何で俺だけ「武闘会が終わる」
その後はプレイヤーたちは「剣豪」の一人にパワーアップを集中させた。
どうやら一時的に仲間のステータスを一人に合算して攻撃できるスキルがあるようだった。
付与術師のスキルだったようだが、神官、斥候、盾持ち、魔法使いのステータスを吸い上げて剣豪へと付与したようだ。
仲間から吸い上げた力は光の粒子となって付与術師のその手に持つ、どうやら特殊な札に吸い込まれていた。それを剣豪の鎧に張り付けたのだ。
「うおおおおおおおおおおお!」
その剣豪の持つ剣が光る。どうやら光の魔法が掛けられているらしい。コレは神官がやった事だと推察できる。
踏み込みも早い。一撃を振るってくるその剣速も凄まじく速い。コレは斥候の素早さ、瞬発力関係が影響を出しているんだろう。
剣が放つ光の強さはどうやら魔力のステータス関連の数値で決定するように見える。コレが攻撃力にかさんされていたりするのかな?と俺はその光を眺めた。
「ただまあ、安直に、何の捻りも無く正面から斬り掛かって来るのは、どうにも頂けないな。避けるの簡単すぎるだろ?」
この魔王のステータスはまだ詳しい数値は見る事ができていないが、それでも馬鹿げた大きさだというのは、こうしてこの魔王を何度も動かしていて理解している。
だから、この剣豪の一撃も別段何か特別な事をしなくても対応が可能だった。
身体を捻って右足を半歩下げるだけ。俺がしたのはそれだけだった。タイミングは多少合わせたが、それくらいだ。
完全に剣豪の一撃は外した。コレに何故か知らないが突っ込みを入れてくるプレイヤー。
「そこは!最初みたいに腕で剣を受け止めたりするんじゃないの!?」
「え?そこでモロに避けますか?え、盛り上がらないじゃん。」
「こっちのせっかくの必殺技だったのに・・・空気読めよな。」
「でもさ、今のスピード、真正面だったけどさ、避けれるもんなの?」
「いや、相当速度関連のステータス数値が高くないとあんな真似はできないかな?後で検証してみないと。そうだなあ。検証チームにこの情報を流そう。あ、売るのでも良いな?」
この反応に俺は何だかイラっとした。だからここで宣言する。
「ああ、そんなに私の事が気になるかね?ならば、ここは少しだけ、全力を出して見せてあげよう。コレで君たちを消すとしようか。」
どうやら攻撃の反動で硬直している、剣を空ぶった体勢のままの剣豪プレイヤーの顎を俺は蹴り上げた。そしてそのプレイヤーの頭は見事に光となって弾け飛ぶ。
首から下はまだ光になっていない。そしてそのままドサリと床に倒れこんでやっと光の粒子へと変換されていった。
これを見て残った五人が。
「げ!今の何だよ!?ドンダケ攻撃力あればあんな芸当できんの!?」
「うっわ!えっぐ!?」
「あんなやられ方したの初めて見るんだが?」
「なあ、俺たちも一秒も掛からずに殺される、って事だよな、これ?」
「これはトラウマものですわー。正直に言って、悪夢に出るレベル。」
「では、ごきげんよう。また会う時を楽しみにしている。」
次々に俺はプレイヤーたちを屠っていく。全力を食らったプレイヤーたちは一瞬で光に変わって消えて行った。
こうして武闘会は終了したのだった。