13話
「諸君、入学おめでとう!私はこの王立アセンカ学院の校長のガリア・レガシーだ。よろしく」
ここは王立アセンカ学院の第1闘技場。今は新入生が集まっている。所謂入学式だな。
「この学院では最新の設備、優秀な講師、その他にも色々なものが揃っている。私達は諸君が3年間しっかり学べるように全力を尽くすつもりだ。だから安心して学生生活に励んで欲しい。私達は諸君が立派に育つことを願っておる。最後に、入学おめでとう!以上だ」
みんなが拍手をする。そのまま入学式は終わり。俺達はそれぞれの教室に案内された。
「ここが1年A組か」
俺は自分の教室、1年A組の教室の前に来ていた。これから1年間過ごす教室だ。どんなやつがクラスメイトなのか、少し期待しながらドアを開ける。
中には俺以外の全員が座っていた。周りの人と話をしている人、眠そうな人、窓の外を見てる人と様々な人がいた。しかし俺が入るとみんなこちらを見ていた。
「おい、あいつって」
「ああ、確か入学試験の時の」
「試験官を倒した人?」
「マジ!?」
「同じクラスなんだ」
そんな声が聞こえてきた。中々注目されてるようだ。まあいいか。
俺は自分の席に座る。真ん中の列の一番前だった。
俺が座ると同時に先生が入って来た。
「全員いるな。私はこのクラスの担任のウィリー・ジェズアルドだ。よろしく。それでは自己紹介をしてもらおうか」
そうして、窓側の席の人から順番に自己紹介をしていく。そして俺の番になった。
「難波レイです。趣味特技は特にありません。よろしくお願いします」
それだけで自己紹介を終えた。
「君が難波君か。噂になってるよ。試験官を倒したって」
「あれは運がよかっただけですよ」
「そんな事で勝てるような相手じゃないんだが、まあいいだろう。じゃあ次」
そのまま自己紹介が終わり、先生が連絡事項を伝える。
「じゃあ今日はここまでだな。気をつけて帰れよ」
そう言ってホームルームを終了する。みんなも帰る準備をしていた。
「なあなあ」
俺も帰ろうとした時に、後ろの席の男子が話しかけてきた。明るい茶髪で体格がよく、明るい雰囲気の男子だった。
「ん?」
「俺、君とずっと話してみたいと思ってたんだ」
「何で?」
「入学試験の時、試験官の人倒しただろ。その時から話してみたかったんだよ」
「そうか」
「俺はトーレス・マーラル!トーレスでいいぜ!よろしくな!」
「俺は難波レイだ。レイでいい」
「おう!なあ、一緒に帰ろうぜ」
「ああ」
そのまま、俺はトーレスと帰った。
「マジか!すげーな!」
「そうか?」
「そうだって!」
俺はトーレスと帰っている。今は俺が試験官を倒した時の事を話していた。
「だって考えてみろよ。試験官だぜ!普通倒せねーって!」
「倒せないと思うから倒せないんだよ。それにあの試験は別に試験官を倒さなくてもよかった」
「え、そうなのか?」
「気づいてなかったのか?試験の内容は攻撃をする事で倒す事じゃない。どんな策を用いるか、駆け引きをするか、技を見せるか、そんなところを見てたんだ」
「そうだったのかよ。俺は試験官を倒さないといけねーと思ってた」
「いや、それはほぼ無理だ。3分で、しかも試験官は防御に徹する。この条件下で倒すのは至難の技だ」
「でもレイは倒しただろ?」
「まあな。でも偶然だ」
「そうか?」
「そうだ」
トーレスは納得していないようだ。まあ実際は偶然でも運でもない。あの試験官より俺の方が強かった。
「あ、俺こっちだ」
「俺は反対側だ」
「じゃあここまでだな。また明日な!」
「ああ」
分かれ道で俺達は別れた。
次の日。
学院では授業が始まった。午前は座学、午後は実技の授業となっている。今は座学の授業なのだが、俺はもう殆ど新たに学ぶ事はない。今までのVRの世界で勉強に関してはどの分野もやり尽くしたからだ。完全記憶能力もあるので1回覚えると忘れない事もあり、もう座学を受ける意味は殆どない。そんなわけで午前中はずっとイメージトレーニングをして過ごしていた。
