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何で俺だけ  作者: コンソン
「俺」
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何で俺だけ「動かなければ何も変えられない」

 平和に日は進む。運営がいくつかコラボイベントなどと言ってプレイヤー向けにそう言ったモノを導入していたりするのだが。魔王の俺には関係無い代物であった。

 やれ、別作品の大人気キャラの専用衣装だの、武器だの。あるいはキャラグッズ集めだ、イベント専用アイテム集めだったりと、そう言った別作品アニメ、ゲーム、小説、漫画などとのコラボイベントが多い。

 それに混じってどうやら季節物イベントで特殊なアイテムがラインナップに登場したり、新たにバージョンアップが入ってスキルに補正追加や弱体化調整などが主だった。


 そんな期間はプレイヤーたちはそちらに夢中になるので余計に魔王の城は平和である。

 その様に平和であると暇になるのが「魔王」である。いや、普通は暇なんて言ってられない立場なのだが、俺に仕事は無い。王としての。


「部下が全部やってるからね。いや、本当に、マジで俺、何ゲーしてんの?って感じだよ。今日も日課は欠かさないけどさー。それでも増えるポイントは多く無い訳で。」


 一応はそんなプレイヤー向けイベントにちょっかいを出す様にして魔物二体をけしかけて邪魔するような事はしていた。

 しかしこの程度で集められるポイントは少ない。仕掛けた魔物も返り討ちに会う事だってしばしばだ。一日で動かせる魔物の数も一向に増える気配は無い。それこそ封印へと投入しているポイントが一定の水準に達したりしてもしかしたら数が多くなるとかワンチャンあるか?と思っていたのだが、そうはならずにいる。


 動かすと言えば、部下が俺の手に負えない程の数に増えて「軍」が出来上がっているが、それを大規模に動かしす様な事をアレからと言うモノしていない。

 ちょくちょくとプレイヤー狩りをさせている部隊は存在する。しかしその数も制限してある。出す魔族の数も、狩るプレイヤーの数もだ。

 ソレはプレイヤーへの刺激を余り大きくしない様にしているからだ。


 ハッキリ言って今の魔王城は守るべきものが増えた。正しく「戦争なんて御免だ」状態だ。

 戦争を起こして良い事なんて多くは無い。俺は自分の占領する土地を増やしたいとかは思っていないし、それこそ「世界征服」とか言った事なんて求めてすらいない。

 統治する場所が増えればそれに比例して俺が抱え込まねばならない問題事も増えるだろうし、そこに住む者たちへの安寧を与えるためにもしっかりとした政治を敷かねばならなくなる。

 そこまで考えて俺は首を激しく横に振る。いや、そうじゃない、と。


「俺は政治シミュレーションしてる訳じゃねぇんだよ。俺は魔王なんだよ。ファンタジーなんだよ!・・・虚しい。今頃あいつらは宜しく楽しくやってんのかね?」


 俺は以前の仲間の事を思い出す。そして少しだけムカッとして直ぐに冷静になる。


「あいつ等とは袂を別ったんだ。今更だな。羨ましいとちょっとでも思った俺自身が腹立つ。今の俺にできる事をもう一度見つめ直すか。」


 こうして俺は今一度俺が何を出来るのかを整理する。


 1・世界マップを見る事ができ、魔物を一日で二匹迄プレイヤーへとけし掛ける事ができる。

 2・倒したプレイヤーから得られるポイントで俺の部下たちへのパワーアップをさせる事ができる。


 直接できる事はこれくらいだ。しかしやれる事は今となったらもっとある。


 3・部下に命令をして様々な事をやらせる事が可能。


 コレはこの城に住む様々な種族に対して俺が自由に指示を出せると言う事。

 もちろん魔族で「軍」に所属しているモノであればプレイヤーを倒してこいとか、この森に居る魔物を狩って来いとか。

 生産をしている者たちには新しいモノを発案するように言ったり、食料自給率を上げる指示も出せる。本当に領地経営シミュレーションであるのだ。


 で、別視点からもう少し突き詰めてみれば。


 4・俺が考え出した突発的プレイヤーズイベントを開催してみる。


 コレは俺が最初の頃に悪ふざけでやっていた。自分からこんな事してみようと思い付きで実現していったものである。

 でも、今はそんな余裕が俺の心の中には無い。あの時はまだ動かせる物が少ない状態、四天王がいただけの時だ。

 彼らの実力は高いしプレイヤーに負けない自信があった訳で。そして俺もあの頃はまだ少しだけ自棄っぱちな部分があった頃だ。

 だから積極的にプレイヤーに関わろうとしていた。でも今は状況ががらりと変わった。

 ポイントは欲しいが、プレイヤーを刺激して「戦争」みたいな事にはしたくはない。だからと言ってこのまままったりとした「魔王」をしていくにも面白さに欠ける。俺は楽しむためにゲームをしているのだ。

 しかしこの「魔王」で背負ってる物が増えてそう簡単に動けなくなってしまっている。自分で動いた結果とは言え、こうなってしまうとフラストレーションが溜まる。


「でも、いつかはプレイヤーもそう遠くない未来にこの城に攻めて来るだろうしなぁ。その時までには何とかこの部屋から出る事ができる位にはなっておきたい。」


 決断を迫られていた。ポイントを一気に稼ぐ事への。このままナアナアにだらだらとしていても、プレイヤーがここへと攻め込んでくる未来は遠ざからない。

 俺から積極的にポイント稼ぎに動かねば何も変わらなかった。


「充実して安定してる今しか無い、か。まだプレイヤーも「光の力」を得たって言う書き込みは見ていないし。一か八かでここはやるべきだな。とその前に、ゲブガルに相談しよう。」


 俺はこの時、覚悟を決めた。

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