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Reborn ― ロイが読み解く真実 ―  作者: ラビリンス
ロイが気づき始める編
2/11

2. 見せかけの平穏

ファッジを一口かじり、紅茶を飲む。

ジェームズさんの手伝いをひと段落終えたロイは、本屋の二階にあるジェームズさんの部屋で休憩していた。


「甘いファッジは格別だね。紅茶とよく合うよ」


「ロイ、お疲れ様。休憩中か?」


「……スティーブ兄さん」


声の主は、ロイの家の近所に住む六歳年上の青年、スティーブだった。

小さい頃からの付き合いで、ロイにとっては兄のような存在だ。端正な顔立ちをしており、女性からはよく好意を寄せられる一方、男性からは嫉妬されることも多い。


スティーブはロイの向かいに腰を下ろした。


「ねえ兄さん。もしかして、僕を食事に誘いに来たんじゃない?」


「……どうして分かった?」


「まず、シャツがヨレヨレ。慌てて家を出てきた証拠だね。今日は休みのはずだから、本当は家で過ごす予定だった。でも、どうしても外に出なきゃいけない用事ができた」


ロイはスティーブの胸元に視線を向けた。


「胸ポケットにファミレスの半額チケットが二枚。期限は今日まで。使わないともったいないから、僕を誘いに来た。違う?」


「……すごいな。当たりだよ。期限をすっかり忘れててさ」


スティーブは驚いたように目を見開いた。


「大したことじゃないよ。誰にでも分かることを、推理っぽく言っただけ」


ロイはそう言って謙遜したが、相手の行動を一目で見抜く観察力はやはり非凡だった。


「それにしても、スマホがあるんだから連絡してくれればよかったのに」


「いや、直接誘いたかったんだ」


(兄さんは昔から優しいな……)


急いで身支度を整え、ジェームズさんに断りを入れて、二人は近くのレストランへ向かった。



店に入ると、すぐ左手のテーブルに案内される。


「僕はローストビーフにする」


「じゃあ俺も同じで」


メニューを決めていると、新しい客が入ってきた。

若い男女三人組――女性が二人、男性が一人。ロイたちの斜め前の席に座る。


「エリー、こっちに座りましょう」


「ええ、いいわよ、ロザンヌ」


奥側からロザンヌ、エリーの順に座り、男性――ジョンがロザンヌの正面に腰を下ろした。


「ジョン、何にする?」


「フィッシュ&チップスがいいな。みんなでシェアしよう」


「私はそれでいいわ。ロザンヌは?」


「うん、私も」


「先にお手洗い行ってくるわね。ロザンヌ、悪いんだけどハンカチ貸してくれる? 家に忘れちゃって」


「いいよ」


ロザンヌからハンカチを受け取り、エリーは席を立った。


しばらくして戻ってくる。


「ありがとう、ロザンヌ」


「どういたしまして」


やがて、一人分のフィッシュ&チップスと紅茶が運ばれてきた。


「いつも通り、塩でいいよな」


ジョンが塩を振る。


「先に食べてて。私もお手洗いに行ってくるから」


今度はロザンヌが席を立った。


その直後、エリーのスマホが手元から滑り落ち、床に転がる。


「ジョン、取ってくれる?」


「ああ」


ジョンが拾い上げ、エリーに渡したところで、ロザンヌが戻ってきた。


三人はフィッシュ&チップスを囲む。


「今日はロザンヌとジョンの結婚祝いよ。私の奢りだから、遠慮しないで」


「ありがとう」


二人は照れくさそうに微笑んだ。



ロイたちも食事を終え、談笑していた。


「ローストビーフ、美味しかったな。また来よう」


「うん。次も兄さんの奢りでね」


「任せなさい」


スティーブはどこか幼い表情で笑った。


(面倒見がいいのは兄さんの長所だ)


「最近、シャーロック・ホームズを読んでるんだ。観察力と論理で事件を解決するのがすごく面白くて」


「へえ……読んだことないな」


「兄さん、昔は本好きだったのに」


「今は忙しくてな」


(医学生だから勉強で大変なんだろうな……)


その時だった。


向かいの席で、ロザンヌが突然胸を押さえ、苦しみ始めた。


「ロザンヌ!?」


「大丈夫?」


ロザンヌは答えられず、そのままテーブルに倒れ込む。


「スティーブ兄さん、様子がおかしい」


「ジョン! 警察と救急車を呼んで!」


エリーが叫ぶ。


「ああ、分かった!」


ロイとスティーブはロザンヌに駆け寄る。


「どう、兄さん……?」


(兄さんは医学生だ。もしかしたら――)


スティーブはロザンヌの脈を確認し、静かに首を横に振った。


(……そんな。間に合わなかった)


――午後十三時。

ロザンヌの死亡が確認された。


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