何で俺だけ「静かなる重量」
バイゲルの所に攻め入ったプレイヤーたちはそれこそ良い線いっていたと言えるだろう。その結果、メリーが生まれるきっかけになったが。
「そんでもって今度はライドルの所に来たかー。で、戦況はどうだい?余裕はありそう?」
『奴らはどうやら前回に来た者たちであるようです。動きを観察しましたが、今回も前回同様のやり方で侵攻してくるつもりのようです。しかしその装備の質は二段は高い代物です。どうやら対策を組んで来た模様です。』
ライドルはプレイヤーたちの動きとその装備を見てそう判断したようだ。
「ちゃんと命大事には守ってね。死んだら元も子も無いからね。ヤバかったらギリギリまで粘ろうとせずに即座に撤退。それと、間に合うかどうかわからないけど、そっちに援軍を出したから。そっちでライドルが現地で指示と命令を出して上手く扱って。」
『は!このライドル!今回のプレイヤー共も蹴散らし追い返して見せまする!』
気合がかなり入った声でライドルはそう返事をする。頼もしい限りだ。
「しかしまあ、何だろうか?バイゲルの方に来たプレイヤーと、ライドルの方へと攻めて来たプレイヤーは別に繋がっては居ないんだよな?何でこんなタイミングばっちりなんだろ?同時じゃないのがまた絶妙。」
お前らもしかして話し合いでもしてるのか?と言いたくなる。こうしてタイミングが重なるなんて。
しかしその日時がまた微妙にズレているのが何とも言えない。完全に同時に攻めてこない所が彼らが繋がっていない証拠である。
「仲間とかだったりしたら同時攻略とか言って日時を合わせて来るだろうしなきっと。と言うか、連続してこうもあれもこれもとイベント事が舞い込んでくると精神が持たないな。」
メリーの事で結構メンタル削られている俺はそうぼやく。しかしそうも言っていられない。俺もまだ「魔物」を日課で動かすのをまだやっていない。
なのでここでライドルを助けると言う意味で攻め入ってきているそのプレイヤーへと魔物をけし掛けると言った方法もある。
「うーん、援軍を出したし、それの様子を見ながら少し考えるか。」
一応はライドルの居る塔の周辺のマップは確認できる。そこで出した援軍がどう動くかはライドルの出す作戦次第だろう。
ならばそれを俺は眺めつつ後で判断すればいい。ここは投入するべきか、否かを。
こうしてライドルとプレイヤーの攻防が始まった。
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「皆!盾の陰へ!微速前進!今回は勝手な行動は絶対に無しだ!斥候も以前辿り着いた距離に行くまでは盾の裏に居ろよ。良いか?今回は盾の強度も上げている。前回の最後に受けた攻撃の威力から計算してこの盾はソレを耐えうるように製作された。信じろ!生産職の仲間が作ったこの盾を!」
ここに居るのは十二名。2パーティからなるレイドである。双方が巨大で分厚い盾を構えて森の中を進んでいた。
その進みは亀の如くである。それもそうだ。彼らの構えている盾はそん所そこらの「ディフェンダー」の持つ盾を遥かに超える重量だ。
その分、「貫通」を持つ攻撃を防ぐ、或いは貫かれてもその威力を大幅にダウンさせる事ができる代物である。
因みにこの盾には「アダマンタイト」は未使用で、プレイヤーが今現状で手に入れられる鉱石の中でも一番硬質な素材をふんだんに使用した盾である。
(奴らはどうやら随分と単純な対策を取って来たな。まあ、それが一番やり難い訳だが。それでもまだ・・・甘いがな)
ライドルはそう思いながらプレイヤーたちを睨む。だが、まだ攻撃を仕掛けない。それは遠いからだ。
(この距離で撃ち込んでもあの盾から出てこないのであればやっても無駄だ。ならば勝負は前回奴らが迫った距離・・・)
その前に援軍がこちらに到着したならば勝利は確実となる。そうで無ければプレイヤーたちはこの塔に侵入してくる事になるとライドルは読んでいた。
それだけプレイヤーがライドルにとって一番厄介な方法を取って来たと言う事だった。
(しかし、全員無事にこの塔に辿り着かせる気は・・・さらさら無い!)
ライドルは前回プレイヤーが踏破した距離の大分手前で牽制の一発を放つ。それはプレイヤーのその用意してきた盾の性能を量るための攻撃。金属がこすれる甲高い音が森に響く。
「慌てるな!この程度の攻撃じゃビクともしない!焦らず進むぞ!本番はまだまだ先だ!」
プレイヤーたちは冷静にそう言って盾の陰から一向に出ては来ない。
(さて、援軍はまだまだ時間が掛かるか。ならばここで一人・・・仕留める!)
ライドルはここで一気に魔力を高め始めた。