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君の騎士 ~君を守るために~  作者: 無乃海
第一幕 名栄森学苑1年生編【2部 夏の巻 編】
68/199

59話 少年の正体

 夏休み中のプライベートな2回目のお話、Part3です。

Part3でも、誰視点かが、前半と後半で異なります。


前回より、ちょっぴり暴力的な言語が増えていますので、お気を付けください。

(暴力行動はありません。)


※コロナウイルスにより、連休中に退屈されていらっしゃる方々も多いかと思いまして、連中に限り追加投稿することに致しました。

 「相手が嫌がっているというのに、それが本気で分からないのなら、相当な盆暗だよな?…あんた達って?」

 「何だと!…誰だ、てめえ!お前みたいに()()()()な、なよっちぃヤツは、引っ込んでろよ!」

 「へぇ?…見たところ、あんた糸賀しがんところの不良だろ?そのお揃いの上着に見覚えあるよ?」

 「なっ ‼ …てめえ、糸賀さんを呼び捨てにしやがって!」

 「あぁ。糸賀とは一度、ケンカで話し合いがついているのだよね。…それより、糸賀は()()()()()は許してないと思うけど?僕とも…()()()()約束しているしね。その糸賀が知ったら、…何て言うだろうね?」

 「 ‼ ………。」


私達2人の前に、突然割り込んできた少年は、どこかの御子息と言う感じが漂っていた。言葉も、私達に絡んできた明らかに不良少年達と違い、優しい言葉使いだ。

だけど、横顔を見る限り、その表情はとても厳しいものだった。…というか、冷たい感じがする。無表情に近い顔つきだと思う。


一見、この少年は、身体も細くて頼りない感じがする。しかし、目付きや話す言葉は、かなり鋭いものがある。明らかに不良達よりもまさっている。

臆した様子もなく、毅然としている。ふと、隣のナルちゃんを見ると、いつもの強気なナルちゃんが、顔を青ざめさせて小刻みに震えていた。その目は、助けてくれている少年を見つめていて、どこか不安そうな表情をしていた。私は、何故かホッとしたけど、…ナルちゃんは安心出来ないみたいね。


でも、不良少年達は、『シガ』という名前に反応して狼狽え、今は固まっている。話しの内容から、不良少年達のヘッドという立場なのかもしれない。

この少年は、そのヘッドとケンカしたと言っていて、何か約束を取り付けているみたいね。ということは、ヘッドに勝つほどの強さがあるのかもしれない。

だとしたら、きっと大丈夫だよね?


私はそっと横に動いて、ナルちゃんの手を握った。大丈夫だよと言う代わりに。

手を握った瞬間、ナルちゃんはビクッとしたけど、私の手だと分かると、少し安心したのか、身体の震えは収まってきたようだ。こんなナルちゃん、初めて見る…。

私のせいで、こんなに怯えさせてしまって、ごめんね。


驚愕の顔で固まっていた不良少年達は、蛇に睨まれた蛙の如く、始めの勢いがなくなってしまっていた。どうやら、『シガ』と言う人が()()()恐ろしいらしい。

前に立つ少年が、「糸賀に話しても、僕は構わないんだけどな。」と言うのを聞いて、「お、覚えてろよ!」と動揺したのか噛み噛みで、小さめの声で捨てセリフを言って、早足で去って行ったのだった。


この少年、ケンカしないで威圧だけで完勝して、凄いな~と感心していると、やっとこの少年が、私達の方を振り返った。…あれっ?()()に…似てる?

真正面から目が合うと、余計に誰かに似ている気がしてくる。…はて?一体、誰に似ているの?だけど、私と目があった少年は、その瞬間、驚いたような顔をする。え?何だろう?…はっ!兎に角、先にお礼を言わなければっ!


 「あ、あの!…助けて頂き、ありがとうございました!」

 「うん…。え~と…、萌々(もも)達だったんだね。絡まれてたのは…。」


少年は私達を見つめ、苦笑しながら話し掛けてくる。…えっ?私達を知っている?

それに、この話し方というか、この声って、…もしかして……。

隣のナルちゃんは、目をぱちくりさせている。誰だか、まだ分かっていない様子だった。…そうだよね。私も…、まだ()()を持てないでいるのだから…。


 「……もしかして…北岡君?」

 「ん、当たり。もしかして、全く気が付かなかったの?」

 「…うん。だって、いつもと何か…ふ、雰囲気違っている、と、言う、か…。」


私が恐る恐る訊くと、()()()()はやっぱり北岡君であった。通りで見たことある筈だよね?…でも、何で!?いつもと全然、顔つきが違っているよ!男装しても…、もっと可愛い感じだったのに…。隣のナルちゃんなんて、「ええっ~ ‼ 」と叫んでしまったくらいだ。その後、慌てて両手で口元を押さえながら、動揺していた。


目の前の少年こと北岡君は、私とナルちゃんの反応を見て、くくっと小さく笑う。いつもだったら、もっと声に出して大受けしていたに違いない。

でも、今日は、纏う雰囲気が全体的に異なっている。一体、どうしたんだろう?

