第19話 新たな同行者
前回のあらすじ
フィアの妹を治療した
妹の病気を治してくれたお礼がしたいからと、フィアにやや強引に廃教会に備え付けられている食堂へと連れて行かれた。
「お茶を用意するから適当に座ってて」
フィアはそう言って、キッチンの方へと姿を消した。
彼女の言葉に甘え、すぐ近くにあった椅子に座る。
ギシギシと嫌な音が響くけど、たぶん壊れないハズ……壊れないよな?
ノインも僕の隣にあった椅子の背もたれを引いて腰を下ろした―瞬間、バキンッ! と派手な音を立てて椅子が壊れた。
「きゃっ! ……いったぁ〜……」
ノインは目尻に涙を滲ませながら、お尻を擦っている。
「ノイン……」
「はっ……!? ゼ、ゼクス! 違うからね!? わたしが重くて椅子が壊れたんじゃなくて、椅子が古くて壊れただけだから! わたしが重たいわけじゃないからね、絶対に!!」
「お、おう……」
ノインの鬼気迫る剣幕に気圧され、僕はそう答えることしか出来なかった。
ノインは別に重たくはなく、むしろ軽い部類だと思う。
……何でノインの体重を知っているかだって?
それは、寝落ちしたノインをベッドの上まで運んだことが何回かあったからです。いったい誰に説明しているんだ、僕は……。
ノインが今度は比較的丈夫な椅子を選んで僕の隣に腰掛けたのと同時に、フィアがトレイを持ってキッチンから戻ってきた。
トレイの上には、人数分のティーカップが載っていた。
……お茶を淹れたにしては戻ってくるのが早いような?
そんな僕の疑問は、すぐに氷解した。
「粗茶ですが……」
フィアはそう言って、僕達の前にティーカップを差し出す。そして僕達の対面に腰掛ける。
だけどその中身は無色透明なお茶―ぶっちゃけ、ただの水だった。
「………………え〜っと、コレは??」
絶句しているノインに代わり、僕がフィアに尋ねる。
すると彼女は澄まし顔でしれっと答える。
「粗茶です」
「……何だって??」
「粗茶です」
「いや……どこからどう見てもただの水……」
「粗茶です」
「あ、はい」
頑なに水だと認めないその態度はいっそ清々しかった。
僕はこれ以上の追及は止めて、カップに口をつける。
味はやっぱりただの水だった。
「それで……アンタ達はこれからどうするの?」
「そうだなぁ……冒険者ギルドでこの港町を賑わせてる義賊を捕らえるっていうクエストを受けてたけど、見つけられなかったって報告する。それでその後は、中央大陸に渡る」
「アタシのことを見逃してくれるのは助かるけど……今は中央大陸に向かわない方がいいわよ?」
「? なんで?」
気を取り直したノインが、フィアに聞き返す。
僕もノインと同じ疑問を抱いていた。
フィアは水を一口飲んで、唇を湿らしてから答える。
「今中央大陸じゃ、内戦が起こっているからよ。内戦に巻き込まれたいっていうなら、別に止めはしないけど……」
「いや、僕だって巻き込まれるのはゴメンだ。だけど……やけに詳しいね?」
「港町の関係上、海の向こう側の情報がいっぱい入ってくるのよ。その中でも中央大陸での出来事はちょっとした話題になってたから、たまたま覚えてただけ」
フィアは背もたれにもたれ掛かり、そう答える。
「それにしても……なんで中央大陸に渡ろうと思ったの?」
「僕達がSS級魔女だっていうのは話しただろう? だから当然、ワルプルギス機関には指名手配されてるんだけど……僕達は北大陸にあるとされている、とある場所を目指していてね」
「それってもしかして、魔女の集落?」
「……フィアも知っていたのか」
「噂だけは聞いたことがあるくらいね。だけどそっか……なら、東大陸を迂回してそこを目指せば? 東大陸は今のところ目立った騒動は起こってないみたいだし。中央大陸を突っ切るよりかは幾分かマシよ?」
コレは有益な情報だった。
もしこの情報を知らずに中央大陸に渡っていたら、内戦に巻き込まれていたかもしれない。
「ところでモノは相談なんだけど……アタシとマリンもアンタ達に同行させてくれないかしら?」
「え? なんで?」
フィアからの突然の申し出に、僕は思わず聞き返す。
すると彼女は神妙な面持ちで理由を述べる。
「アタシ達もそろそろこの港町とオサラバしようと思っていたところだったの。アタシ達は元々東大陸の出身で、まあ……色々あってこの町まで流れてきたのよ。最初はこの町に長居するつもりは毛頭もなかったけど、マリンが風邪を拗らせちゃってね……移動するにも出来なかったのよ。どこか安全な場所に腰を据えたいとは常々思っていたのよ。それにアタシなら、東大陸のだいたいの場所までは案内出来るわよ? どう? 悪い話じゃないとは思うんだけど……」
「う〜ん……僕はフィア達がついてきても別に構わないけど、ノインはどう?」
「わたしも別に構わないわよ? それに仲間が増えるのは喜ばしいことだしね」
「仲間……そう、仲間ね……」
ノインが言った「仲間」という単語が胸に響いたのか、フィアはどこかうっとりとした眼差しでその単語を反芻している。
その様子を微笑ましく思いながら、僕はフィアに言う。
「それじゃあこれからは同じ旅の仲間としてよろしく、フィア」
「ええ。こちらこそよろしく、ゼクス、ノイン」
こうして、フィアとフィアの妹のマリンが僕達の逃避行……いや、旅についてくることとなった―――。
次回から新展開になる……かも?
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