-閑話-伝説の子と世界最強との邂逅 その9
--カグヤ--
スラリン王国で、父さんと母さんが王族を含むいろんな人たちを教育し育てている中、
僕はそんなお城に勤めている人たちにいろんなことを教わりながらも合間合間で町を観光していろんな人と仲良くなったり教えてもらったりしながら旅に必要な実力やワザを磨いています。
そして、ここに滞在して早3ヶ月です。
そんな中、そろそろ旅を再開しようと言うことになり、王族全員も納得したので、数日後に出発しますとなったとある日に、玉座の間のど真ん中にデッカくてまん丸な魔道具らしき物体が鎮座してた。
色と艶的に何というか・・・赤鉄鉱とか、黄鉄鉱?
ご丁寧に座布団付き(ちょっとお高めっぽい感じ)
どのくらいでっかいかって?
父さんたちがその球から5メートル離れたところから思い切り上を見上げて首が痛いって言うくらいだよ。
扉よりも圧倒的に大きいし、組み立てた後もないんだけど・・どうやって運んできたんだろう?
昨日の夜は少なくともなかったのに。
全員「・・・」
「え・・何これ」
つい王様がそんな台詞をこぼしちゃう。
「これ・・誰が持ってきたの?」
ルーナス様が周りを見渡してそう尋ねるけど全員が首を横に振る。
これが不法侵入ならぬ、不法投棄?不法鎮座?
「その前に・・これは何なのかしら?」
「王妃様!良くわからないものをつんつんしないで下さい!我々で確認しますから!」
「あらそう?」
王妃様が首を傾げながらその球をつんつんしてたら騎士団長さんが慌てて宥める。
で、ほんわかと首を傾げてる王妃様を見てしみじみと、宥められながらも一応素直に従ってるけど・・なんというか、王妃様はとてもおっとりとした人らしい。
まぁ、そんな隣でキャリル様が嬉々としてベタベタと触りまくってて、メイドさんたちが数人で押さえ込んでるんだけど。
そして、騎士団というか、騎士団の魔法組に調べてもらいました。
あ、この国の騎士団は1つのグループではあるけど、2つに別れてるんです。
1つは、さっきも言ったように魔法をメインで扱う魔法組
そしてもう1つは、剣などの武器を使って接近戦を行う物理組
とはいえ、魔法組が武器と使われなかったり、物理組が魔法を使わないかと言われるとそうではなく、あくまでもメインで使うと言うだけです。
「どうやらこれは、通信用の魔道具のようです。」
「ふむ・・通信用はこれほどのサイズが必要だったか?」
「いえ、大きくてもカグヤ殿のサイズくらいですね。」
「ではどうしてこれはこんなに大きいのかしら?」
「調べてみたところ、音声だけではなく映像も映せるようになっているのに加え、音と映像の質が非常に高く、やりとりをしたことを記録させることも出来るようです。」
「あら便利。」
「それと、その録音したモノを早送りからコマ送り、巻き戻し、一部のズームインとアウトまで出来るようです。」
「とことん便利機能が満載だな。」
「でも、この国でそんな優秀なモノを作れる人っていたかしら?」
「いや、ここまではさすがにないな。」
「とりあえず、悪いモノじゃないんでしょ?」
「はい。せいぜい顔と声が互いにわかるくらいです。それにこちらとしては相手の情報をこれを使用して調べることが出来るので逆にありがたい代物ですね。」
とか言ってるところで、母さんが何か見つけたらしい。
「・・ん?」
「セリカ、どうした?」
「いや・・その球の端っこに見覚えのあるマークが・・」
「え?どこだ?」
「ほらあそこ。」
と、母さんが指差すところにあったのは、
猫の顔のシルエットのど真ん中に肉球マーク
そして、その両サイドに黒い翼が1翼ずつ
「これ・・まさか」
「多分・・というか、このマークはそれしかないでしょ。」
「セリカ殿にシリル殿。そのマークに見覚えが?」
「私たちは少なくとも見たことがないわ?」
「そのマークは、俺たちの師匠のみに許されたマークで、通称フリージアマークと呼ばれるモノです。」
「なので、間違いなくクラリティ王国から送られてきたモノだと思います。・・・どうやってここまで運んできたのかはわからないですけど。」
「・・・・なるほど。」
聞くと、そのマークは師匠さんをイメージして作られたオリジナルのマークらしく、その師匠さん本人も気に入ってこうして時折自身のマークとして名前代わりに使っているらしい。
それと、ずっと気になるんだけど、そのイラストの下にご丁寧に
”メイド・イン・クラリティ”
と書いてあることにすごくツッコミを入れたい。
