何で俺だけ「正面」
急激な魔力の高まりを察知した斥候のプレイヤーは声を張り上げる。
「攻撃が来る!皆気をつけろよ!」
だがその忠告は意味が無い。彼らはそもそも何に気をつけなければならないのか?
二つに一つしかないのだ。この盾を貫かれるか、そうで無いか。
一応は「跳弾」なども警戒している事はしているが、それでもその一撃で倒れない位の「HP」はある。
だから気を付けろと言う忠告を受けてもどうにもできないのが今のプレイヤーの現状だ。盾の後ろに居続けるしかできる事が無いのだから。
その音は静かだった。ヒュン、と何かが通り過ぎる。その次には誰かの呻き声。
「ウグウ!?この盾を貫いてきたぞ!?ヤバイ!コレを急所に食らったら意味が無ぇ!ちっ!いってぇな!肩をやられた!」
「どうやら盾に隠れてるからなこっちは。相手には見えないからヘッドショットはできないらしいぞ!もしできるんだったら一人コレで既にキルされてる!」
「これだけの分厚い金属を貫通させるための魔力を練ったんだ。次にこれと同じ攻撃を撃てるようになるまではもっと時間が経った後!今の内に距離を稼ぐぞ!」
「回復を早くクレ。ダメージこれ洒落になってねぇぞ?」
ある意味こうなっては博打だった。プレイヤーはライドルの攻撃の弱点を見抜いて賭けは自分たちに分があると判断する。
逆にライドルは冷静に計算をする。そして気を一掃引き締めた。
(なかなかに旨くは行かないらしい。まあそれも当然か。こうなれば少々厳しい戦いになるな)
この攻撃での最上の結果はコレでプレイヤーを一人仕留める事。最悪は盾を貫けずに弾かれる事だった。
出た結果はライドルにとって良い事でもあるし、しかし悪い事でもあった。
この一回の攻撃でプレイヤーに勢いづかせてしまう結果に繋がってしまったからだ。
どうにかコレで一人片付ける事ができればその分だけ相手の足止めにする事ができたはずで時間稼ぎが大いに狙えた。
しかし結果はプレイヤーの一人へとそこそこのダメージを食らわせただけ。回復魔法でも使えばソレは簡単に癒されてしまうはず。
しかしちゃんとプレイヤーの盾を貫けたのは大きい収穫だ。そこから狙える作戦もまたある。
(さて、針の穴を通す様な作業だな。まだプレイヤーは私の腕を舐めてかかっているだろう。ならばソレを狙う)
ライドルは構える。先程の貫通攻撃はまだ撃てはしないが、それでも威力を最弱にした非常に小さい魔力弾丸は撃つ事が可能になっている。
「さて、ちょっと驚かせてやろう。踊れ。」
ライドルはそう呟く。そして集中力を高める。そして放たれた一撃。
「いってぇ!なんだって!?くっそ!今攻撃が貫通してきたぁ!?」
「おい!落ち着け!盾には新しい穴はできちゃいない!・・・じゃあ何でお前は腕に攻撃受けてんだ?」
「どうなってるんだ!?魔力の高まる反応なんて感知してねーぞ?」
プレイヤーは前進する速度を上げていた所で異変を受ける。盾を貫かれた訳では無いのに敵の攻撃が通った事でプレイヤーの脚が長く止まる。警戒で。
「全員一旦停止!未知の攻撃を受けた!注意を怠るな!何処から攻撃が仕掛けられたか見抜くんだ!」
プレイヤーたちは勘違いをしていた。大いなる勘違いを。その攻撃は未知でも何でも無い。
ライドルが仕掛けた真正面からの一撃だ。それをプレイヤーたちは見抜けないだけであった。
(時間稼ぎはこれで少しは出来たな。さて、どれくらいで奴らは気付くかな?その間に魔力充填を粗方済ませさせてもらうぞ)
ライドルは自らの魔力をまたこうして高め始めるのだった。二回目の貫通攻撃を狙うために。




