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捨てら令嬢。はずれギフト『キノコ』を理由に家族から追放されましたが、菌の力とおばあちゃん力で快適生活始めます  作者: 渡里あずま


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3/21

才覚

 この世界に『生まれ変わる』前、ゲルダはここから見ると異世界である地球、そして日本の片田舎の農家で、夫を手伝いつつも専業主婦として過ごしていた。盆暮れに遊びに来る孫達から、漫画やアニメで異世界転生と言うのがあるとは聞いていたが、まさか単なる老婆である自分がそうなるとは思っていなかった。トラックに轢かれることなどなかったのに、である。

 ……孫達から、教えて貰ったことがある白い部屋。

 そこで生まれ変わる前のゲルダは(前世の名前は思い出せない)女神と対峙した。


「……剣と魔法の世界の他に、もう一つ。この世界には、あなたの世界にあった『菌』がありません」

「えっ?」


 それでは土が朽ちて、作物が次第に育たなくなってしまう。そう思い、信じられないと言うか信じたくなくて声を上げると、女神はその理由を説明してくれた。

 かつての転生者が新種の『味噌の実』と『醤油の汁』を作り、楽して得をしようとしたせいで代償としてこの世界からは『菌』が消えたのだと。

 それ故、およそ百五十年経った今では土が枯れ、作物の収穫量が減っていき、食べ物や酒の種類が減ったのだと。

 その結果、貴族は民からの搾取により何とか生き永らえているが、平民は簡単に死んでしまう今の世界が出来たのだと。


「『菌』が無くなったことは知られていませんが、滅んでいく世界にかつての転生者は怯えて逃げ出しました。そしてこの世界の人々は、最初こそ新しい調味料に喜びましたが、すぐに『滅びの魔女』と忌み嫌いました……ただ、かつての転生者とあなたは違います。前回の子の死は私のミスでしたが、あなたは子供や孫に囲まれての大往生。そして、前回の子は『菌』の力を解っていませんでしたが、農家で色々手作りしていたあなたはよく知っています……さあ、あなたは何の加護を望みます?」

「……一度、無くした『菌』を復活させたら、また何かを無くさなくちゃいけないんですか?」

「いえ。一度あったものなので、今回は代償はいりません」

「それなら……あ、でも加護は一つですよね? 異世界で私、身を守れるでしょうか……」

「……フフ、賢いですね。あなたが加護を知る十五歳の日に『菌』つながりの、最恐の守護者を与えましょう。それなら、ことわりを破りませんからね」


 ゲルダは、女神からの申し出をありがたく受け取ることにした。せっかく生まれ変わるのに、すぐに死にたくはない。そんなことを考えていたので、女神の『最恐』が『最強』ではないことには気づかなかった。


「ありがとう、女神様」

「いいえ。どうか『三度目の正直』にして下さいね……あ、加護の名前は『キノコ』ですが、それは『菌』の総称ですから」


 こうして享年九十四歳の老婆は、異世界に生まれ変わったのだが。


「食べられるキノコを出せ。近くには川があるし、小屋には鍋や道具もある……今なら、ゲルダにも『解る』だろう?」


 不意に聞き覚えの無い声が聞こえたのに、ゲルダの意識がふ、と浮上した。

女神との話に出てきた『前回の転生者』については、短編『女神の顔も三度まで?いやいや、その前に腹立ちましたから我慢しません!』をどうぞ(作品一覧か、当作品目次のタイトル上、シリーズ名から移動出来ます)



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