昼休み。俺とトーレスは屋上に来ている。
「俺は座学は苦手なんだよなー」
「そうなのか?ここに入学出来たんだから、座学もある程度は大丈夫なはずだろ?」
「いやー、偶然勉強したところが出たんだよなー」
「マジか」
そんなんで受かったのかよ……
「まあ実技はいけると思うぜ!」
「そうか」
「なあ、実技の時間に対戦する事ってあるかな?」
「あるんじゃないか?」
「ならさ、その時は俺と対戦してくれよ!」
「いいぜ」
「やったぜ!入学試験の時から対戦したかったんだよな!」
「そっか」
俺と戦いたい……か。面白いな。今まで1人で修行をする日々だったが、これからは違うのか。
少しの日常の変化に、俺は悪い気はしなかった。
「では、今から実技の授業を始めます」
遂に実技の授業の時間となった。どんな事をするのか、楽しみだな。
「先ずは私と戦ってもらう。もちろん手加減はするので、安心してください。それではやってみましょう。誰からでもいいですよ」
そう言うが、誰も手を挙げない。やはり最初は嫌みたいだな。ここは俺がやるか。
「先生、俺がやります」
「分かりました。では難波君、こちらへ来てください」
そう言われたので前に出る。
「あと、難波君には手加減はいりませんよね?」
「え?」
「試験官を倒した程の実力があるんですから、手加減はしなくてもいいですよね」
何て事を……まあいいか。あくまでも手加減しないだけで、先生は本気を出すとは言ってないしな。
「分かりました」
「マジかよ……」
「やばいよな」
「どうなるんだ?」
そんな声が聞こえてくる。
「レイ、頑張れよ!」
トーレスは応援してくれるみたいだ。
俺は先生と対峙する。
「では、始めようか」
「はい」
返事をして、俺は武器を出す。
「リベレイト」
ブンッ!
「来なさい」
武器を出した先生に言われたので、俺は走り出す。
「はっ!」
俺は水平斬りを放つ。しかし先生の武器の槍で防がれる。
そのまま鍔迫り合いをする。少しでも間合いを開ければ槍の方が有利になるからだ。
しかし、先生もそれを許してはくれない。
「はあっ!」
「くっ!」
俺を力づくで弾き飛ばすと、そのまま一定の距離で突きを放ってきた。俺は何とか距離を詰めようとするが、中々詰められない。このままじゃジリ貧だ。
そう思った俺は少し距離を取ろうとした。しかし、先生も追いかけてきて距離が開かない。
「ふっ!」
しかも走りながら突きを放ってくるので、俺は避けながら走らないといけない。
さて……どうしたもんか……
俺は避けながらどうするか考え、そして思った。別に勝つ必要はないんじゃないかと。入学試験の時は特待生制度がかかっていたが、今はそうじゃない。それなら……
俺は逃げるのをやめて、先生の攻撃を刀で受け流す事にした。先生の突きに合わせて、俺は刀の刃の上を滑らせる。それを何度も繰り返す。
「すげえ」
「先生の攻撃を受け流してる」
まだ周りの声が聞こえる。これは集中出来てない証拠だ。集中しろ。
そうして、俺はどんどん集中していく。ただ攻撃を受け流す事だけを考える。
そうして受け流していると、先生が攻撃をやめた。
「どうしたんですか?」
「いや、これ以上やると私の体力が尽きそうなんでね」
「そういう事ですか」
確かにな。この後もクラスの生徒と戦わないといけないのに、ここで体力を使い果たすのはよくない。
「じゃあここまでですね」
「ああ。それにしても君は強いね。試験官を倒したのも納得だ」
「いえ、先生が本気を出せば勝てませんよ」
「そうかな」
「そうですよ」
そう言っておく。
「分かった、そういう事にしておこう。じゃあ次の人は……」
そうして、俺は先生との戦闘を終えた。
ここに来てよかった。先生は強かった。恐らく、もっと強い人もこの学院にいるだろう。楽しみだ。
そんな事を考えながら、他のクラスメイトが先生と戦っているのを見ていた。