だって、なにげにあちこちのお店でいろんなのを見たけどそんな書き方をされたブツなんてどこにもなかったし。
「それで、これをどうすれば良いのだ?」
「それがこれ・・一方的に通信を受けるだけでこちらから発信させることが出来ないのです。」
「そうなのか?」
「えぇ。正しく言うと、一度やりとりをした対象としか通信が出来ないので、これはまだ一度もどこにも通信したことがないので発信しようにも発信先がないのでこちらから指定することも出来ないのです。」
「ふむ・・不便と言えば不便だが、不特定多数に不用意に悪用されることを想定すると安全だな。それにこれほど大きいモノだ。そう易々と持ち運ぶことは出来ないであろう。」
「えぇ・・見た目の50倍は重たいですよこれ・・。」
「それほど重いのか・・」
「城にいる者たち総勢で色々と試しましたがぴくりとも動きませんでした。」
とかなんとか言い合っていると突如としてその球の色の透明度が増し、中心部分にふわりと映像が映り始めた。
「何か映ったな。これは、送り主からの通信か?」
「おそらく。・・しかし、シリル殿のやりとりからおそらくクラリティ王国のエトワール公爵家とゆかりのある方からだとは推測出来ますが・・。」
そして映ったのは、すごくきれいなワインレッドの髪色をしたケモ耳を生やした女の子だった。
まわりにものすごい数の楽器を並べている。
「ふむ?」
「カグヤちゃんと同じくらいの子かしら?」
「そのくらいですね・・どなたでしょう?」
「可愛い・・モフりたい。」
確かに可愛い。
けど、すごく真のある強い良い目をしている。
そして突如として始まったライブ。
曲は3曲だったけど、その大量にある楽器をすべて1人で曲中に平然と使い分け、すべて容易に使いこなし、歌も父さん顔負けレベルで女の人の声限定だけど声質もきっちりと違和感なく変えて歌いきった。
しかも、楽器も抱えられるようなサイズ(ギターとかベースとか)だと、片手間に踊り、
置いて使うような楽器だったら合間合間で踊ったり。
その踊りも同じく完璧に舞った。
そして一番すごかったのは、表現力。
思わず自分がその歌の歌詞の物語の主人公かと思ってしまうほどその世界に迷い込んだように錯覚してしまうことだった。
そして何よりも、凄いかっこいい!
それと、さりげなくやってるけど速弾きに弾き語りまでミスなく易々とこなしてるのに加えて表情もとても楽しそうで大変そうと言う感じが全くないところもまたかっこいい。
「上手いな・・この子。歌に気持ちとイメージを乗せるワザに関しては俺以上だな。」
父さんが思わずぽつりとつぶやくほどの実力者です。
父さんがそうやって褒めることは今まで僕は見たことなかったんだけどそれほどついポロッと言っちゃうくらいすごいんだってことに改めてびっくりする。
と言うか、その表現力が父さん以上だと本人に認めさせた僕と同年代の女の子・・やっぱり異世界はすごい。
この年で既に天才さんですか・・。
それから歌が終わり、ちょっぴり全員が夢心地という感じでふわふわしていたら今度は3人の人が映り込んだ。
1人は、男性のようで女性のようなどっちかわからないけどすごく顔の整った人と、
すごく胸の大きいメイドさん
そして、そのメイドさんに満面の笑みでひざの上で抱きしめられてほおずりされつつも無表情の背中に黒い天使の翼を生やした女の子は、僕と同じくらいかヘタすれば年下と思われる。
で、ぼんやりと見ていると女の子をのぞいた2人が会話を始めた。
「はい。と言うわけでオープニングはセニア・クラリティ・エトワールさんよりお送りいたしました。」
「いやぁ、いつ聞いてもあの歌の世界に引き込む表現力はすさまじいね。では、早速ですがいつものコーナーへ行ってみましょう」
そこで、つい僕と父さんたちでツッコミを入れてしまう。
僕たち「ラジオ番組かよ!!」
全員「!?」
いきなりどうしたという顔で見られたけどしょうがないじゃないか。
だって、どう聞いてもそういう感じの言い方と流れだったんだもの。
そして、驚きもせずに会話を続ける映像越しの2人
「いやぁ、良いリアクションをありがとう。」
「ちなみに、さっきツッコミを入れた人たちは間違いなく異世界人であるという証拠でもあります。だって、この世界にラジオなんて存在しないんですもの。」
全員「・・・」
「って・・アルナさんにイリスさんまで何やってるんですか。」
父さんが呆れた顔でツッコミを入れる。
って、名前を言ったってことは父さんの知り合いだったんだ?
