第18話 三人目
前回のあらすじ
義賊はSS級魔女だった
フォウ……いや、フィアは僕に自らの正体を見破られて目を見開いている。
まさか今日出会ったばかりの僕に、魔女だということを見破られるとは夢にも思っていなかったのだろう。
「なんでアタシがSS級魔女だって知って………………って、ちょっと待って!? 今、元異端審問官って言わなかった!?」
「うん、言ったけど」
「それじゃあ……アタシを捕まえてワルプルギス機関に突き出すつもり?」
警戒心を露骨なほど露にしながらそう尋ねてくるけど、僕は彼女の言葉を否定するように首を横に振る。
「しないよ、そんなこと。僕達も機関に追われる身だからね」
「は……? それって、どういう……」
フィアはそう聞き返してくるけど、その声を半ば無視するような形で僕は続ける。
「改めて名乗らせてもらおうか。僕の名前はゼクス・クレスタ。隣にいる娘はノイン・フェアリア。僕も、そしてノインも君と同じSS級魔女だ」
「えっ? は……ええっ!?」
フィアはとても混乱しているようで、目をぐるぐるとさせていた―――。
◇◇◇◇◇
しばらくして落ち着きを取り戻したフィアに、これまでの経緯を説明する。
「……なるほど。アンタ達の事情は理解したわ。それにしても……ゼクスが、ねぇ……」
フィアはそう言うと、僕の顔をジロジロと眺めてくる。
そんなに見られると、なんだか居心地が悪い。
「な……何?」
「いや? 噂の『死神』だとは到底思えなくてねぇ〜。……あ、今は元か。機関を抜け出したんだから」
「そうだけどさ……って、僕の異名ってこの町まで届いてたの?」
「ええ、そりゃあもう。魔女の天敵として、その界隈じゃちょっとした有名人よ?」
「…………聞きたくはないけど、一応聞いておく。僕はどんな評価をされてたの?」
「ワルプルギス機関に尻尾を振る裏切りの魔女、魔女の恥晒し、魔女を殺す魔女とか、色々よ」
結構酷い評価だった。
だけど今では、そんな評価を気にすることもないけど……。
「それじゃあ今度は、わたしから質問してもいいかな?」
するとノインが、そう口を開く。
「何?」
「マリンちゃんは何かの病気なの? さっきお薬飲んでたから気になっちゃって……」
「ああ、そのこと……」
フィアはそう言うと、どこか悲しげに目を伏せる。
「マリンは生まれつき身体が弱いのよ。だから昔から病気しまくり。最近も風邪を引いたんだけど、それを拗らせちゃったのよ」
「そうなんだ……」
フィアの告白を聞き、ノインも悲しげに目を伏せる。
しんみりとした空気が漂いかけるけど、僕はその空気を打ち破る。
「それくらいなら、僕が使える魔術でどうにかなるよ」
「それ、本当!?」
フィアが期待と不安の入り混じった眼差しを向けてくる。
それに対して、僕は首を縦に振ることで答える。
「うん。だからちょっと離れてて」
僕がそう言うと、フィアはマリンが横たわるベッドの傍を離れる。
そして彼女と入れ替わるようにベッドの傍に近寄り、魔剣を鞘から引き抜く。
「ちょっ……!?」
「まあまあ、大丈夫だから見てて」
フィアが僕の行動を止めようとする前に、ノインが彼女を宥めすかしたようだ。
後ろの二人のやり取りを聞きつつ、僕は魔剣をマリンの上に翳す。
そしてとある魔術を発動させる。
「癒せ、【完全回復】」
そう唱えると、魔剣から柔らかい光が放たれ、それがマリンの身体に降り注ぐ。
彼女の身体を包み込んだ光が徐々に薄くなり、光が一つ残らず消え去った後に残ったのは、魔術発動前より顔色が良くなったマリンの姿だけだった。
「終わったよ」
魔剣を鞘に納めながら後ろを振り向いてそう言うと、フィアはマリンの様子を確かめるように彼女の傍に近寄る。
そしてペタペタと彼女の身体を隅々まで触ると、フィアは僕と目を合わせる。
その目には、僅かばかり涙が浮かんでいるように見える。
「……マリンを治してくれて、本当にありがとう……!」
フィアはそう言うと、深々と頭を下げてきた―――。
魔術って便利。
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