後はお願いね。
3学期の期末試験が終わり明日から学校は休みに入る。
川井涼子は敷島香織に呼び出され生徒会室に来ていた。
「ごめんね涼子」
「いいえ敷島さん、今日は?」
今生徒会室には2人しかいない。
今日の用が何か見当が着かない涼子だった。
「まあ座って、何時もの香織で良いわよ」
「分かった、香織」
2人は学年やクラブは違えども何故か気が合い仲が良かった。(北川の事件の際、少し関係がおかしくなった時があったが)
「新生徒会役員は桜から聞いた?」
「ええ」
「びっくりしたでしょ?」
「そうですね、まさか中山さんや謙二さんまで入れるなんて」
静嵐高校の生徒会役員は2年以上しか務める事は出来ない。
転入してくる麻里や謙二は2年だから規約上は問題は無いのだが、いきなりの生徒会役員は異例だった。
「桜は出来るだけ新しく役員を刷新したかったの」
「会計の2人は去年から留任なんですね」
「お金の動きは慣れてる人が適任と判断したのよ、でも安心して」
「安心?」
「ええ、会計の人は広田君や斎藤君に行かないから」
「は?」
「2人共付き合ってる人がいるから」
「ああ、成る程って、何故それを私に?」
涼子は香織に乗せられそうになっている事に気づき聞き返した。
「涼子、斎藤君を支えて欲しいの」
「え?」
真剣な眼差しで香織は涼子に言った。
「あの支えるって?」
「涼子、あなた斎藤君が好きね」
「か。香織いきなり何を...」
「違うの?」
『そんな事は無い』そう言いたい涼子だが畳み込むような香織の言葉に何も言えない。
「私は斎藤...いえ謙一さんが好きよ」
「それなら何故?謙一だってきっと香織の事が...」
「でも駄目なの」
苦しげに香織は呟く。
「どうして?好きなら...」
「私は彼の彼女は出来ない」
「ええ?」
意外な香織の告白だった。
「卒業したら関東の大学に通うし」
「どうして関東の大学に行ったら無理なんですか?
遠距離恋愛なんていくらでもあるじゃないですか」
「彼は私にお母さんの幻影を見ているわ」
「幻影?」
「涼子も知っているでしょ、謙一さんのお母さんの事」
謙一の母、それは10年前に家族を棄てて家を出た女の事だ。
「はい」
「私気づいたの、謙一さんは私にお母さんを見たのよ」
「それでも良いじゃないですか。
告白して付き合えば!」
「告白してどうするの?
『私は斎藤君が好きです。
でも私の居場所はここじゃないの、関東に行きます。離れ離れね』って言うの?
彼はお母さんに捨てられてるのよ?
好きになってくれた私が居なくなったら彼は...彼は...」
香織の目から涙が溢れる。
「香織...」
「...謙一さんは私の気持ちに気づいてない、だから私は告白しないで黙って卒業するの。
彼を託せるのは涼子、貴女だけよ」
「...どうして私なんですか?」
「あなたは彼を傷つけない、私と違う母性で彼を見てるから」
「そんな事分かるんですか」
「分かるわ、だって涼子は謙一さんが好きでしょ」
涼子は何も言えなくなっていた。
「私は涼子だから託したいの」
「託されても...謙一は私の事なんか意識してないですよ」
「大丈夫、彼は涼子を好きになるわ」
「まさか」
「私には分かるの」
『謙一は好きになる』そう断言する香織に涼子は何と返して良いか分からない。
「香織の気持ちには分かったわ」
「ありがとう涼子、後はお願いね」
涙を流しながら微笑む香織に涼子は頷くしかなかった。
『愛佳と中山さん、真夏ちゃんに相談しよう』
そう考える涼子だった。