「うん。久しぶりだね。翠から、さっきみたいな言い方でやりとりするのが映像付き通信魔道具でのマナーだって聞いてね。」
「そしたら、聞いてたとおりのツッコミが飛んできたのでちょっとだけびっくりしましたけど楽しかったですよ。シリル君にセリカちゃんも久しぶりですね。」
「アルナさんもイリスさんも久しぶり!相変わらずおっぱい大きいね!」
母さんがいきなり大声でセクハラする。
「セリカちゃんは、相変わらずみたいだね。」
苦笑いして答えるメイドさん(アルナさん)の反応から過去にいた頃から母さんはそんな性格だったらしい。
それでふと思い出す。
あぁ・・このメイドさんがペチュニアさんに気に入られすぎた被害者さん・・可哀想すぎて口にしないけど。
「それで、何をどうやって俺たちがこの国いたことに気付いたんですか?後、これ・・どうやってここまで運んできたんですか?」
「その国にいることなんてそんなに難しくなかったよ。元々渡り鳥たちから家の孫のセニアが夏の大陸の1つの大国が1日もかからずに速攻で滅んだって聞いてね。現場の情報を元に推測したらおそらく禁忌である異世界召喚魔法を使ったけど、召喚された人によって返り討ちにあって国ごと滅んだんだろうって推測したんだ。」
すごい・・あってる。
この人が元第一王子の預言者って呼ばれてる天才王子様。
「そこからは、裏取りのために夏の大陸の大国と呼ばれる国をいくつか調べてみたら人の動きとお金の動きと噂話の数からヴォールって名前のところだって確定したから。後は、現場にいつまでもとどまらずに移動するなら近くの町。そこである程度旅の準備を整えた後、通りすがりのおてんば姫に気に入られてスラリン王国に拉致されてからその国でお世話になったんだろうって思ったから交流をかねてそれを送り込んでみたよ。」
すごい・・・全部あってる。
ホントに預言者だ・・それ以外言いようのないほどの天才だ。
「何でそこでピンポイントでスラリン王国の姫に拉致されてるってわかるんですか・・。」
「ん?そりゃあ、その大陸では有名人だからね彼女。どうせ、悪い噂満載の国が滅んだことに興味を持って首を突っ込んだ帰りに遭遇したんでしょ?」
この大陸ではって言ってるのに普通に知ってるこの元王子様は普通に違う大陸の人って言うのはスルーするべき?
「そうなんですけど・・。」
ホントにすごい。
あまりにぴったり当てすぎてキャリルさん本人もびっくりして顔が引きつった状態でフリーズしてる。
「そこで、どうして私たちだってわかったんですか?」
「ん?召還されて速攻で国が仕返しで滅んだってことは、異世界召喚魔法が禁忌だと知っているってことと相当な実力者だってこと。そうなると、過去にこの世界で過ごしたことがあると言うこと。そして、この世界から帰ったことがあるのはリアちゃんが開発した魔法で帰ったシリル君たちだけ。そうなると後は難しくないでしょ?」
「な、なるほど・・・」
すごい・・完璧だ。
あまりにも精度がすごすぎて王族メンバーも全員が噂以上にすごい人だと固まってる。
そんな中で、ルーナスさんが目をキラキラさせて尊敬したような感じでイリスさんを見つめている。
「それでどうやってこんなところに持ってきたんですか・・」
「マジックバッグに仕舞った後、動きが速い渡り鳥たちに頼んでそこに運んでもらったんだよ。いやぁ、鳥と会話が出来るセニアがいてこそだね。ちなみに、それが大きいのは小型化させるのが、面倒だっただけだよ。それに、その方が動かせないでしょ?」
あのセニアさんって女の子は鳥と交渉が普通に出来ちゃうの?
