実力の違い
遅くなりまして申し訳ございません。
ビルから出た優雅は周りに人がいないことを確認し、上空へと勢いよく飛び上がる。
途中、失速した優雅の身体を風遁忍術で再び上空へと押し上げビルの屋上へと着地した。
「さすがに高かったな。さて、やつが放った狼は――見つけた」
優雅は幻獣の気配を特定すると屋上から屋上へ飛び移るように幻獣の後を追う。
「結構速いな。まぁ速度重視で生み出したんだろうから当然か」
独り言のように呟きながらも着実に距離を詰めていく優雅。しかし、幻獣はあるところで突然動きを止める。
「そこが会場か。やっぱ間に合わなかったな。仕方ない」
優雅はそういってさらに加速した。
幻獣がいたあたりへと行きついた優雅だったが幻獣の気配はすでに消滅している。
(目的を終えたってことか……なら……)
優雅は会場の庭へと足を進める。
中央に大きな噴水のある広大な庭だ。もちろん会場となる建物も庭の端まであろうかというほどの幅である。おそらくホールのような作りだろう。
優雅は噴水の前までたどり着くと足を止めた。
同時に、ブゥンっと広大な庭を覆うように景色が歪む。
「これは透視結界か?」
優雅がそう呟くと、後方に人の気配が現れる。それも複数。
優雅は別段慌てた様子もなくゆっくりと気配の方へと向きを変えた。
「8人か。向うに二人いるから全部で10人、まぁそんなところだろうな」
優雅がそんなことを口にしていると丁度優雅の正面に立った男が優雅を見下したように声をあげる。
「小僧、わざわざ1人で死にに来るとはご苦労だな、くくく」
しかし優雅は男の声に耳を傾けることなく噴水を背にした優雅を囲うように立った8人の男たちを力量を図るように順に目をやる。
「どうした小僧?8人もいては怯えて声も出せんか?」
男の言葉にほかの男どもが、くくく、と笑みを浮かべている。
(やれやれ、何がそんなに面白いのか)
優雅はそんなことを思いながら最後の男のに目をやったあとようやく男たちに向かって口を開いた。
「お前たちの目的はなんだ? 九峰院華音を殺すことか? なら――」
しかし、優雅の言葉は先ほど喋っていた男の怒号によって途中で遮られた。
「黙れガキが! 自分の置かれた状況をよく見てみろ!
貴様に発言権などない! 貴様は此処で黙って死んでいればいいのだ!
貴様のような甘ちゃんな……忍学生はな! おい、構えろ」
怒鳴り散らすように言った男は最後にそう言い、次いで他の男たちが忍術の構えをとる。
リーダー格っぽい男も同様に構えた。そして。
「やれ!」
その一言で全員が優雅へ向けてそれぞれ忍術を発動した。
(火、水、風、土の忍術者が2人ずつか。しかし、透視結界で周りにはおれたちの姿や音は伝わらないようにしてるとはいっても物は壊れるんだからもう少し考えたらどうなんだ?)
優雅自分に向かってくる忍術を見ながらそんなことを考え、そして男どもの攻撃は同時に優雅へと激突し爆発する。
「死んだか。ボスがあまりにも警戒するからどんな奴かと思いきやなんてことはない。
所詮、甘ちゃんの忍学生だ」
男がそう口にする中、次第に爆炎が晴れ視界が落ち着き始めたところで男たちは揃って驚きの声をあげ、あり得ないといった表情をする。
「ばかな! 貴様なぜ立っていられる! おれたちの忍術は確かに直撃したはずだ!」
そう、男の言うとおり8人の忍術は優雅に直撃した。
しかしそれは男たちの視点からは、というだけのことだった。
8つの忍術はそれぞれの位置から一直線に優雅へと向かい激突の寸前で交差する。
優雅の姿はそこで一瞬、男たちからは忍術によって隠れる形となった。
優雅はその一瞬で風遁忍術の『風障壁』を発動し、男たちの忍術を防いだのだ。
「くっ! 火遁だ! 最大火力で燃やし尽くせ!」
男がそういうと両端の火遁忍術使い2人がまるで火炎放射のような炎を優雅へと放つ。
「無駄だ」
優雅はそう言って軽く右手を横から扇ぐように振る。
すると先ほど8つの忍術を防いだ『風障壁』が再び優雅を囲うように現れ、火遁忍術を相殺した。
「何か勘違いしているようだがあんたら程度の力じゃ何時間やったっておれを殺せはしないさ。だからあまり無駄なことはしないでほしい。大人しく降参しろ」
優雅は静かに、だが若干の怒気を込めたように提案する。
「だ、だまれ! だれが貴様のようなガキに降参などするか!
水遁、『水連弾』(水弾三発)!」
男はかなり焦ったようにして忍術を放った。
(やれやれ)
「水遁、『大津波』」
優雅はここへ来て初めて風遁忍術以外を使った。理由は簡単だ。
目の前の水遁忍術使いに、実力の違いを分からせるためだ。
幸い、優雅の背後には噴水という大量の水が用意されている。
優雅はその水を思う存分に使う。
優雅の放った『大津波』は噴水の水を自信が生み出した水で吸収し、拡大。
そしてそのまま、さながら暴風時の高波のごとく男たちへと向かい、途中男の放った『水連弾』を軽々飲み込み、男たち全員を飲み込む。
「う……げほっごほっ! くっ! あ、ありえん! 貴様、なぜ水遁が使える!
貴様は風遁忍術者ではなかったのか」
『水連弾』を放ったリーダー格っぽい男は何とか立ち上がり優雅へそう問いかけた。
他の男たちは今の一撃で完全に気を失っている。どうやらこの男が8人では一番実力が高いようだ。それでも優雅にとってはごく僅かな差でしかなかったのだが。
「それをあんたに教えておれになんのメリットがあるんだ?
さんざん人の話を聞かなかったあんたが。
そんなことより頭上に気を付けた方がいいぞ」
「なに?」
優雅の言葉に男は思わず頭上を見上げる。
しかし直後、男に激しい光と音とともに落雷が直撃した。
「なっ! ぐがあぁぁぁぁ! あ……う……」
男は鈍い悲鳴をあげ、そのまま意識を失った。




