57話 夕月とデート♡
夏休み中のプライベートなお話でも、別のお話Part1です。
Part1は、未香子視点となります。
副タイトル通りの内容で、女子2人のデート風景となります。このお話は、暫く続く予定です。(副タイトルは各々変更予定)
お盆休みも終わりを告げ、夏休みもあと僅かとなっていたある日のこと。
私と夕月は久しぶりに、2人だけでのお買物に行くことになっていた。
私達が出掛けるまでは、兄と葉月が付いて来る、とごねるのではないかと疑っていたのに…。あの2人が、何も言って来ないことがあるとは…。不思議である。
夕月は、一体どうやって説得したのでしょうか?
兄達と4人でドライブしてからは、部活以外では、何かと4人で出掛けることが多かった。その部活でさえ、登下校する際は、真姫さんの運転する車である。
夕月と2人きりになることは、あれから全くなかったと言ってもいい。
もう!兄も葉月も、心配性過ぎますわよ!
だから、今日も付いて来るのでは?内心では、そう思っていたですが…。
それどころか、私達が出掛ける時には、既に2人共、先に何処かへ出掛けてしまったようで。相当、急いでいたと聞きましたわ。でも…、良かったですわ。
お二人に、何か用事があったみたいで。ほっ。(心から安心する様に、息を吐く)
あの後から、葉月ともすっかりと誤解が解けてみたいで、以前のように嫌みを言われたり、邪魔をされたりはしなくなった。それどころか、彼と目が偶然合った時に私が微笑み返すと、プイッと顔を背けられてしまうのには、…正直傷つきます。
私自身も、葉月に歩み寄ろうと頑張っているのですが、上手くいきませんね…。
お盆休み中は、私達家族も、祖父母の自宅に遊びに行くことになり、2泊3日で家を空けていましたのよ。と言っても、三千さん達、お手伝いさん達が、お留守番してくれていたのですが。去年までは、うちの専属運転手に運転して、祖父母の所に出掛けていた。ですが、今年は、初めて兄の運転で行きましたのよ。
両親も久しぶりにお休みを取って、家族4人だけでドライブして、祖父母の家に出掛けて行ったのは、本当に楽しかったですわ。我が家では、一緒に出掛けることの方が、滅多にないのですもの。これが、家族水入らずというものなのですね?
北城家の一家も、お盆休み中は、ご両親の実家に出掛けたりするようです。
私の祖父母の自宅とは違い、北城家の実家はどちらも、日帰りできる距離の近場だということで。それでも、最低でも1泊ずつは、泊って来るようです。
親戚中が集まるので、色々と大変のようなのですが、夕月の顔を見ていると、何だか楽しそうなのですよね。賑やかそうで、羨ましいですわ。
「今年のお盆は、今迄の中でも断トツに楽しめそうだよ。」と、夕月が意味ありげに話していて…、どこか楽しそうで。何かいいことでも、あったのでしょうか?
私が不思議に思っていますと、「ふふっ。実は、会いたい人が居てね。夏休み前までずっと会っていたから、余計にね。」という、謎の答えが返って来て。はて?
ずっと会っていたとは、どういう意味なのでしょう?全く意味が分かりませんが?
私が目を丸くしていますと、夕月が「今は内緒。」と、片目を瞑ってウインクしてくるので、思わず見とれてしまいました。もう、眼福です。滅多に見られない夕月の表情、『その2』なのですもの。ウインクが『その2』とすれば、『その1』とかもあるのかって、思いますよね?そうなのです。ありますとも。
『その1』は…、実は、鼻歌なのです。夕月は歌がとっても上手なのに、人前では歌うことが殆どない。況してや、鼻歌なんて、滅多にしないのである。
鼻歌が聴ける機会でもあるならば、超ラッキーだと思って頂戴な。夕月がとってもご機嫌がいい証拠なの。初めて見た瞬間は、とても愛らしいと思ったものよ。
因みに『その3』は、子供っぽく燥ぐところかしらね?その時によって、微妙に行動が異なりますが、とっても可愛らしかったですわね。普段は大人びた夕月ですから、余計にそう思いますの。…思わず、クスって笑っちゃうほどで。
走り回ったり、飛び上がったり、将又、側転したり…。小学生頃までは、よく見られた光景でしたが、最近はメッキリなくなった行動ですのよ。…残念だわ。
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本日の夕月の服装は、完璧な男装姿であった。実は…、今日はデート仕立てなのですわ。残念ながら、デートみたいな、と言う言葉が付きますが…。
それでも、私は嬉しいのです。私にとっては、これはご褒美デートなんですもの。
1学期の期末テストで10位以内に入ったら、夕月がご褒美をくれるって、私に約束してくれたのである。