この世界の人たちってそんなすごい人がゴロゴロいるのが普通なの?
「そうですか・・とりあえず、初対面した人も多いので自己紹介をしても?」
「そうだね。改めて、僕はイリス・クラリティ・エトワール。元クラリティ王国第一王子で今は、エトワール公爵家の先代当主だよ。愛娘であるリアちゃんがあまりにも可愛いから邪魔だった王位継承権を捨てたら平民はダメって父上である陛下に言われて、強制的に公爵家になったんだ。よろしくね。」
全員「・・・」
え・・・王位継承権を邪魔だから捨てたって・・そんな良い笑顔でサラッと言うことですか?
それと、その王様の行動は正しいと思うよ?
さすがに元王子様を何の罪も犯してないのに平民にすることなんて出来ないだろうし、事情を知らないまわりの人も何かしら言ってくるだろうし。
と言うか、捨てた・・というか放棄した理由もそれって・・当時その人を王様にしようと考えてた人は相当頭を抱えたんじゃないかな?
聞いてるとその国で一番頭が良いというポジションらしいし、弟さんと妹さんとも仲が良くてその2人も今目の前で良い笑顔でメイドさんに抱っこされてる幼女を撫でてるその人が王位を継いだ方が良いと即答したそうだし。
「ちなみに、今映像を映してるカメラマンは現エトワール公爵家当主のグリム君だよ。」
「声だけだが、シリルにセリカ。久しぶりだな。」
公爵家の当主さんは当主さんで何やってるの?
「何で公爵家当主がカメラマンをやってるんだよ。」
「このカメラ地味にでかいから筋トレもかねてな。細かいことは気にすんな。」
何というか声だけでなんとも言えないけど、父さんとはすごく仲が良いみたい。
そこで母さんから追加情報
「ちなみに、その公爵家当主のグリムは、正義の死神って呼ばれてる人だよ」
全員「あの正義の死神!?」
どうやら、冒険者の中でもトップレベルの火力の持ち主ですごく有名な人らしい。
と言うか、死神なのに正義の味方なの?
どんな人なんだろう?
「改めましてアルナです。リア様・・皆さんが言うところのクテン様の専属メイドです。当時学生だった私を同じく学生だったリア様にお持ち帰りされました。」
全員「・・・」
え・・人をお持ち帰りって・・学生の頃に何があったの?
「ちなみに、俺とセリカも師匠にセットでお持ち帰りされてたりするぞ。」
「え・・」
師匠さんって・・なんでそんなにホイホイ人を拾ってるの?
それと、映像の端っこですっごい高らかに笑いながらすっごい速度で絵を描いてる執事さんっぽいスーツ姿のお兄さんがいる。
「父さん・・あの端っこで高笑いして絵を描いてるっぽい人は?」
「あの人は、リカルさん。師匠の専属絵師兼執事で、世間ではビルドアーティストと呼ばれてる人だ」
全員「ビルドアーティスト!?」
なぜか全員びっくりしてる。
父さんに尋ねると世界的にも凄く有名な絵師さんらしい。
というか、後に師匠さんの獣魔と教えてもらうんだけど、脚が3本あるカラスとかブルームーン色のきれいで尻尾の長いにゃんことかとんでもなくでっかいライガーとかもっふもふのヘビっぽい何かとか人形サイズの人なのに普通に動いてる謎の美女とか色々とツッコミを入れたい。
というか、その土地に過ごしてるらしいそれ以外の動物もさすが異世界と言わざるを得ない見た目とサイズばかりだ。
「はぁ・・」
それから、こちら側のメンバーが一通り紹介した後、僕
「えっと・・初めまして。シリルとセリカの娘?のカグヤです。」
一応女の子という扱いらしいのは称号とかワザとかの総評で知ってるけどステータスには相変わらずはてなしか載ってないから素直に娘と言って良いのか疑問。
「なるほどね。良い縁に巡り会ったみたいだね。」
何かを見透かすような目で優しい笑みを浮かべて僕を見つめるイリスさんにこくりと頷く。
「性別の表記にはてなでもあったの?」
なんか質問と言うより、確信を持って確認してるって感じだ・・ホントにすごいなこの人。
「はい・・と言うよりはてなしかなかったです。」
「なるほど。こっちには男とか女とは書いてあるけどはてなも一緒に書いてあるケースなら2人いるけど。」
いるんだ・・。
しかも2人も。
そこで現れたのは、女性にもてそうなイケメンな僕と同じくらいの年の女の子。
「僕は、レリンス・セイクリッド。セイとユウの娘です。・・よく間違えられガチですが女です。」
天才と呼ばれてた師匠さんと同い年で剣術で同レベルですごいユウさんと、癒やしの魔法では世界トップと呼ばれているセイさんらしい。
・・僕が僕だからなんとなくだったけどやっぱり女の子だった。
けど、すごく女性にもてそう。(実際モテてるらしいけど)
そして次に現れたのは、黄色のような緑のような不思議な色をしたふわふわな髪を伸ばしている・・男の子?
