44 意気消沈して
校門で真波と別れ、天は肩を落としながら、商店街を歩いた。
これまでの学校生活を思いだす。お飾りの生徒会長にされてからは、今日のようなことは日常茶飯事だった。
宿題のプリントを破られたこともある。机の中身を校庭にばら撒かれたこともある。だから慣れている。
しかし、天の心は、それらの時よりもさらに落ち込んでいた。
最近は、海智留と真波のおかげで、少しだけ明るくなれていた。だというのに。
家に着いた時、天はパンを買い忘れたことに気づいた。だが、それもすぐに、まあいいや、と思えてくる。
着替え、食事を済ませると、天は自分の部屋で、ベッドに寝転んだ。
天井を見ながら何も考えずにいると、スマホが震えた。
『大丈夫ですか、天センパイ……?』
真波からだ。天はすぐに、大丈夫、とだけ打ち込んで返した。
おそらく、真波はすぐに察するだろう。嘘だと。
だが、今の天には、大丈夫、の三文字を打つ気力しかなかった。不幸自慢などしたくないし、真波に弱音を吐くのも嫌だった。
また、通知が届いた。見るのが億劫だ。
通知はその後、何度も届いた。ひっきりなしだった。
だが、天にはもう今日は何もする気が起きなかった。明日にでも見ればいいや、と。
このまま寝てしまおうか。そう考えていると、スマホではない何かが鳴る音がした。
パタパタという足音と、はーい、という返事。母だろう。
誰かが訪ねてきたらしい。時計を見ると、もう八時を回っていた。変な時間に来るものだな、とぼんやり思う。
すると、母の足音が近づいて来た。さらに、
「天、お客さんなんだけど……」
ドアがノックされ、母が顔をのぞかせた。
「え?」
こんな時間に誰だろうか。
まさか真波か、と起き上がる。返事をしなかったので、業を煮やしたのだろうか。
しかし、ドアから入って来たのは、真波ではなかった。
「こんばんは、天さん」
肩のあたりで切りそろえた髪、何を考えているのか分からないすまし顔。今日は濃紺のワンピースを着た女の子。
「お返事をいただけなかったので、直接参りました」
そう言って頭を下げたのは、海智留だった。




