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狭軌最強鉄道伝説~新幹線がない世界~  作者: ムラ松
第5章 消える伝説の車両たち
17/20

東北本線の最後の485系と未来の超特急

今回は東北本線の高速度試験のお話です!!

「まもなく13番線に当駅止まりの列車がまいります。危ないですから黄色い線の内側に下がってお待ちください。この列車にはご乗車できないのでご注意ください。」

2015年、3月頃のある日のいつも通りの夕方。定刻通りに上野駅の13番線に当駅止まりの特急はつかり12号が入線する。

「ご乗車お疲れ様でした。終点~上野~上野で~す!!落とし物お忘れ物ないようにご注意ください。本日も特急はつかりをご利用いただきましてありがとうございました。東京、品川方面ご利用のお客様は今度、7番線から発車の熱海行きをご利用ください。池袋、新宿方面ご利用のお客様は2番線から発車の山手線、池袋、新宿方面をご利用ください。この列車は折り返し車庫に入る回送列車です。ご乗車にはなれません~!!」

駅員の放送がホームに鳴り響く中、北海道や東北からやってきた乗客たちは改札や階段がある先頭側に向かって歩いていく。

そして俺は列車を東大宮の車庫に引き上げるので折り返しのために反対側の運転台に向かう。

「ブレーキ圧よし!!ATS…よし!!」

マスコンキーとブレーキハンドルを差し、発車準備をする。

俺は沢村新一。東北本線の特急運転士を務めている。

ブー!!

車掌から発車の合図のブザーが鳴る。俺は指差喚呼をし

「13番線、出発進行~!!」

ファ~ン!!

大きな汽笛を鳴らしながら上野駅13番線を発車する。


俺が運転する車両は485系。1968年にデビューした車両だ。俺が運転する485系300番台は東北本線に1975年に投入された車両で、走り始めてもう40年ちょっと経つ。そんな485系も民営化後が続々新型車両に置き換わり、その活躍の場を縮めている。東北本線にも1997年からE653系が導入され、特急ひばり、ひたち、やまばと、あいづの485系を置き換えた。この485系は仙台車両センターの車両だったので、幸いにも特急はつかりを担当している青森車両センターと東大宮車両センターの485系は置き換えられなかったが、もうそれから十数年、この485系も置き換えが近い。俺はその最後の瞬間に立ち会うことになるのかもしれない。


回送列車は東大宮車両センターに到着し、俺はブレーキとマスコンキーを外し、列車を降り、車輪に手歯止めをつけて、今日の運用は終わりだ。

運転所に戻ると

「新一、おかえり~!!」

「おう、新一~!!」

2人の男女が俺に手を振る。

「優美と真、どうしたんだよ?」

こいつらは俺の同僚かつ幼馴染の村田優美と新藤真。

「いや、久々に飲みに行かないか?とでも思ってな。」

「新一も行こうよ!!」

真が言うと優美はにっこり笑う。

「そうだな。久々に行くか。」

俺はうなずいた。


ということで、近所の飲み屋へ。

「生ビール3つお待たせ致しました~。」

俺らのテーブルにビールが運ばれる。

「じゃあ、今日もお疲れ様でした~!!」

「お疲れ~。」

「お疲れです~。」

優美が乾杯の音頭をとる。

俺らは飲みながら、いろいろな世間話をしていた。

「そういえば、東北本線に投入予定の新車、もうそろそろ逗子の総合車両から出場するみたいだな。」

真が言う。

「E657系だっけ?」

優美が焼き鳥の串を咥えながら言う。

「そうそう。」

「ついにあいつが導入されるのか。」

俺はそう呟いてビールを一口飲む。

E657系は2012年に常磐線の特急ひたちとスーパーひたちに導入された特急型車両で常磐線のE653系を置き換えた車両で、次は東北本線の485系の置き換えのために導入される。ちなみに置き換えられたE653系は羽越本線に転用され、東京から秋田、青森を羽越本線経由で走る特急いなほと新潟から秋田、青森を結ぶ特急かもしかの485系を置き換えた。

