何で俺だけ「無名の戦士たち」
そんな嵐がずっと続く。A・B・C・D・E・F・G・H。八つの区分けがされていて、それぞれで勝者が決まるまでのバトルロワイヤル。
それらの戦いはこの大会に出場しなかったプレイヤーに映像配信されていた。もちろん、早々に退場させられたプレイヤーたちにもこの映像は視聴可能で。
「くっそー!いい所までは行ったんだがなー!」
「いや、あれ見ろよ、お前のリアルプレイスキルじゃ敵いっこないだろ?」
「馬鹿みたいにゴリ押ししてきた奴に負けたのは悔しい。」
「嘘だろ?アイツ死にやがった!俺を裏切って生き残ったくせに最後の最後で!」
「いやー、ウチの所に化物が一人居たんだよねえ。諦めもつくよね。」
「今までに見た事無いスキルを使った奴が居たんだけど?初見じゃ絶対避けれないんだけど?」
「隠し玉は持っていないと駄目だろ、こう言う大会では一つくらいは最低で。」
「弱い奴から負けていく、道理。だけど、一番強い奴が最後に生き残る訳じゃ無いのがなー。」
「なあ、何か一人だけスキルらしいもの一回も使ってなくない?もしかして、自力で生き残ってる?」
「知らないジョブが多かった。知り合いは順調にクラスアップしてたけど。でも、なんか色物多かった印象。」
「無詠唱で初級魔術連発されるのが地味に強かった。しかもソイツ本戦出場決めてるんだが?」
「一芸に秀でていて、追加でそれを熟練の域にまで使い熟せている奴が本戦出場したって感じが強いな?」
「いやいやいや?ほら、今戦ってる奴。あっちの画面見てみろよ?やばいよ、あいつ。」
こうして視聴者は皆、映像に釘付けだ。どの映像も見どころ満載で話題に事欠かない。
ずっとそんな時間が流れ続けて、長い時間であったはずがそれはあっと言う間に過ぎ去り、生き残り八名が決定していた。
誰もかれもがその勝ち残った本戦出場者に注目を集める。
そしてこの出場決定者たち八名に対し、誰もが思う事があった。
「なあ?この八人って、誰かちょっとでも知ってる奴おる?」
コレが共通の認識であった。ここでは誰もが「最前線組」か、もしくは「攻略組」と呼ばれる者たちが本戦に出ると考えていたのだ。
しかし、バトルロワイヤルにおいて「確実」という言葉はその力を曖昧にする。
不意打ち、裏切り、横やり、奇襲、不運、多勢に無勢。
そう、最初から分かっていた「こいつが強力だから」という理由で、雑魚が強敵に群がって数で討ち取ろう、と言った動きが生み出されているのである。
有名なプレイヤーであればあるほどに、囲まれる数の多さも、打倒される確率も爆上がりだ。
何せ皆知っているからだ、そのプレイヤーの事を、顔を。使うスキル構成もジョブも、大体の感じは既に判明しているようなものだ。
そうした有名所は何故有名かと言えば、それは映像配信をして顔を売っていたり、もしくは巨大な集団を作り上げていて攻略を進めていて何処でもその姿は目立っていたからだ。
そうした有名プレイヤーの実力は張りぼてでは無い、その力は確かなものだ。そう言えども負けは負け。
このバトルロワイヤルではそうしたプレイヤーは即座に引きずり落とされていた。
無名、誰も知らないその八人が姿を並べる。勝ち残ったこのプレイヤーたちは別の場所へと自動で移動させられていた。
そこはまるでコロッセオ。本戦はこの場所で開催される。その八人の見た目の装備はいかにも凡庸だ。だけども誰もが運だけでこの場に立っている訳では無かった。
ここでアナウンスが流れる。
「この度は本戦出場おめでとうございます。これより武術大会トーナメント開始です。目の前の掲示板をご覧ください。こちらにお名前が表示されます。その二名以外の方は観覧席へと移動してください。こちらの円形闘技場にて、その名前の二名が戦います。一戦ごとに体力、魔力は回復しますので、思う存分、全力を出して相手を倒してください。では、一回戦の対戦はこちら!」
その掛け声とともにドラムロールの音が鳴り響く。