人間って、ご褒美目当てならば、普段以上の力が出せたりするものなのね。
私も、「何でも、未香子の我が儘を聞くよ。」の言葉に、私の持てる力を全力で出し切ったのであった。そのお陰で、ご褒美を貰えることになり、私は心のままに、1番望んでいることをお願いした。「夕月とデートしたい!」って。
「OK。なら、念入りに完璧な男装をしないとね。」と、一瞬だけ目を丸くした夕月は、笑顔でそう応じて…。
今日の男装姿は、いつもと微妙に異なっていた。お化粧も薄くてもしっかり施しており、いつもより凛々しい感じである。普段の可愛い少年が、年相応の少年に見えるぐらいには。宝塚の麗人みたいって、郁さんなら言いそうね。
それでも、宝塚の麗人は、女性だと分かるでしょう?でも、夕月の男装姿は、女子だとは思わないくらいに、違和感がないものなの。
実際に、私は、夕月とカップルらしく腕を組んで歩いている。先程から2人で歩いていても、誰も変な目で見ないどころか、怪しんでいる様子はない。
それだけ私達が、普通の男女のカップルに見えるのでしょうね。
童顔なのは、お化粧しても変わらない。それでも、普段よりは少しだけ年上に仕上がっている。いつもならお姉さん方が、可愛い年下の少年として騒いでいるのに、今日は、同じ年くらいの少女達も振り向いて来る。世間的に見ても、イケメン過ぎる男子より、可愛い系の男子の方が、身近に感じるのね。
因みに今日の私は、夕月に合わせてコーディネートしていた。舞台以外での日常では、全くお化粧はしないのですが、今日の私は、しっかりとメイクしていた。
老けて見えるだけでは?私はそう思っていたので、これまでお化粧をしたくなかったのです。それなのに、夕月が「今日は、モデルメイクみたいだね。」と、乙女心を擽る言葉で褒めてくれて。それだけで、私の憂鬱は吹き飛んでしまったわ。
このような事情もあって、私達は2人共に、周囲の視線を集め捲っていた。
普段の倍ぐらいには…。…今日は仕方ない、と諦めよう。
夕月もノリノリで、彼氏のフリをしてくれる。周囲から見れば、彼氏彼女だと思われていることだろうな。うふふふっ。今日の視線には、優越感に浸る私。
見てる、見てる…。今日は、見られることにこそ、快感を感じてしまう程に…。
「さて、お姫様。何処から見たい?今日は1日中、お姫様の我が儘にも、何でも付き合うよ。」
「う~ん…そうね。あっ、あの雑貨ショップに行きたいわ。」
夕月が低めの声で、何処に行くのか問いかけて来る。私は、周りをグルっと見回してから、目線に入ったお洒落な雑貨屋さんを指さした。実に、私好みの可愛い雑貨店である。そして夕月も。案外、可愛い雑貨に目がないのである。
「了解。では、早速行こうか?」
途中で立ち止まっていた私達は、雑貨店を目指して歩き出した。雑貨店に到着すると、私は、自分の部屋に飾るような小物を見て回る。夕月は、今日は自分の物は買わないみたいで、私のすぐ傍から離れないでいる。私が買うものを、一緒に選んでくれたりして。今日は男装している所為で、女子が好むような小物を買うには、抵抗があるのであろう。
私が、夕月の分も買っておこうかな?幼い時からずっと一緒に過ごして来たので、夕月の好みはよく知っている。これなんか、諸、夕月の心を鷲掴みしそうね?
序でに、私とお揃いを買おうかな?この小物の色違いなんて、良さそうよね。
幾つか見繕って、レジで4つの袋に分けてもらう。私用、夕月用、そして、お兄様用にお土産を買い、残りの1つは…葉月用として。あの時もそうでしたが、これからも当分の間は、私の為に、付き合ってもらわなければならないものね。
男性嫌いを直すためにも…。ですから、ご迷惑をお掛けするという意味で…、ただのお礼のようなもの。そう言い訳をして…。
その間、夕月は、私の買物を黙って見ていた。私が袋を4つに分けてと、話している時にも、クスッと笑っていたから、私の意図に気が付いたのだと思う。
…本当に、何でもお見通しなのだもの。ちょっぴり悔しい。だから、敢えて私も、同様に知らん振りをする。
「次は、あのお店に行きたいわ。」
「了解。今日は、とことんお付き合いしますよ、僕のお姫様。」
前回までのプライベートなお話は、終了しておりますが、今回からはまた別のプライベートなお話となっており、一見して前回同様の続きに見えるかと思います。
こちらのお話の展開は、前回までと逆に、ほのぼのムードだけではない予定です。今後、多少の暴力行為(言葉など)の内容を含む展開を、予定しています。
遊園地事件のような暴力は、(アクションシーン等は)避けるつもりではいます。暴力等が苦手の方には、ご注意願います。
ところで、夕月が会いたい人とは、誰でしょう?…これは、その人を揶揄うつもりでいますよね?…いい性格してますね。




