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Reborn ― ロイが読み解く真実 ―  作者: ラビリンス
ロイが気づき始める編
3/11

3.甘い香りに潜むもの

思ったよりも早く、パトカーのサイレンが店の前で止まった。


「検死の結果――被害者ロザンヌさんは、毒物による中毒死です」


そう報告したのは、サム・ジャップ警部補だった。


「毒は?」


腕を組んだトニー・トレス警部が短く聞く。


「三人が食べていたフィッシュ&チップスから検出されました。

ただし、調理過程で混入した形跡はありません」


「……後から、誰かが付着させた可能性が高い、か」


警部の視線がテーブルへ落ちる。


「料理は一皿だけ?」


「はい。一つを三人でシェアしていました」


「三人で同じ物を食べたのに、一人だけが死亡……妙だな」


「あの……自殺の可能性はありませんか?」


エリーが口を開いた。


「自殺?」


「ロザンヌ、結婚してうまくやれるか不安だって言ってました。

いわゆるマリッジブルーです」


「え? そんなこと、一度も――」


「あの……自殺ではないと思います」


ロイが静かに言った。


「おい、誰だこんな子供を現場に入れたのは」


トレス警部が苛立った声を上げる。


カチン、とロイの中で何かが切れた。


(確かに背は低いかもしれないけど、“こんな”なんて言われる筋合いはない)


「警部、この少年と隣の男性は、事件発生時に店内にいました」


サム警部補がフォローする。


「何? では被害者が倒れる瞬間を?」


「はい」


ロイは少しムッとした表情で言った。


「……で、坊主。さっきの発言はどういう意味だ」


ロイは警部を見上げる。


「もし自殺なら、三人で同じ料理を食べて、

ロザンヌさんだけが死ぬのはおかしいです」


「……」


「これは、最初からロザンヌさん一人を狙った事件です」


その一言で、店内の空気が変わった。


「殺人だとしたら、可能なのはジョンさんかエリーさんだけだな」


スティーブが言う。


「ふざけるな!」


ジョンが声を荒げる。


「俺たちは高校時代からの仲だ。恨まれる覚えもない!

それにロザンヌとは婚約していて、近々結婚する予定だったんだ。

殺す動機なんてない!」


「そうかしら?」


エリーが冷静に言い返す。


「ロザンヌは、結婚生活に不安を抱いていたわ。

あなたが些細なことで怒るから、口喧嘩になることもあったって」


「それで、怒りに任せて殺したって言うのか?」


「確かに喧嘩はあった。でも、愛する人を殺すわけがない!

それに、動機があるのはお前も同じだろ。」


ジョンはエリーを睨みつける。


「俺がお前を振ったこと、根に持ってるんじゃないのか?

それでロザンヌを……」


「別に根に持ってないわよ」


エリーは肩をすくめた。


「あなたと別れて、せいせいしたくらい。

ロザンヌは周りを気遣って、明るく振る舞ってただけよ。

心の中では、ずっとストレスと戦ってた」


二人の口論は激しさを増していく。


(……修羅場だ)


ロイとスティーブは、思わず引いた。


やがて、二人の荷物と身体検査が行われたが、怪しい物は出てこない。


「……毒はどこから入った?」


トレス警部が苛立ちを隠さない。


「警部さん」


ロイが口を開く。


「被害者の持ち物、もう一度見せてもらえますか?」


「また口出しか。

……だが、何もなかったぞ」


三人の荷物が並べられる。


ジョン、エリー、ロザンヌ。


ロイの視線は、ある一点である一点で止まった。


(……ハンカチ)


――食事の前、エリーが借りた。

――その後、料理が運ばれた。

――ロザンヌは食事中、何度も口元や指先を拭いていた。


(食べ物じゃない。

ロザンヌさんだけが、無意識に何度も触る物……)


さらに思い出す。


――ロザンヌがトイレに行っている間、

エリーは「スマホを落とした」と言った。


(でも……あのスマホ、カバーがついていて簡単に滑るようには見えなかった)


(ジョンさんは机の下を覗いた。

その間、机の上はエリーさんしか見ていない)


ロイは、静かに息を吐いた。


(……なるほどね)


(警察は料理にばかり目を向けてた。

でも本当の“毒の通り道”は、別にあったんだ)


ロイは一歩前に出る。


「警部さん」


トレス警部が不機嫌そうに見る。


「……何だ」


ロイは、はっきりと言った。


「犯人、分かりました」


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