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チャリンコ・チャリオット  作者: 怠慢兎
第1章 ーワンパク ワンダー ワールドー
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49. 暴飲注意

 人混みは嫌いだが人の温もりには安心させられる。死者の冷たさを知れば尚の事である。


「フッヒッヒッ……気持ちは解るけどね、目的を忘れちゃいけない、それじゃああっちの路地に行こうね。ホイホイどいたどいたぁ」


 マクドワイズの先導で表の大通りから路地へ近づくと、路地のすぐ側の鉄の扉が開いて中から長身の男が現れた。


「やあやあ厄介に魅入られた小人さん! お待ちしていましたよさぁどうぞ!」

「何者!?」


 タイミングぴったり過ぎて身構えると男は手を振って所属を明かした。


「何ってロックドリル商会の者ですよ。悪魔の前で人攫いをするとでも? 自殺行為だ。まあまあまずは入って入って! 話はそれからです」



 ロックドリル商会とは、創業者のブランディン=ロックドリルが鉱物の手売り行商から一代でこの街での金属製品を始めとした屋外活動用品を牛耳るまでに成長させた中小企業だという。創業から220年が経っているが長命種が当たり前のこの世界では二百年でも新興の部類だ。

 屋外活動とは冒険者活動も漏れなく含まれており、ここ本店では1階に食糧・薬草類、2階に服飾・防具、3階に宝飾品と商談部屋、4階がスタッフルームで、5階が役員室という構造であり、隣に並び建つ通称“武器庫”には1階~5階の全てが金属・皮革製品の専門店になっている。


「さっき入った建物は3階まで全部が消耗品・その他雑貨類を販売していて、今居るここは第2倉庫です。第1は本店挟んだ反対側。それで……代官様の命により、この倉庫にある物は必要(・・)なだけ持って行って構いません」


 好きなだけ、と言わないのは悪魔の手前、下手な発言をしない為に選んだ言葉だろうか。持てるだけ持ってく様な真似をする筈も無いが……まぁ良い。

 まず今必要な物、それは靴だ。暴れたのと蹄鉄がくっ付いていたのを無理矢理剥がした所為でボッロボロだ。特に爪先の風通しがやたらとイイ感じだ。


「じゃあまず靴の所まで案内してください」

「靴ぅ? フヒョヒョ、何だいコリャあ? よく見たらボロボロじゃないか。イイヨイイヨ。修理なら僕んの魔法(ドワイズ・マジック)でテカテカだぁ!」パチンッ

「うぅえええ?!」


 なんということでしょう、あれほどズタボロだった靴があっという間に新品同然に!

 ただしぐっしょりと濡れていた。


「何でやねん!」

「いぎゃー!」


 折角街の外で一度乾かしたのに、脛の辺りまで濡れてしまった。靴は履いたまま乾くと臭うのに!


「ところでブランディンの旦那はどうしたの? 今日のパーティにも見掛けなかったけど」

「マクドワイズ様、社長は今日、急に会いに来た旧友との交流を優先致しました」

「へぇ!? あの威圧的な旦那にしては珍しい! よっぽど親しい間柄なんだね」

「よくは知りませんが、商会発足以前からの大恩人とか何とか……」

「勝手に見てきますね」

「いってらっしゃい」

「いやいや坊っちゃん困ります」


 ここの倉庫はちょっと見ただけでもそれなりに高品質と判る物を選りすぐって保管しているのか、整理整頓が行き届いていて探しやすい。一通り確認して暗記した物品を吟味し、最初の場所まで戻って来てから尋ねた。


「ここはこれ以上はないんですか?」

「おやおや、お気に召しませんでしたか?」

「いやぁ……何というか、足りない」


 倉庫の大きさの割に合わない点が幾つも見受けられた。

 まず物量が足りない。次に品質が最高と言う程でもない。値札も新旧入り混じり価格もピンキリ。オマケに武器が無い。何より一番気になったのが、建物の外観の割に階層が明らかに1つ2つは足りない点だ。

 その他諸々を掻い摘んで説明していると、長身の店員は大袈裟に眉を上げ下げする仕草からやがて面倒臭そうに顔を歪めてお手上げのポーズを取った。


「成程、目聡いというよりもまるでスカーレッドお嬢様がもう一人現れたみたいだ。もっとも、お嬢様はここには年に一度か二度しか来ることはないんだけども」

「出し惜しみは困るんですけどねぇ? パッと見てサッと行きたいんですが」

「ダンジョン舐めんな小僧、おっと。でもまあ、見たとこ必要そうなのは武器だけでしょうか? であれば上の談話室でお待ち頂けるならばなるべく希望に沿う物をお持ちします。勿論軽食も手配します」

「良し分かった急ぎでね」

「では案内します。」


 すったもんだも面倒なのでここで一息入れるのも悪くないだろう。さっき一杯飲んだけどそれどころじゃなかったしね。


__________



「ぉゴッ…ゴッ……コッ………げふぅー!! ぅはぁー!」


 レモン! ソーダ! 砂糖入り! 甘ぁーーーい!!!

 数十年ぶりの鼻に抜ける刺激が涙腺にまで及んで零れ落ちそうになる。

 酒より何より癖になるこの喉越し!


「ウフフん、ここは“水ダンジョン”だからね! 不思議な美味しい水も湧いているのさ!」

(バレル)一杯で頂戴」

「無茶言うな」

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