プロローグ 雲一つない青空
メイリー・オーランドは、自室のベランダからどこまでも澄み渡った空を眺めていた。ゆるやかな風が薄紅色の髪を揺らし、頬をくすぐる。
王城は丘の上に建てられているため、そこからの景色は絶景だ。
「今日は朝から武術の稽古かぁ…」
未来の国王候補としての日々は忙しい。武術の稽古、帝王学の勉強、貴族との交流、最近王国内で話題となっている魔法の勉強……やることは山積みだ。
to doリストを頭に浮かべて憂鬱になっているところで、コンコンと誰かが部屋の扉をノックした。
「メイリー様、リアでございます」
「入っていいよ」
「では、失礼します」
丁寧な所作で扉が開けられ、リアが入ってくる。
リアは、メイリー専属のメイドだ。銀色の長髪は丁寧に整えられており、メイド服にはシワなど一切ない。リアはメイリーが生まれてから13年間、つきっきりでメイリーを支えている。
「稽古場への移動のお時間となりましたので、お迎えにあがりました」
「わかった、もう準備はできてるから」
王城の庭にある稽古場は、普段王国騎士団の訓練に利用されているが、騎士団の訓練が休みの日はメイリーの稽古に利用されている。芝生が綺麗に生え揃った庭も、ここだけは荒れて土が見えている。
「メイリー様、お待ちしておりました。第2騎士団長のレイです。本日の稽古は、第1騎士団長カイゼルが遠征で不在なため、私が担当します。よろしくお願いします」
「うん、よろしくね!」
メイリーと武具を持ち同行していたリアを出迎えたのは、第2騎士団長のレイだった。金髪を高い位置で結び、騎士団長しか着用を許されない王国の紋章が胸に刻まれた鎧を身につけ、右手に稽古用の木刀を持っている。彼女は騎士団長で唯一の女性だ。
「先日は剣技と足技のコンビネーションを学んだと聞いております。なので本日は、その復習から始めましょう」
「はい…!」
「ふふっ、そんなに力まないでいいんですよ。肩の力を抜いてっ」
稽古は意外と楽しい。特に、天気の良い日にすると高揚する。
雲一つない青空。しかし、かすかに黒色が侵食していることは、オーランド王国の、誰も知らなかった。
記念すべき第1作目となります!