まるで…別人みたいだよ。ナルちゃんは驚き過ぎて呆然としているし、私も、どう反応していいのか分からず戸惑っていると、突如として北岡君が動いた。


 「今日は、未香子の期末テストのご褒美を兼ねていてね。特別に濃い化粧をしてるんだよ。つまり、これは()()男装とかいう類なんだよ。」


私が気付いた時には、既に遅し…。私の耳元に唇を近づけて、囁くように小さな声で話して来る。北岡君の息が掛かって、耳がくすぐったくて…。

私は呆然としていた。北岡君の唇が遠ざかるまで。それからハッと気が付き、慌てて耳を手で押さえる。そうでもしないと、顔が真っ赤に染まる自覚があったのだ。

ナルちゃんは、目が点になっていた。私と北岡君を、交互に目で追っている。


私達の態度に、と言うより、私の態度にだろうけど、明らかに北岡君はくつくつ笑っている。…もう!態と私を困らせようとして、遣ったでしょ!

私がぷくっと頬を膨れさせると、北岡君は今度は額に手を当てて、ぷぷっと噴き出しているではないか!…本当に、()()()は!ホントに…心臓に悪い……。




         *************************



 

 私は、今日、萌々ちゃんと一緒に、授業で使う物を買おうと街まで来ていた。

学苑の購買で買うと、高くつくからね。少しでも安く買いたかったのよ。

今日、一緒に来れなかった(いく)へのお土産も買ったし、後は軽くお茶して帰ろうと話していた時だった。お店を出た途端、萌々ちゃんが運悪く、不良少年にぶつかってしまった。というより、向こうから態とぶつかって来たように、後で冷静になってから気が付いたけど。


でも、この時の私は完全にテンパってしまって、萌々ちゃんを助けるどころか、何も出来なくなっていた。私は…、小学生の頃、不良に絡まれた経験があり、その時に怖い目に遭ったのだ。それを思い出すだけで、体が固まってしまう。

今もその状態になっていた。怖くて、身体中が震えてしまう。


そんな私に比べて、萌々ちゃんは頑張ってあらがっていた。誰か助けて、と叫ぼうにも、全く声が出て来ない。口も上手く動かせない。

そんな時だった、助けが入ったのは。行き成り、私達と同じくらいの少年が、不良と私達の間に割り込んできた。でも、その少年は、どう見ても不良達より小柄で、ケンカしたら負けそうに見えたのだ。


ところが、実際には違っていた。少年は少しも臆する様子はなく、果敢に言葉で立ち向かっていた。然も、不良達のヘッドと思われる『シガ』という人物をよく知っていて、どうやら少年の方がケンカが強い様子が見られた。

…そんなに強いのだろうか?姿勢も綺麗で、まるでどこかの令息みたいな可愛らしい顔をしていると言うのに…。


萌々ちゃんが私の震えに気付いて、手を繋いでくれてから、漸くそう考える余裕も出て来た。目の前の少年の方が強いのなら、大丈夫だよね?萌々ちゃんにそう訊こうとしたけど、彼女は一心不乱に、目の前の少年を見つめていた。

えっ?もしかして、萌々ちゃん。()()()()でもしたの?


確かに目の前の少年は、カッコイイと思う。容姿も少し童顔だけど、背丈も私達よりあるし、申し分ないと思う。でも…こんなにカッコイイなら、彼女いるかもね。実際に、周りで見ている野次馬の中に、何人かの女子がポ~としているし。

私は()()()()()がいるから、一目惚れしなかったけど…。


そう考えているうちに、少年は口論だけで完勝したのだ。呆気に取られていると、振り返った少年が、私達を見て明らかに驚いた顔をする。えっ、何だろう?

…はあっ!?…北岡君って、…あ・の・北岡君?…う、嘘でしょう~~ ‼

思わずそう叫びそうになって、慌てて口を閉じて、両手で押さえた。

実際には、「ええっ~ ‼ 」と叫んでしまったんだけどね。


どうやら本当に、北岡君らしい…。って、いつもと全然違うじゃん!

それに忘れがちだけど、北岡君って、女子じゃん!…ヘッドとケンカしたような話してたよね?えっ?じゃあ、男子とケンカもするの?…凄っ ‼

そういえば、この前、電車内で痴漢退治したとか聞いたけど、本当だったんだ…。


すると、突然、北岡君が萌々ちゃんに耳打ちをしたのだ。見る角度によっては、頬にキスしたように見えたようで、周りの女子の悲鳴が聞こえた。

何、言ったのか知らないけど、萌々ちゃんが慌てた風に、手で耳を押さえている。それを楽しそうに見つめて、北岡君はクツクツ笑ってもいて。

何だか、私が知らない間に、親密になっているんじゃない…?この()()…。


…大丈夫かな?北岡君が、女性だって忘れてないかな?萌々ちゃんは、郁と違ってまだ()()()()理解してないよね?それに…、北岡君には九条さんもいるんだよ?

これが郁なら、そこまで心配しない。…萌々ちゃんだから、心配なんだよね。

 前回の暴力行為(言葉など)の内容を含む、続きの展開となっています。


前回は、少年が誰だか分からない展開で、終了していますが、お気付きになられていた通りの展開だったでしょうか?

そう、2人を助けた少年は、男装した夕月でした。いつもより男装が念入りの為、2人は気が付かなかったようです。

そして、夕月もまた誰かも知らず、飛び出して助けた次第です。


補足ですが、鳴美が心配しているのは、萌々花は割とそそっかしい感じなので、そんな保護者的な意味で心配しているのでしょう。その鳴美も意外な面が…。

今回は、萌々花達の補足として、鳴美視点にしてみました。



※前半が、前回の続きの萌々香視点で、後半は、初の鳴美視点となっています。

 未香子は店の中で待っている為、彼女の視点はありません。

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