何で俺だけ「とうとう破られた」
ずっと動かずに、まるで力でも溜めているかのような静かな姿勢でいるその魔法使いに最大限の注意を向けなければならない。そう私の勘が働いた。
「このゲブガル!貴様ら等に負けはせん!ぬおおおおお!」
私は罠を張る事を諦めた。そして障壁へと注ぐ魔力を増大させる。負けない、しかし勝てない。
長期戦に持ち込み、プレイヤーたちの疲弊を引き出して撤退をさせる。私が考えたのはそれだった。
おそらくはかなりの高い確率でそれは失敗するだろう。だが、今はそれに賭けねばならない状況だった。
まだ大斧を構えたプレイヤーも動かずにじっとしている。相手の開いていない手札が残っているのだ。
(奴らを仕留められずとも、せめてここは守って見せる、守り抜いてみせる!)
だがしかし私のこの決心は次の瞬間に打ち砕かれた。勘が当たったのだ。
『我が前を塞ぐ目障りな障害を光を持ってして排除せよ。影も残さず消し尽くせ』
それは呪文だ。しかも系統は我ら魔族の弱点となる光属性。しかしだ、私の障壁は光魔法も防ぐ。
だが、この時に私の背中に走ったのは冷や汗だった。その魔法を放ったプレイヤーの手の平から細い細い、一筋の光の線が私の障壁へと放たれていたのだが、それがぐるりと大きな円を描いていくのだ。
光の筋が当たった障壁の部分が私の魔力を込めても修復されない。溶けたように爛れている。おそらくは光魔法に込められた魔力の量が、私の障壁よりも遥かに多いのだ。なので溶けた部分にはプレイヤーの魔力が干渉してしまい、私の魔力が通らない様になってしまっている事が原因だろう。
(このままでは「穴」を開けられる!これでは・・・)
魔力を注いで障壁を強化していたからだろう。その光の筋は障壁を射抜いて貫通まではしていない。
おそらくは私が魔力を障壁へと注いでいなかった場合、そのまま私を狙って放たれていた可能性が高い。
コレは大剣使いが自らの攻撃の手応えが変わった事で合図でも出していたのだと思われた。作戦を変更してきたのかもしれない土壇場で。彼らの賭けは「勝ち」だ。
「よっしゃあああ!最後は俺が頂きだあああ!」
大斧使いのプレイヤーが叫んだ。どうやら止めを刺す役目はこのプレイヤーが受け持っていたのだろう。
とうとう私の障壁にプレイヤーが余裕で入って来られる穴を開けられてしまった。そこに大斧使いが飛び込んでくる。
コレに私には再び障壁を張り直して防ぐ時間は無い。
「無念・・・」
私は最後の最後でとある罠を発動させる。それは。
「うおおおお!?何だコリャあ!?くっそおおおお!マジ見えねぇぇ!」
煙幕だ。大斧の攻撃をされる前にそれを発動させる。コレに怯んだ大斧使いは私へと飛び込んできていた足を止める。
次にはがむしゃらに武器を振って私の居た場所へと攻撃を仕掛けている。しかしもうそこには私は居ない。後方へと即座に下がったからだ。
濃い煙幕は他のプレイヤーの視線も断ち切っている。なので余裕で私は魔王様の命令を守る事ができた。
「この屈辱はいつか必ず晴らしてくれよう。さらばだ。」
私は脱出通路へ入り込む。これも事前に用意していたものだ。魔王様との面会をした後に私が作っておいたのだ。
命が危なくなれば逃げて必ず無事に魔王城へと逃げて来る事。その命令を守るために。
「あのままもう少しでも粘ろうと言った気を起こしていたら、私はやられていただろうな・・・魔王様、申し訳ありません。」
こうしてこの拠点はプレイヤーの手に渡ってしまった。




