みつける
錆び付いた金属の香りをリボンは探知できない。「人間のような機能」を持つことは出来なかったからだ。
だが、自我を得たことでよかったことは、「作業」として行っていたことに判断が付随するようになったことだ。
役割は、記録と復興。
人類と地球を結びつける最後の役割は、失われつつあった。
脚部の車輪を稼働させ、荒野を走る。
かつて仲間が植えた木は、一辺倒な色をした地面とは対照的に、豊かな緑を風に任せていた。
季節が、変わった。
サーチライトを不規則に点滅させている仲間は、いつまで経っても変わらない。
不思議だ、と思いつつ、珍しく考え込んだ。
リボンの胸部にあるランプが点灯した。
瓦礫の下に、何かに埋まっている。本棚のようだ。
みつけた!
長い歳月は多くの本を蝕んでいたが、1冊だけ無事な本を見つけた。
タイトルは無い。中身をペラペラと捲ると、白紙のページばかりが目に入る。
半分くらいに差し掛かった辺りで、ようやく文字を見つけた。
「点と点は結ばれている。」
内容はよくわからなかった。他のページに文字は全く無い。
だが、紙というだけで貴重なのが今だ。保管庫に運ぶため、自身の腹部の格納スペースに収納した。
道中、不思議なものを見た。先ほど居た場所に、晴れていても分かるくらい強い光が射していた。
黒い点のようなものも一瞬映った気がするが、別に気にせず戻った。
荒廃後の地球では異常気象、というよりは異常現象が多発していた。そういった情報も事前に多く組み込まれていたため、リボンは「よくあること」ぐらいに思っていた。
────。
保管庫。世界中に設置されている資料格納スペース兼保存のための場所。6つの有名な保管庫があり、『大和保管庫』『シベリア保管庫』『南海保管庫』『赤道保管庫』『ニューヨーク保管庫』『ドイツ特別保管庫』が中心となって世界162箇所の地方保管庫と連携している。
一番近かったのは大和保管庫だったため、リボンは中に入った。
綺麗に整頓された資料や、それに準ずる機械が厳重に並べられている。
紙媒体はさらに奥の日除け加工が施された部屋に置かれる。
砂埃を取り除くため、リボンは格納スペースから本を取り出した。しかし、出てきたのは少量の土と砂のみ。
落とした、とは考えにくい。
そもそも入れていなかった、これもない。
だが、リボンは割りきった。1行しか書いていない本に記録の必要性は無い、と判断した。
とはいえ、滅多に見つかることの無い紙の資料だっただけに、少し落ち込んだ。
ひま。
久しぶりに見つけた仕事が無くなった。とはいえ、なかなか来る機会の無い保管庫をたまには探検してみようと思った。
金属でできた床をゆっくり、カタカタと音を立てて進む。もう殆ど残っていない仲間とたまにすれ違う。資料を守っているのだろうか。
栄光を極めた人類の遺産。崩れた巨大電波塔の一部や、壊れたロケット、映らなくなった簡易液晶、頭部の消えた彫刻など、完全な状態で残る資料は少ない。
その数少ない完全な資料の中に、『永久電力』があった。地球の核に直接接続し、内部の熱エネルギーを大量の電力に交換している。リボンたちの電力もそれで賄われていた。
奥に進めば、特別資料室がある。黙って覗いてみようと近づいたその時、
「館内で異常を検知しました。出動できる方は至急1階第7フロア特別資料室番号14884205システムを再稼働させてください。繰り返します。館内で異常を……」
若い女性の無機質な声が響いた。
リボンはこの指令を無視することはできない。早急に対応できるのは今この場には自分しかいないと分かっていた。
「識別番号63-Rbを検知しました。解錠します。」
ギギギ…ときしんだ音を立てて扉が開いた。
走った先に見つけた「異常」とは、
見たこともない白い球体だった。




