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追放

新連載です。今日から六話まで、毎日更新します。

 ゲルダは、不幸だった。

 伯爵令嬢として生まれたが、まず領地経営で体調を崩した母が亡くなった。

 ……何故、執務をこなしていたのが父ではなく母なのか。

 それは元々、サブル伯爵家は母の生家であり父は婿養子だったからだ。しかし、子爵家次男だった父は母の執務は勿論、生活面なども全く支えず伯爵家の金で遊び歩いてばかりいた。


「おかあさまはどうして、おとうさまとけっこんしたの?」

「……あなたに、会う為よ」


 寝たきりになりながらも、書類仕事をやめられず。

 そんな母を見かねてゲルダが聞くと、母は痩せた頬にそれでも笑みを浮かべて言った。今思うと上手い風に言っていたが、つまりは「跡継ぎは欲しかったが、子供は一人では産めない」ということだろう。母のように、女性も家を継げるからこその発想だ。

 だが母が死に、七歳になったばかりのゲルダを守る筈の父は母が死んでまもなく、平民の愛人とその娘(連れ子ではなく異母妹だった)を引き取った。

 婿養子でしかない父は、けれど、娘であるゲルダの後見人として伯爵家の実権を握り――金が無くなっては困るからか領地経営は家令に任せ、愛人母子と遊び惚けていた。更に実権を握った途端、ゲルダを使用人としてこき使って嘲った。愛人母子もだが、父も亡き母に鬱屈した想いを抱いていたようで、母親似のゲルダを虐げることで鬱憤を晴らしていたようだ。

 ……しかしそれがまだマシだったと知ったのは、ゲルダが『天祐の儀』を受けた時のことだった。

 この世界では成人である十五の年の十月に、教会で神から与えられた加護ギフトを教えて貰うのだけれど。


「あなたのギフトは『キノコ』です」

「…………え?」


『聞いたことのない』ギフトに、ゲルダは思わず声を上げた。

 けれど、その疑問にギフトを伝えた神官からの答えは貰えず――更に、家族はゲルダのギフトをはずれギフトとみなし、家の役に立たないとなると目障りだと言われてしまった。


「お前みたいな役立たずは、森番になって引きこもってろ!」

「『美』のギフトを貰ったクリスティアとは、大違いね」

「可哀想だけど、仕方ないわよね。『キノコ』なんて、聞いたことないもの」


 正当な跡継ぎはゲルダなのだが、全く社交を行ってこなかった(と言うか、家から出して貰えなかった)彼女の存在を知る者はほとんどいない。更に、母の死後に使用人達は一新されたので、主人である父達が虐げているゲルダのことを、同様に馬鹿にすることはあっても庇う者などいない。

 だから父と義母と異母妹にそう言われたゲルダは、帰ってくるなと僅かな荷物と共に追い出され――使用人に馬車で寂れた森まで連れて来られ置いていかれたゲルダは、見る間に遠ざかる馬車をただ見送ることしか出来なかった。

タイトル変更しました。

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