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Reborn ― ロイが読み解く真実 ―  作者: ラビリンス
ロイが気づき始める編
5/11

5.親父の手帳

事件が終わり、スティーブ兄さんと帰路を共にしていると、彼がふっと笑って言った。


「ロイはすごいな。本当に見事な推理だったよ。まるでシャーロック・ホームズみたいだった」


「そんなことないよ」


ロイは首を振った。


「僕じゃなくても、誰かが気づけば事件は解決できたと思う。ただ……あのまま放っておいたら、誰も踏み込まずに終わってたかもしれない。それが嫌で、つい口出ししちゃったんだ」


少し間を置いて、付け加える。


「今思えば、出過ぎた真似だったよ。警部さんたちにも迷惑をかけてしまったし……」


その様子に、スティーブは感心したように笑った。


「それにしても、よく化粧品のことが分かったな」


「ルイーザが読んでた雑誌を、前に見たことがあったんだ。成分の記事が載ってて、それでピンと来た」


「……こっそり?」


「……うん。ちょっとだけ」


「怒られるぞ」


「今のところ、まだバレてないから大丈夫」


そう言って、ロイは笑ってみせた。

しばらく二人の間に沈黙が流れる。


やがて、ロイがぽつりと言った。


「本で読んだ言葉なんだけどね。ドイツの文豪ゲーテが

『憎しみは積極的な不満で、嫉妬は消極的な不満である。だから、嫉妬が憎しみに変わるのは不思議じゃない』

って言ってたんだ」


「難しいこと言うな」


「でも……エリーさんを見て、妙に納得したんだ」


「事件の話は、ここまでにしよう」


スティーブは話題を切り替えるように大きく伸びをした。


「あー、腹減った。俺もルイーザの手料理、ご馳走になろうかな」


「うん。ぜひ来てよ」



ロイの保護者はジェームズだが、一緒に暮らしてはいない。

食事の面倒などは見てもらっているものの、ロイは基本的に一人で生活している。


やがて二人は本屋の前に到着した。


「ルイーザ、鬼の形相だったりして」


「まさか」


平然と返したロイだったが、胸の奥に嫌な予感がよぎる。


ドアを開けた。


「ただい……ま」


ルイーザの顔は、見事に怒っていた。

嫌な予感は的中した。


「ロイ、雑誌見たでしょ?」


「う、うん……」


「見たこと自体は怒ってないわ。でも、見た後はちゃんと元の場所に戻して。それから、今日は二階の掃除を手伝ってって言ったのに、今までどこに行ってたの?」


「ファミレスに……スティーブ兄さんと」


「私もいたのに、誘わずに?」


「あ、ごめん。君がいるって知らなかったんだ」


スティーブが慌てて言う。


ルイーザは一度、小さくため息をついた。


「……もういいよ。スティーブさんも夕飯、食べる?」


「ああ。そのつもりで来た」


「そう。じゃあ、早く席に座って」



ルイーザ・フェアチャイルド。

スティーブさんの1人娘。

ロイの同級生で、幼なじみだ。


クールな性格だが、怒ると怖い。時々口が悪くなることもあるが、根は優しく、整った綺麗な顔立ちをしている。

いつも蝶の髪飾りをつけているのが特徴だ。


母親がいないため、ジェームズの代わりに家事全般をこなしている。


席につくと、ジェームズが口を開いた。


「ロイ。今日、レストランで事件があったらしいな。常連さんが言ってたぞ。まさか……お前たちがいた場所か?」


「そうだよ」


「えっ?」

ルイーザが驚いた声を出す。


「ああ。ロイが事件を解いたんだぜ。

すごいだろ」


(……そういえば、昔もこんなことがあったような……)


ルイーザは、記憶の奥に引っかかるものを感じていた。



夕食後、ロイは自分の家へ戻った。


「あれ……?」


ドアが、わずかに開いている。

確かに、鍵は閉めたはずだった。


(まただ……)


以前、物音を勘違いして警察に通報し、

「散らかってるだけだろ」と取り合ってもらえなかったことを思い出す。


慎重に中へ入ると、二階から物音がした。


(泥棒……?)


周囲を見回すが、武器になりそうな物はない。

下手に騒げば逃げられる。


ロイは息を殺し、二階へ向かった。

音の正体は、父の部屋だった。


(何を探してる……?)


そっと覗いた、その瞬間。


気配に気づいた相手は、迷いなく窓から飛び降りた。


「……っ!」


次の瞬間、下で 鈍い着地音 がした。


(おいおい、ここ二階だぞ……)


窓の下を覗くと、人影がよろめきながら走り去るのが見えた。

フードを被っていて、顔は分からない。


「……最悪だ」


警察に連絡しようとスマホを取り出したとき、

散らかった床の中に、一冊の手帳が落ちているのに気づいた。


表紙には「C.H.H」。


中を開いた瞬間、独特の筆跡で父の物だと分かる。

数ページが、乱暴に破り取られていた。


そして、残された内容に息をのむ。


Reborn of the Eternal Dead

(不滅なる死からの再生)


「……何だよ、これ」


次のページ。


Angels(エンジェル)

Ogre (オーガ)

Noah (ノア)

Blood (ブロード)

Judas (ジューダス)


意味の分からない単語の羅列。

さらにページをめくる。


“There’s daggers in men’s smiles.”

(人の笑顔には短剣が隠れている)


「これは……ウィリアム・シェイクスピアの『マクベス』の一節だ」


そして、ページの端に――赤い染み。


「……血?」


ロイの喉が鳴る。


(―― ()の?)


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