「私はティアーネ・フィオーレ。アリスとラウの息子。・・間違えられやすいけど男。」
アリスさんは、元クラリティ王国のギルドマスターで、ラウさんはイリスさんの懐刀の近衛騎士さんらしい。
それと、男の子で合ってたぁ。
ちょっと不安だったんだよね、合ってるかどうか。
僕でこれだから普通の人たちはたぶん気付かないんじゃないかな・・。
男の娘レベルが高すぎるよ。
そして、最初に歌ってた女の子。
「改めまして、セニア・クラリティ・エトワールです。皆さんでわかりやすいところで言うと、今カメラマンになっている公爵家当主と、クテン様の娘です。最近、流転の歌姫と呼ばれてます。」
「ほう!お主があの流転の歌姫であったか。」
「そちらの王様はご存じでしたか?」
「うむ。2代目音の支配者とも戦場の歌姫とも様々な噂話を耳にするぞ?」
「なるほど。」
それと、そのセニアさんの頭の上にきれいな黄緑色の宝石みたいな色の可愛い鳥さんがいるのはスルーするべきなのだろうか?(すごいくつろいだ顔してるけど)
で、ずっとスルーしてたけど我慢出来ずに父さんに尋ねる。
「それで父さん。」
「どうした?」
「ずっと、アルナさんに抱っこされてほおずりされてる子は誰?」
さっきからずっと穴が空きそうなレベルでジーッと見つめられ続けてすっごい緊張してるんだけど・・・ホントに誰なのあの子。
「あぁ・・ちなみにその子・・・何歳だと思う?」
ん?
妙な質問・・。
で、王族メンバーはと言うと
「6」王様
「8?」王妃様
「5」王子
「9!」姫
「10?」僕
全員僕と似たり寄ったりかすっごい年下扱い。
ちなみに、騎士さんたちは7~12辺りで、メイドさんたちは6~10辺り、その他の人たちは5~9でした。
そこでニヤッと笑う母さんが正解を言う。
「正解は、27でした!」
全員「・・・」
は?
全員「はぁぁぁぁぁぁぁ!?」
嘘でしょ!?
ガチの合法ロリ!?
リアル男の娘とかリアル塚系女子とかを別にしてびっくりしたんだけど!?
