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30 通知確認は忘れずに

定番のネタです。

 天は、休日でもいつも通りに起きるタイプである。

 起床、洗顔、食事、歯磨き、毎日のルーチンを欠かさず行う。

 ただし、逆に言うとルーチンから外れたことはやらない。例えば、


「おはようございます、天さん」


 起き抜け一番でスマホの通知を確認したりは、範疇外だった。

 なので、


『さっそく本を借りにうかがいます。お部屋の片付けもやりますので、ご安心ください』


 というメッセージを、ものの見事に見過ごした。

 なんで海智留みちるが天の家を知っていたかは、この際、気にしない。

 ただいま、日曜日の午前十時過ぎ。昨日の今日とは、まさにこのことか。

 まず応対してくれたのは、母だった。息子に来客など珍しいと思い、ドアを変えてみたら女の子がいて驚いたとのこと。

 次に出たのは、父。驚きで固まっている母を見て、さらにその先にいた女の子に、これまた驚いていた。

 最後に、天である。振り向いた両親の視線を受けつつ、


「い、いらっしゃい、海智留みちるさん」

「お邪魔します」


 丁寧にお辞儀をして、海智留みちるは玄関に入って来た。


「はじめまして、お父様、お母様。私は天さんの後輩で、陸野りくの海智留みちると申します。あ、こちらはつまらないものですが」


 袋から取り出したのは、ラッピングされた箱。渡された母は呆気に取られており、反応が遅れている。

 なので、代わりに天が、


「ありがとう、海智留みちるさん。わざわざ……」

「いえ、天さんのおうちにうかがうなら、当然の配慮です。日持ちするものを選びましたので、ゆっくり召し上がってください」


 中身は、菓子折りらしい。なんというか、海智留みちるらしいとでも言おうか。友人宅に行くだけでも土産を用意するとは。

 今日は、若草色のワンピースだった。五月の青い空に映える良い色だ。


「えっと、それじゃ、どうぞ」

「はい、失礼します」


 家族以外の人を部屋に招くなど、いつ以来だろうか。すっ、と自然に、入ってこられるともはや何も言えない。

 昨日、マンガを揃えるついでに軽く片づけをやっておいてよかった。

 それに気づいたか、海智留みちるも、


「……片付ける場所が少ないですね」

「いや、それはいいから」


 少し落胆している様子だった。

 天の部屋は、もともと物が少ない。趣味といっても、マンガを読むか、CDを聞くか程度。場所を食うようなものは部屋になかった。

 机、本棚、ベッド、タンス。見られたくないブツは、きちんと隠してある。


「ベッドの下、というのはもう古風らしいですね。ということは、そうですね、机の中が二重になっているとか」

「ないない」


 そこまで手を尽くしてはいない。


「ちょっと待ってて。今、テーブル持ってくるから」

「はい。お待ちしています」


 確か、小さな座卓があったはず、と天は別室へ探しに出た。

 その間、おそらく三分程度。だというのに、部屋に戻ると、


「おかえりなさい。軽く片付けておきました」


 机の上が、綺麗に整頓されていた。さらには、本棚の奥にあった、


「天さんのご趣味が、少し分かりました。収穫です」


 ブツを見事に見つけられ、天は後ろにひっくり返りそうになった。

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