「そうみたいだな。」

「もう485も置き換えか~。」

真が言うと俺が呟く。

「583系に続いて485も引退か~。」

優美が言う。583系は一昨年に651系に置き換えられ、団臨用を残して引退した。

「でも、まだ先行量産車みたいで、試運転に半年ほどかかるみたいだぞ。」

「けっこうかかるな…。」

俺が言う。

「まぁ仕方ないだろ、札幌入るためのとんでもシステム入れるんだからさ。」

「何?とんでもシステムって?」

優美が聞く。

「てか、札幌に東京からの電車入るって無理じゃないか?」

「確かにね。」

俺が言うと優美がうなずく。

「ふっふ~お前ら甘いな~。E657系はそこに入線できるように、EDCという方式を使って道内を走るんだよ~。」

 真がドヤ顔をして言う。

「EDC?」

「なんだそりゃ?」

優美と俺は首をかしげる。

「要するに、電化区間も非電化区間も走れるシステムを積んで走るんだよ。」

「なんなすげぇな…。」

俺は薄い反応ながらもびっくりしつつ、またビールを一口飲む。

「速度とかも上がったりするの?」

優美が聞く。

「そりゃそうだろ。超特急はやてとスーパーはつかりで300㎞/h近くで運転するらしいぞ。」

真はそう言ってうなずく。俺はそう聞いて

「なんか、おもしろいじゃねーかよ!!」

と言ってニヤニヤしていた。

「ふふふ。新一らしいね。」

「本当に新一は速いもの好きだな。」

そう言って2人は笑った。


俺は小さい頃から速い乗り物が大好きで、子供の頃の将来の夢はF1レーサーになって世界最速のスピードを出すことだった。その当時は電車の本もよく読んでいたが、その倍近く、F1の本を読んでいた。しかし、突然、俺の夢は打ち砕かれた。それは俺の大好きなF1レーサーがレース中に事故死をしてましたのだ。事故の原因はスピードの出し過ぎでカーブに曲がれなかったこと。俺はそれが怖くなってF1レーサーの夢を諦めた。それで別にF1は嫌いなったわけではなく、今でもF1の事は気にしている。

事故は怖いものの、それでも速い乗り物を運転したいという夢は諦めきれなかった。そんな時に俺が目にしたものが、250㎞/hで駆け抜ける485系だった。鉄道ならレールもあって多少変な事をしても脱線もしないし、最悪何かあっても制御装置が働く。俺はそんな理由でJR東日本に就職し、今に至る。そうは言っても面接でこんなこと言ったら確実に内定もらえないから別で理由作ってJR東日本入ったけどな…。


次の日の午後、今日は遅番で運用に就いている。それにしても昨日の話が頭から離れない。

「300㎞/hで走る列車ねぇ~。」

俺はそう呟きながら不気味なニヤニヤが止まらない。

そう考えると485系の250~270㎞/hのなんて屁みたいなものに感じてしまう。

「でも車両としては貴重なものだから変なこと言えないよな…。」

俺は苦笑いする。

「まぁそれでも今後がおもしろくなりそうだな!!」

俺はそう呟いて再力行をかけた。


E657系の置き換え対象は青森と東大宮(超特急スーパーはつかり、特急はつかり、やまばと、一部のひばり)と秋田(特急つばさ)に所属する485系と東京・上野から札幌を室蘭本線回りで走る超特急はやてに使用されるキハ183。JR東日本が導入する他、JR北海道もE657系の北海道バージョンのH657系が導入される。EDCと青函ATCを搭載した1000番台とEDC未搭載の2000番台が導入されるらしい。


次の日、俺が651系の寝台特急はくつるの運用を終えて帰ってくると、微妙に丸み帯びた先端に白を基調とした車体にJR東日本のコーポレーションカラーのグリーンの帯の車両がいた。こいつが東北本線に投入されるE657系1000番台だ。

運転所に戻ると

「新一、新車見た?」

優美が声をかけてくる。

「チラ見だけど、一応な。」

「あれが300㎞/h出すってすごいよね!!」

「確かにな。早く、運転したいよ。」

俺はそう言って背伸びをする。


さらに次の日、俺ら運転士は運転台を見て、どこにどの装置があるのかをしっかりと学び、試運転に備えた。それから、上野から宇都宮間の試運転やEDCの試験を一か月ほどやって…

