さく目立った産業もない都市。


「なぜ森におられたのか?」


「それは人を訪ねて来た訳でして」


「森に?」


「いえ。新しい街にいると聞いていましたので、コルメイスに行き、門番に取次を頼んだのです。すると、森の中にいると言うものですから」


この者の話が本当ならば門の記録に残っているだろう。この者は嘘を言っているようには見えない。


「森の中にいる者、訪ね先の名を教えてくれ」


「カリアテアという兄弟です」


「は?カリアテア兄弟!?」


「はい。ご存知で?」


なるほど「森の中にいる」と門番が言ったのは、この開拓に従事していると伝えた訳だな。


「ああ、直ぐに呼んでやろう」


呼びに行かせている間に、更に話を聞く。


「なんの用なのだ?」


「何か仕事がないかと。どこか紹介してもらいたくて」


そうか。仕事を求めて来ただけか。一応、裏は取るが危険はなさそうだ。


「ならば、チョコレッタ嬢に相談するといい」


私はカリアテア兄弟とチョコレッタ嬢にその者の対処を任せることにした。





「ところで、チョコレッタさん。気のせいかもしれないんだが、私に対してよそよそしくはないか? 何かしただろうか? それならば謝罪したいので言ってくれ」


「いえ。とんでもございません。何もありません!」


何故か慌てさせてしまった。

すごく、気になるのでしつこく聞いた。


私は怖がられていた!……ショックだ。


原因はチェンジャー部隊のミドリだった。

ミドリ曰く、私は礼節にとても厳しく、戦いの最中に微笑むような戦闘狂と吹き込んだらしい。

とても、心外だ!

確かにミドリが来たばかりの頃に共に行動することがあり、叱責したことがある。まだ、ユリアス様の偉大さを知らずに、マーベラ殿以外を軽んじていたから注意しただけだ。

戦闘狂でもない。私が笑っていたというのはリザードマン征伐の時に、私の武が通用することとユリアス様と同様な戦い方をできている自分が嬉しかったからだ。


私よりもルドフランの方が強面だと思うぞ。無口だし、向こうの方が怖いだろう?


えっ? ルドフランとはメディシナルの森で一緒に戦って気心がしれている?


私の失敗は他の者との接し方にあるらしい。コミニケーション不足なのかもしれない。


怖くないぞと念を押して、森を後にした。



ガディアナ様に顛末を報告し、執務室へ戻る。


「ラトレル様。ビュウロン様がお訪ねです」


今度は何事だ?


「兄上。人を貸してくれ!」


「はあ? 『会議』案件か?」


「そうだ。私と無理やり財務官にしたツマミエ殿の二人では手が足りない」


ビュウロンはユリアス屋敷の使用人で倉庫番だったツマミエ殿をユリアス様やエリナ様に頼み込んで、領全体の財務官に引き抜いている。


ビュウロンは財務の担当だ。金銭管理に人がいるのか?


「違いますよ、兄さん!」

「こら、公務中は身内呼びはダメだぞ」

「あっ、すみません。

それではラトレル殿。正確には財産管理です。管理場所に溢れてしまって処理しきれません」


ビュウロンの普段の仕事は予算管理だ。その延長で儀式に関わる予算組み、収支の計算などのはずだ。

そんなに大変なのか?


「あのですね。貨幣管理は難しくありません。 問題は物品財産なんです」


「物品財産? 分かりやすく頼む」


「魔石とかドロップ品、鉱物などです」


「ああ、その宝物庫なら地下を拡張したじゃないか」


「そこも一杯です!地下に降る階段まで物で溢れかえっています」


「そんなにか!?」


「そんなにです」


「どうして……」


「先日のツチグサレ消滅遠征でどれくらいの物が持ち込まれたと思います?」


「……わ、分からん」


「14,625点です!」


「はあ? そんなに運び込まれた記憶がないぞ?」


私は消滅遠征隊を出迎えたのだが、確かに各々が大きなバッグを背負っていた。デーアビントルたちも大きな袋をぶら下げていた。

確かに大量な荷物だったが、対処出来る範疇だと思うのだが。


というのは間違いだったようだ。それぞれのバッグや袋はコルメイスバッグだったのだ。それもコルメイスバッグにコルメイスバッグをいくつか入れるという裏技付きで。


「とりあえず、コルメイスバッグのまま収納しておけば良いのではないか?」


ところがそうもいかないという。

コルメイスバッグは貴重で、まだまだ量が足りない。故に高価なのだが。これから使用される予定があるというのだ。


「なんに使うのだ?」


「祝儀品ですよ。既に届きはじめています」


ああ、来賓客からの祝いの品か。300名弱というから大層な量だろうな。


「それで、それらを管理する者を?私の動かせるのは武寄りの者達ばかりだぞ?」


「管理、整理する者は何とか手配が出来ました。兄上……、失礼、ラトレル殿にお願いしたいのは文字通り警備です」


地下に収まりきらないものをビレッジユリアスの庭に集めて置いてあるのだが、その警備が足りないらしい。


「わ、分かった。警備なら私の仕事だ。手配しよう」


仮置きされた物を見に行ったら、凄いことになっていた。それが数箇所ある。文官達では警備しきれないだろう。

すぐに人員を手配した。


無事に儀式を終えなくてはと思う。

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