何で俺だけ「月とすっぽん?」
「でりゃあああああああああ!」
と言った気合の深く籠った一撃が俺へと迫る。鋭いその剣は魔王の防御を崩してダメージを入れられそうなモノなのだが。
「なるほど、腕に魔力を纏わせて受ければ刃物すら防げるのか。コレは凄い。どれだけの攻撃力に耐えられるのかを試しておきたい所だな。」
俺はミャウちゃんから教わっている「魔闘術」というのを今実践中だ。そしてそれを使って剣を受け止めて見せたのだが。
「今の最大級のレベルの剣なのに防がれた?金属でも叩いたみたいな感触だったぞ!?」
「なんだろこれ?もしかして魔王の調整の為にこの戦闘ってデータ取ってる?」
「だったらコレは負けイベなのかね?って言うか、最初からそう思ってましたけども。」
「奇跡が起きたら倒せる?とか思っちゃったよな、忍者の時にさ。」
「いやいや、さっきから「剣豪」のジョブのウチの主力で傷一つ付けれてないからね?」
「というか、俺が吹き飛ばされてた時点で勝てないの確定でしょ。万が一も無いし、奇跡なんてそれこそってやつだろ。」
そう、先程からメインで攻撃を仕掛けて来ているのはこのパーティのリーダーを務めているらしいジョブ「剣豪」の剣士だ。
仲間が施した付与術というパワーアップ魔法を掛けられている状態で攻撃力は上がっているのだが、1ダメージも俺は、この魔王の体はくらっていない。
「では、こちらの番だな次は。・・・フン!」
俺はここで強く床を一歩踏みしめた。一足飛びで6mを水平に跳ぶ。現実ではあり得ない挙動で後衛の魔法使いへと一瞬で迫る。
「さて、指で弾く程度でどれくらいになるかな?死なないでくれ給えよ?」
俺はピシッと鳴らして魔法使いへと一撃食らわせる。これをプレイヤーたちは防ぐことができないでいた。
そして魔法使いが飛ぶ。大分力加減をして指でその胴を弾いたのだが、魔法使いは3mくらいすっ飛んで行った。
「ふむ、死ななかったな。よしよし。力加減は上手くできたようだ。さて、次は誰が来るかね?」
振り向くと殴打武器を振りかぶって走って来るプレイヤー。どうやら神官、仲間を回復する役割だと思われるプレイヤーなのだが。その武器は白く輝いていた。
どうやら付与術で光の攻撃属性を付けているらしかった。
「なるほど、確かに光の属性を付けてあればどんな武器でも私へとダメージを最低限「1」は与えられるかもしれんな。」
俺はそんな風に魔王ムーブをまだまだ維持しつつ攻撃を待つ。そして振り下ろされたその殴打武器を躱す。
プレイヤーが武器を持つ腕を俺の手でパシリと弾いて攻撃の軌道を逸らして。
「誰も受け止めるだけとは言っていないだろう?何故そんな驚いた顔になるのだ?」
弾いた感触で分かったのだが、この神官、攻撃力に大幅に能力を振っている。どうやら戦闘寄りのスキル構成がしてあるバトル系神官であるようだ。
避けた後は反撃だ。先程の魔法使いと同じ様にこの神官の胴へとデコピンをして吹き飛ばす。この一撃も手加減が上手くできたようでそのプレイヤーはやられてはいない。
もしこの魔王の今の身体能力で全力で攻撃すれば、幾ら武器を使っていない素手であろうとも一撃でプレイヤーを沈められるだろう。
さて、このやり取りの陰で動いていたのは斥候だろう軽装鎧のプレイヤーだった。付与術師の魔法のサポートを受けて素早さ、瞬発力が上がっていた。
ナイフの二刀流でこれでもかといった連撃を俺へと向けて放ってくる。これを俺は腕で防ぎ、時には顔を後ろに逸らせて躱し、身体を捻って避ける。
どうやらプレイヤーは瞬発力のステータスを上げると動きのキレ、そして動体視力関連、速度に対する認識が上がるらしいのだ。
だからだろう、この斥候が20連撃なんて言う滅茶苦茶な攻撃も難なくやってのけてくるのは。
しかしこの魔王の体、ステータスも伊達では無い。それらを全撃、こんな中身が「普通」の俺でも軽くいなしてしまう事ができるのだから、それ以上の滅茶苦茶である。
「さて、諸君らプレイヤーと私との間にある力の開きがどれくらいあるかがコレで良く分かった。もうそろそろ終わりにしようと思うのだが、どうだろうか?私へと一矢報いたいと最後の力を振り絞るというのなら、もう少しだけ君たちの体勢が整うまで待とうと思うが?」




