羨ましいよ。
「光希ちゃんそれじゃ」
「うん真夏ちゃん、またね今日はありがとう」
「こちらこそありがとう」
合格発表に一緒に行ってた光希ちゃんと別れ、私は家の鍵を回し扉を開ける。
「ただいま」
「おかえり真夏ちゃん、合格おめでとう!」
玄関で麻里ちゃんが満面の笑顔で迎えてくれる。
やはり麻里ちゃんは変わった。
以前なら『良かったわね、おめでとう』位で私に(ちゃん)付けは滅多にしなかった。
「どうしたの真夏ちゃん?」
「キャラ変わりすぎだよ」
「ふふ、私は素直になるの」
「余りの変化は兄ちゃんがビックリするよ」
「え、少し控えた方が良いかしら?」
そう言いながら狼狽する麻里ちゃん。
やっぱり変わったよ。
以前なら『そうかしら?』位だったから。
「そうだよ」
「分かった。改めて、真夏おめでとう」
「ありがとう麻里ちゃん!」
この感じだよ、これが麻里ちゃんだよ。
「早く上がって、夕飯作ったから」
「ありがとう、すぐ着替えて来る」
私は急いで着替え、リビングに行く。
今日は母さんが夜勤だから1人祝勝会かと思っていたから麻里ちゃんの訪問は嬉しい。
テーブルを見ると一杯のご馳走が並んでいた。
私の大好物の海老料理ばかりだ。
「凄いね」
「私も食べるから、でも少し張り切り過ぎたかな?」
「かなり張り切り過ぎだよ、特大海老フライに海老の塩焼き、海老サラダに海老一面に敷き詰めた山盛りパエリアまで」
「まあ残してもね?」
「うん明日また食べよ!」
今日は金曜日、麻里ちゃんはお泊まりする予定、明日も一緒だ。
私達は笑いながら取り分ける。
まずは海老フライから、特製のタルタルを着けて一口頬張る。
サクサクの衣にプリプリの海老がタルタルに絡む。
うん、やっぱり麻里ちゃんの料理は絶品だ。
私も料理には自信があるが麻里ちゃんには敵わない。
「美味しい!」
「良かった」
喜ぶ私に麻里ちゃんは優しく微笑んでいる。
本当、麻里ちゃんは凄い。
「ふう、もう入らないや」
「私も」
満腹のお腹を撫でながら2人で笑う。
和やかな時間に幸せを感じる。
ここに兄ちゃんと愛佳ちゃんが居たら完璧なんだけど。
「秀一が居たらな」
麻里ちゃんも同じ気持ちらしい、寂しそうに呟いた。
「後、愛佳ちゃんも」
「そうね、愛佳も一緒にしないと拗ねるわね。
真夏、今日の発表はどうだった?」
「どうって普通だよ、兄ちゃんは喜んでくれたし。光希ちゃんは謙一の胸板に頭をグリグリしてたかな」
「そりゃ秀一も喜ぶわよね。で愛佳は?」
「愛佳ちゃんは...色々あったけど吹っ切れたみたい」
「どういう事?」
麻里ちゃんは急に真顔になって私に迫る。
怖いよ、さっきのキャラはどこ行った?
「昨日『麻里ちゃんが変わったよ』って言ったら、ちょっと驚いて元気無くしてた。
けれど愛佳ちゃん今日山下さんとお話したらスッキリした笑顔で『これで3人揃ったわね、一緒に頑張りましょ』って」
昨日の夜麻里ちゃんと愛佳ちゃんどちらが兄ちゃんに相応しいかって聞かれた事は触れず今日の愛佳ちゃんの変化だけを麻里ちゃんに教える。
余り昨日の事は言いたくないんだ。
「そっか、愛佳も彼女に...」
そう言うと麻里ちゃんは考えこんでしまった。
山下さんは何を麻里ちゃんと愛佳ちゃんに言ったのだろう?
詳しくは分からないが兄ちゃんの為を思っての事だろうと想像出来る。
「2人共羨ましいな」
「羨ましい?」
「麻里ちゃんと愛佳ちゃん、兄ちゃんと距離をどんどん詰めて輝いていくんだもん」
「あら私からすれば真夏が羨ましいよ、秀一の妹だし」
「でも妹は兄ちゃんと一緒になれないよ」
「まあ、それはそうね」
麻里ちゃんは少し笑う。冗談に取ったのだろう。
「私が義妹だったらな-」
「そりゃ無理よ、産まれた時の写真もあるし」
分かってるよ麻里ちゃん、産まれた時当日に撮った写真は私も見たよ。
母さんに抱かれてる私に横で笑う麻里ちゃんと兄ちゃん、4人笑顔で写ってたもんね。
「それに真夏、あなた秀一にそっくりじゃない」
「う...」
確かに私は似ている。
兄ちゃんと2人並んだらみんな兄妹だって分かっちゃうもんね。
「麻里ちゃんは良いなあ」
「何が?」
「綺麗で可愛いくって」
「何言ってるの、真夏の方が凄く綺麗じゃない。
私の方が羨ましいよ」
「そんな事ないよ、愛佳ちゃんみたいに大きな目や麻里ちゃんみたいな小さなお鼻が羨ましいよ」
「...それって私の鼻が低いって事?」
いけない!私ったら麻里ちゃんのコンプレックスを。
「違うよ!つまり自分に無いものをって事だよ」
私は慌ててフォローするが麻里ちゃんは自分のお鼻を触りながら溜め息を繰り返す。
ああ、私ったら何て事を!
「冗談よ」
「え?」
「大丈夫よ、私も愛佳も真夏が大好きよ。
これからも真夏とずっと一緒よ」
麻里ちゃんは優しく私の手を握り微笑んだ。
その表情は私の寂しさを解かしてくれる。
麻里ちゃん、本当に変わったね。
この変化を与えた山下さんに何か恩返しは出来ないかと考える私だった。