全員がびっくりして色々言ってるけどその子は全く気にせずスルーしてる。
ちなみに、ずっとドーム状の石窯パン(カンパーニュって言う種類らしい)を丸ごとモグモグしている。
元々大きいパンだっていうことに加えて、幼j・・・小柄だから余計にパンが大きく見える。
「で、その幼女が私たちの師匠であるクテン様であり、エトワール公爵家夫人、フリージア・クラリティ・エトワールだよ。」
全員「マジですか・・・」
そして、そのフリージア様である幼女様はというとコクリと頷くだけ。
一応証拠として、首に提げているギルドカードで一部簡易表示してくれました。
ちなみに、今もアルナさんにほおずりされてるけど無表情でスルーしてる。
後こっちのリアクション祭りも全部スルーされました。
父さんたちが言ったとおりすごいスルー力だ。
名前:フリージア・クラリティ・エトワール
ランク:SSS(二つ名=魔鏡姫/夜叉姫)
パーティ:ハリーファ(リーダー)
性別:♀
年齢:27
種族:能天使(始祖)
身分:エトワール公爵家夫人、クラリティ王国魔術師団長、癒しの都”ルナール”領主
ホントにごく一部だけ見せてくれました。
まぁ、基本的に他人にステータスを見せることはあり得ないって言われてるから当然だし、これだけでも見せてもらっただけすごく好待遇されているらしい。
なにげにすごいモノが色々と混ざってる気がするけど、ホントにそうなんだ・・・。
と言うか、冒険者ランク最高レベル・・・道理で父さんたちを片手間に相手出来るらしい凄腕のはずだよ。
それと、天使見たいとは色々言われてたのは噂話で聞いてたけど本物のマジモノの天使様だったのはびっくりした。
まだ、見たことないから、らしいとしか言えないけど。
「改めて師匠・・お久しぶりです。」
「師匠久しぶり。」
(コクリ)
「俺たちの事情は・・ご存じですか?」
(コクリ)
そして、手書きのボードで返事してくれた。
どうやら、筆談がメインらしい。
-桜華さんから聞いてますよ。一応こちらにも家を用意してますので住処は提供しますし、無理してこなくても旅して回りたいのであれば全面的にバックアップしますよ。-
「ありがとうございます。」
-一応、私たちがバックにいることをアピールするためのモノをその魔道具の座布団の下に置いてるのでそれを使って下さい-
そこにあったのは、お花の模様が描かれた金色のコインだった。
確か、この花ってペチュニアさんと同じ名前のお花だったはず。
エトワール公爵家の家紋らしい。
「ありがとうございます。」
-今回は、推測が正しいかの確認で通信させていただきました。そちらの魔道具に関しては設定の都合上、こちらとしかやりとりが出来ませんが、どんなことでも好きに通信していただいて構いませんよ。交易もシルちゃんとセリちゃんの反応から問題なしと判断しましたので。-
「それはありがたい。常識の範囲内ではあるが、こちらの魔道具を経由して政治のやりとりなどをお言葉に甘えてさせていただきたい。」
(コクリ)
「僕たちもその確認で映ってる感じだから。後は用事ないから切るね。またね」
イリスさんがそう尋ねるとプツンと接続は切れて、透明度はなくなり再び鉄色のまん丸い物体に戻った。
と言うか、父さんと母さんをシルちゃんセリちゃん呼びするんだ・・。
ちなみに、映像を切る頃にはあのおっきいパンは完食されてました。
「想像以上でしたね父上。」
「うむ・・預言者という二つ名は少々過剰かと思ったが直接話して確信した。過剰ではないな。むしろ足りないな。」
確かにあの推理力と思考力は凄かった。
「えぇ・・本音を言わせてもらうと直接もっと話がしたかったです。あれほど凄い方は初めてだ。」
王子様はずっとキラキラした目で元王子様を見てたけど理想の人を見つけたって感じだったらしい。
「ふむ・・ありがたいと言えばありがたいが。重すぎて動かせない故に、このまま囲いを作り、この部屋の拡張をした方が正しいか?」
「でしょうな・・ん?」
「あら、どうかしたかしら?」
「いえ、手紙と小さな財布が。」
その財布は何というか小銭入れ。
「手紙にはなんと?」
「一言。財布ごとあげると・・」
財布ごとプレゼントなの?
