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正義のカタチ~悪の組織の幹部を倒した火系超能力者の少女は、決闘罪で逮捕されたので、脱獄してダークヒーローになります~  作者: 刺身


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第3話 取調室

――翌朝


「98番、起きろ」


その声で目が覚めた。鉄格子の向かい側で、男性警官が紅羽を呼んでいた。


「なんなんですか?」


「取り調べだ」


「......はい」


男性警官は、ドアの鍵を開け、独房の中に入る。そして、紅羽の腰に縄を巻いて、独房から連れ出す。


紅羽は鉄格子の光沢に映った自分の姿を見る。自分につけられた手錠と縄――惨めさで目を背けてしまった。紅羽は取調室に連れていかれたのだった。


―超能力者留置所の取調室にて


「さあ、取り調べをはじめましょうか」


清滝は椅子に座って、紅羽の目を見つめる。紅羽は縄で椅子に縛られ、両手には手錠がかけられている。取調室には、テーブルとライト、2つの椅子が置かれ、マジックミラーで外から警官が二人の様子を見守っている。


紅羽が先に口を開く。


「あの、ジェームズはどうなったんですか?」


「ああ、あの男?今あなたと同じように、別の部屋で取り調べを受けてるわよ。とはいえ、あいつらが簡単に口を割るとは思えないけど」


「そうですか......」


「あなたはなんであのジェームズって男と戦ってたの?」


「......あの組織があそこの港で、何らかの取引をしてるって情報を掴んだんです。だからそこに行けば組織につながると思って」


「あなたと組織に何の関係が?」


「昔、と言っても3か月ぐらい前ですが、私の学校で誘拐事件があったんですよ。私の友達もさらわれて。その調査をしていくうちにあの組織が絡んでいるのがわかったんです」


「学校での誘拐事件......そういえばそんな事件もあったわね。私たちの課にも情報は回ってきたわ」


「私は友達を取り返すため、誰も傷つかない日常を取り返すために。あいつらと戦ってきました。私は悪いことをしたとは思ってません」


紅羽はきっぱりと言った。


「紅羽さん、気持ちはわかるわ。それにあなたの学校での誘拐事件を解決できなかったのは私たちの責任よね、ごめんなさい」


「......でもだからと言って、私たちはあなたの行動を認めるわけにはいかないの。個人が勝手に超能力で戦うことを認めたら、この国の秩序は崩壊してしまう」


清滝は口調を強めていった。紅羽はこれまでの戦いを振り返る。思えば違法行為もたくさんあったかもしれない。


「知ってる?日本では14歳以上から刑事責任に問えるの。その上に超能力を使った犯罪は厳罰化されてるのよ。確かにあなたには情状酌量の余地があるかもしれないけど、このままいけば実刑は避けられないわね」


「脅してるの?」


「......まあそう受け取られても無理はないわね。でも、私たちは別にあなたの人生を壊すのが目的なわけじゃないのよ」


「どういう意味?」


「取引しましょう」


「取引?」


「ええ、私たちがあなたに求める条件は二つ。一つ、あなたが持ってる限りの組織の情報を私たちに渡すこと。二つ、これ以降あなたは組織に関わらないこと。そうしたら、私たちはあなたを今すぐ釈放してあげるわ。少年院にも刑務所にも行かせないし、親にも報告しないし、前科もつかない。組織については私たちがしっかり追うから、あなたはもう普通の中学生に戻って」


「......それが取引?」


「あなたにとっても悪くないと思うけど」


紅羽はしばらく黙り込んで考える。確かに悪くない―それどころか破格の条件だ。屈辱的な手錠と縄から解放され、退屈で頭がおかしくなりそうな鉄格子の檻に入れられることもなくなる。


それに清滝の言ってることも、間違ってはないのかもしれない。紅羽には人を裁く権利なんてない。超能力を使って、正義の暴力を振るえる立場ではない。


取引を受け入れれば、社会から犯罪者として扱われることもなく、()()()()()()として、学校に通い、当たり前の日常を送れるのかもしれない。それはきっと賢い選択だ。


――それでも、それは本当に紅羽が望んだ日常なのだろうか。組織のことを見えないふりして、聞こえないふりして、何も知らないふりをして生きていく。誰かが傷つけられてるかもしれない、また友達がさらわれるかもしれないのに。


力があるのに、戦えるのに、それでも何もせずに普通の学生生活を送ることなど、紅羽には到底できなかった。


「......お断りですね。情報を渡すのはいいとしても、私は絶対に組織から手を引かない。友達がさらわれたのに、じっとしてなんていられない」


紅羽のその言葉に、清滝は驚いたようだった。しばらく間を置いた後に、清滝は言う。


「紅羽さん、あなたはヒーローというロールに酔いしれてるだけじゃない?あなたが動かなきゃいけない理由、動いていい理由なんて一つもないのよ」


「......かもね。でもだからと言って、私は止まれないんだよ!」


紅羽の声はだんだんと強くなる。今まで受けてきた理不尽、不条理が沸き上がるように。


「紅羽さん、それは......」


清滝の言葉を遮るように、紅羽が張り上げる。


「それを罪というなら―私は、犯罪者になってでも戦うよ!」


紅羽は手錠の鎖を鳴らした。


「私に罰を下したいなら取引なんてせずに下せばいい、できるものならね」


紅羽は叫びながら必死にもがいて、縄をほどこうとした。


「こんなとこすぐに抜け出して、今にでも組織を潰しにいってやる!」


「ちょっと!暴れちゃだめよ!」


清滝は紅羽のほうに向かって手を伸ばす。その瞬間、紅羽の動きがピタリと止まる。肩も、腕も、手も、足も、首から下の体がすべて動かない。


(何、これ。動けない。なんで......)


まるで透明な巨人の手に握られているような感覚だった。体が圧迫されて、動けない。


「もうわかったわ。とりあえず牢屋に戻ってなさい」


紅羽はそのまま椅子ごと《《持ち上げ》》られて、部屋の外に連れ出される。まるで紅羽が椅子ごと宙に浮いているようだ。


「ちょっと!何これ?あんたの超能力!?」


「さあ?敵になるかもしれない人に教える義理はないでしょ?」


紅羽はそのまま、独房のほうに連れていかれる。


「......ちっ」


「あなた、舐めすぎなのよ。組織のことも、私たちのことも、ね」

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