何で俺だけ「今度は何シミュレーション?」
そもそもまず、俺が「魔王」だと言うのであれば、兵力と言ったモノが存在していいはずだ。
王と名乗るのだから、それこそ四天王の下に部下が居ておかしくない。
なのに俺はそこら辺の事など全く考えていなかったのだ。間抜けもほどほどに、と言われても何も言い訳できない、言い返せない。
組織である。国というものがあり、そしてそこに君臨するのが「王」なのだ。そしてこの権力の下には様々な部下が存在し、それぞれに部署と言う者が出来上がるはず。
なのに俺は自分の事で今まで精いっぱいでその事に何ら思い至らずにいた。
「おおうっふ・・・これじゃあ烏合の衆とも言えない状況。ああ、そうなると皆が部下として使える人材を雇うとかしないといけないよねえ。最初からコレに思い至っていれば、いや、四天王を強化する事だけで頭が満ちていたからコレはこれで無理だな・・・っていうか、雇うならお給料どうしよう?・・・経営するって凄い難しいな、こう考えると。あれ?じゃあミャウちゃんたちに未払い?あれ?そこら辺どう言った事になってるの?」
俺は今、経営シミュレーションを強いられかけている。俺はあの「天使降臨」のイベントの後はログアウトしていた。
そして再びマイちゃんの発言を思い出して真剣に今後の事を考えようと、お茶を一口飲んでより一層落ち込んだ。
「普通は魔王が復活したら魔族たちは城に集結して・・・なんて話にならなかったんだよ、これが。どう言う事?四天王を決める大会が開催されたんだよね?それで、勝ち残ったのが今の四人で。あれ?ミャウちゃんはどう言った理由で魔王の側近になってるの?・・・難しい事をアレコレ考えるのは止めよう。」
話によると組織立って動いてはいないものの、魔族は各個でプレイヤーと接触すれば戦闘をしているらしい。
ならばその時にプレイヤーを倒した時のポイントは俺の所に入ってきているはず。そう、俺の知らない所で魔族は頑張っていてくれていたのだ。
「そう思えば別に悪い事では無いんだろう。それを今度からは俺から命令を出して集団で固まってプレイヤーへの攻撃をするように言えば良いだけだ。・・・果たしてそんな簡単にいくんだろうか?」
俺は不安になりながらもベッドに入る。早寝早起き、明日も仕事は速攻でノルマ分を終わらせてログインするつもりである。
こうして翌朝。いつも通りの朝、いつも通りの「出勤」。そしていつも通りに仕事を熟して、毎度の事ながら早上がりをする。
夕食を済ませ、風呂も済ませ、トイレも済ませてログインだ。
「さて、今日はミャウちゃんが「見回り」をしに行ってるから誰も玉座の間に居ないなぁ。」
ミャウちゃんは今もまだプレイヤーの居る場所を巡回して「正義の味方ごっこ作戦」をしている。
今の所「迷惑狩り」は既に当初の時と比べるとポイントを稼ぎだせなくなっている。それはプレイヤーたちの間に「マナーやモラル」が無い者は粛清される、と言った噂が立っていたからだ。
それらは今ではゲーム内に良く浸透し、悪さをする、迷惑を掛けるなどと言ったプレイヤーが「ほぼ」いなくなった。
まあ偶にそう言ったプレイヤーは出現して、それこそ根絶などと言った事はあり得ないのだが。
こうしてポイント稼ぎは効率的に見て、もうミャウちゃんは「迷惑狩り」を止めさせて新たな事をさせるべきなのだが、止めさせては居ない。
今は積極的にプレイヤーの前に姿を、仮面を付けている姿だが、見せてプレイヤーたちに「誤解」を深く根付かせるために動いて貰っている。
この「誤解」が将来「切り札」に変わる可能性を大きくさせている最中である。これが上手く行くかどうか、使う場面が来るかどうかはさておいて、準備は怠らないでおくのが正解だろう。
一度始めた事を途中で止める事は簡単だが、止めた後に再開し継続をするのは難しい。
「ミャウちゃんには散歩だと思って気分転換にしてね、って言ってあるんだけどなぁ?どう受け取ってるかは分からん。さて、後で三人に俺の考えを聞いて貰うかね。」
俺はそう呟いてから玉座から立ち上がり、習慣になった準備体操をしてミャウちゃんの帰りを待った。
今も一応は組手をミャウちゃんに頼んでいて、この「魔王」の動かし方を慣らしている。
「はぁー。早く俺もこの世界を隅々まで遊び回りたいんだけどなあ?」
俺のこのボヤキは慌てて帰って来たミャウちゃんの言葉でぶっ飛んだ。