シンプルな焦げ茶のお財布だけど、さりげなく小さな肉球マークが全体的に散らすようにたくさん書かれててシンプルっぽいけど可愛い。
「その財布には何が?」
「・・・・!?」
「どうかしたか?」
「い、いえ・・黒金貨が50枚入っていてビビりました。」
全員「!?」
黒金貨っていくら?って父さんに聞いたら、こんな感じって教わって全員が驚いた理由を知りました。
銅貨1枚:100円
銀貨1枚:10,000円
金貨1枚:1,000,000円
銅貨が100枚で銀貨1枚。
銀貨100枚で金貨1枚
金貨が100枚で白金貨1枚
白金貨100枚で黒金貨1枚
「まさか・・そのお金を使ってこの魔道具の移動か、部屋の拡張をしろと?」
「おそらく」
「すさまじいな・・いろんな意味で」
推理力と良い、そんなお金をぽいとくれる財力と言いね・・。
父さんが言うには、色々と悪党退治とかやってるのに、特に欲しいものもないからお金の遣いどころがなく、大半は募金したり寄付したり施設の維持費に回したりしてるらしいけどそれでも余ってるらしい。
つまりはお金持ち。
で、どうやら、そのお金はその通信用の魔道具の管理はそのお金でよろしくと言うことらしい。
ちなみに、そのお財布は猫好きだったらしい王妃様のものになりました。(お守りのようにしっかりと小銭を入れて懐にいつも忍び込ませてる)
お金は、この部屋の拡張とあのでっかい魔道具用の壁とか色々と整備するために使われ、余った分は国に点在する公共施設の維持費に回されました。
「それよりも父さん」
「どうした?」
「師匠さんが、見た目詐欺なのはわかったけどホントにそんなに強いのかわかんなくなったんだけど。・・あのランクだから強いのは確かなんだろうけど・・。」
「あぁ・・見た目がアレだから気持ちは凄くわかるが敵認定されたら人生終了と言われてるのに加えて、師匠は見るだけで悪い人かどうかわかるし、どんな些細な嘘でも見抜くからヘタしたら目視された瞬間に始末されるなんて普通だぞ?」
全員「・・・・」
「そんなに過激なの?」
「おう。師匠は、悪心撃滅体質って言う悪い人が近くにいたら問答無用で1人残らず始末したくなる体質の持ち主だからそれらの能力が過剰反応して一度動いたら誰にも止めることは出来ないって有名だし。」
全員「・・・」
「それもあるが、師匠の場合は世界でタダ1人魔法反射を使いこなせる天才だ。」
全員「魔法反射!?」
「魔法反射?凄いの?」
「そうだ。この世界では魔法の軌道を逸らすだけでも、世界中で多くても10%と言われてる。そのくらい凄いんだよ。おまけに、師匠の場合はサイズを小さくすれば万単位でゴーレムを同時に使いこなせる。」
「万!?」
数も凄いけど、魔法反射って難しいなんて言葉が生ぬるいほどの不可能レベルの技術らしい。
それと、師匠さんのゴーレムは1体1体が個別で生きてるように全部がバラバラに動くからゴーレムを作り出して操る技術だけでも十分規格外らしい。
「それこそが、師匠が軍勢を召還すると呼ばれている由縁だ。文字通り軍勢を呼び出すし、1人軍隊だ。」
「そのままの意味だったんだアレ・・」
「良かったな。気に入られて。」
「そうなの?」
穴が空きそうなレベルでジーッと見つめられただけなんだけど。
「師匠の場合は、お気に召さずに敵認定もされない場合はさっさと視線を逸らすからな。あれだけじっと見つめられると言うことは少なくとも興味対象にはなってる。師匠は、敵か否かと言う判断しかないからな。」
「そ、そうなんだ・・」
そんなに過剰なんだ・・と言うか極端すぎる。
「あ、シリル殿!」
「ルーナス様、いかがなさいました?」
「是非!クラリティ王国への旅に連れて行って下さい!」
「あ!私も!」
「キャリル様も!?」
「ふむ・・それは良いかもしれぬ。」
「陛下・・よろしいのですか?」
「クラリティ王国は学びの場としても治安の良さも世界トップレベルだ。であれば、心身ともに留学という形で学びに行くのはこちらとしても利点が多い。」
「それに、シリル君たちが一緒なら安心だわ。」
「そう言うモノですか?」
「うむ。実は一度はこの国を出て学ばせたいと思っておったが、色々と危険であろう?故に外に行かせようにも行かせなかったのだ。」
「なるほど」
「故に、こちらとしても大変ありがたいのだ。」
「もちろん報酬は出すわ。お願い出来ないかしら?」
「報酬は必要ありませんが、良いですよ。」
「やった!よろしくお願いしますね!あ、是非呼び捨てでよろしくお願いしますわ。」
「俺も是非呼び捨てで!」
「わかった。よろしくなルーナス。キャリル。」
「はい!」
「えぇ!」
という感じで、王子様とお姫様が同行することになりました。




