何で俺だけ「注目の決勝」
次々に名前が表示され、そして戦っていくプレイヤーたち。それぞれが自分の持つ強みを前面に出して相手を倒そうと火花を散らす。
俺もそれを観戦していた。どうやらこのイベントは「魔王」の俺でも見る事ができる様だったのでこうしてトーナメントの様子を視聴している。
「いやー、凄まじいな。すっげ!あ、今の魔法ヤバい!あ、嘘だろ?今の防いだぞ?あ、いくいくいくいく!おお!?背後に回り込んだ!?何あのリアルプレイ!」
ここは玉座の間である。ミャウちゃんも、マイちゃんも、ゲブガルも、今回のイベントの為に出張しているのでここには俺一人である。
だから、こうして試合観戦で興奮して声を上げている俺を見ている者はいない。いや、もしかしたら運営が監視しているかもしれないが、それは一々気にしていたら負けだろう。
「あー、凄かったわー。スキル使ってないな?一人だけ化物が居るぞ?あの動きはリアルなプレイスキルだろ?反射神経も、剣の振り方も、移動の仕方も、相手の視線を誘導するフェイントも。スゲエなぁ。いや、確かにあんな人もこれだけの中には一人くらい居ても不思議じゃないか。」
ジョブにはそもそもスキルというモノが覚えられる。「普通ではあり得ない事ができる」必殺技がある。
斬撃を飛ばす、一瞬で高く跳び上がる、攻撃力を瞬時に上げる、移動速度が目にも止まらない速さ、などなど。
その一人のプレイヤーはそれらのスキルを一切使っている様子が無かった。無かったにもかかわらず、勝った。勝ち抜いていた。
決して剣を振る速度は速くない。なのに相手のプレイヤーがその一撃をまるで認識できないかのようにクリーンヒット。
後ろに下がって踏み込んでくるなんてあり得ない体勢だったのに、何故か相手の懐に踏み込んでいたりなど。
もしかしたら武術の達人?なんて俺は思ったのだが、しかしよく考えた。
「これも何かしらのスキルを使ったトリックか?そう考えるとしっくりくるな?」
俺はそのトリックがどういったモノであれば先程の動きができるのかの予想を立てた。
「あれはやられたら初見殺しだよなあ?そうなると、どう言う効果があればアレができる?」
自分がそのプレイヤーと対峙して対戦している状況を思い浮かべる。そしてどの様なシチュエーションだと先程見た映像の様な動きができるかを思考する。
これまで伊達に今まで様々なゲームをしてきている訳じゃ無い。予想は幾らか立てられる。
そんな考えをしている間にも流れる試合映像。俺はそれを観戦しつつもやはりその一人のプレイヤーの動きだけはよく観察した。
将来そのプレイヤーが自分に立ち向かって来た時の為に。もしかしたらそのプレイヤーの動きに翻弄されてやられてしまう事にならない様にする為に。
「あ、もう決勝か。優勝はどうなるかな?」
魔導士だろう装備に身を包んだプレイヤーと、俺が注目し、その動きをずっと観察し続けていた剣士のプレイヤーが最後に舞台に立つ。
俺はじっとその試合を何一つ見逃さないと気合を入れて画面を凝視する。
そして開幕直後に決着がついた。魔導士が大魔法を無詠唱で速攻。闘技場全体を全て炎の渦に巻き込んでその剣士のプレイヤーまで一纏めで全て消し炭にしてしまったのだ。
その魔導士はその切り札を今までずっと切らずにここまで勝ち残ってきた。初級魔法を連発する特徴的な攻撃をするプレイヤーだった。
そのプレイヤーの対応の早さはピカ一で、その魔法の連打を潜り抜けてきた相手には即座に魔法で壁を作り出し防ぐし、それすらも上手く避けて身近に迫ってきた者には「罠」で仕留めていた。
自分に近接攻撃を仕掛けてきた相手をひょいと躱す。そして先程まで自分が立っていた場所には「魔法陣」のスキルであらかじめ設置しておいた魔法が発動、それに掛かったプレイヤーは追撃されて撃沈と。
非常に立ち回りが上手かった。だからだろう。俺が注目していた剣士のプレイヤーはきっと判断を見誤った。おそらくは自分なら倒せる、とそう判断して油断をしたんだろう。
いや、油断していなくとも開幕大魔法は避け切れなかったはずだ。それこそ避ける、防ぐなんて事ができるようなヤワな魔法じゃ無かった。文字通り、全てを灰燼に帰する、そんな必殺の威力を持った、本当に切り札と言って差し支えない攻撃だったからだ。
そして勝者の魔導士の方のプレイヤーの名前がアナウンスで流れた。