「沢村、村田、新藤、お前らに高速度試験を任せる。」

と、上司に告げられた。

「本当にですか!?」

「やった~!!」

「俺らが担当か!!」

俺らはにっこり笑顔で喜んだ。

ついに300㎞/h以上の世界を体感できるのか!!それに夢が叶うかも!?俺は楽しみで仕方ない。


ということで次の日、E657系のところへ向かうと…

「今回の試験の主任の鉄道総研の三沢です。よろしくお願いします。」

俺らと同い年ぐらいの20代の男の人が頭を下げる。

「「「よろしくお願いします!!」」」

俺ら3人も頭を下げる。

「今回は大宮~仙台間で試験をしてもらいます。行きはEDCを使って高速度試験になりますで、新藤運転士にお願いし、帰りは架線集電での高速度試験になるので、沢村運転士と村田運転士にお願いしたいと思っております。」

と、三沢さんは説明する。真は気動車の運転免許を持っており、超特急はやての運転士をやっている。そして俺と優美は電車特急の運転士をやっているのでこのメンバーで高速度試験を任されたらしい。

「この試験では400㎞/hまでスピードを出してもらえればOKです。」

これを言われた瞬間…


『400㎞/hなんかじゃ物足りない。』


横にいたE657系がそう言った気がした。こいつからすれば、400㎞/hじゃ物足りないのか。でもなぜか、俺もその気持ちが理解できた。だから俺は

「高速度試験ってその車両の速度の限界を試すものじゃないんですか?」

とっさにそう言った。

「まぁ昔はそうでしたけど、今は線路の都合とか考えるとですと…」

「でも限界を試してこその高速度試験じゃないんですか!!」

俺はもう一度、大声で言う。

「新一やめなよ。」

優美が俺の肩を「ポン」と叩くが、そんなのも無視して

「こんな制限つけるなんて意味ないです!!」

「安全性を考えてそうしたんです!!とにかく、言う通りにしてくださいよ!!」

「こんな、制限設ける意味ないですよね?」

俺と三沢さんはにらみ合う。

「と、とにかく試験始めましょう。」

他の技術者が言う。

「そ、そうですね。とにかく制限守ってくださいね。」

三沢さんはそう言うが

「誰が守るか。」

俺は捨て台詞を吐いて、運転室に入る。


ということで、試験列車は大宮で一度まで出て、方向転換し、仙台へ向かう。最初はEDCで試験を行う。

「真は言われた通りにするのか?」

俺は運転中の真に声をかける。

「俺はそうする。だってEDC使ってそんなことする意味ないだろ。EDCを使う函館本線とかはそんなにスピード出る区間じゃないしな。逆にこっちからすれば400㎞/h出す意味ないと思うよ。」

「なるほどな~。」

俺はうなずく。

「まぁ、これはEDCでの話だから電車では話は違うな。だから新一、やれ!!」

そう言って真はにっこり笑う。

「新一、私も応援してるよ!!」

優美もにっこり笑う。

「やってやろうじゃねーかよ!!」

俺はそう言って、高笑いをする。


列車は何事もなく400㎞/hで飛ばす。

まぁ想定内ってやつだな。

ということで復路。と、その前に仙台で

「いいですか、沢村さん、変なことしないでくださいね!!」

と、言って三沢さんは俺を睨んだ。

「だから、こんなの高速度試験じゃないですよ!!もう400㎞/hなんて想定内のスピードなんですよ!!657がもっとスピードを出させろと叫んでいます。だから、容赦なくいかせてもらいます!!」

「そんな657が叫んでるなんてバカな…。本当に余計なことしたら承知しませんよ!!」

またお互いににらみ合う。

「とにかく実験始めましょうか。」

「そうですね。」

他の2人の研究者が言う。

「絶対にバケモノみたいなスピードを出して帰りますよ!!」

俺はそう叫んで、優美と運転室へ向かう。真は研究者と一緒にいるらしい。


仙台を出発し、列車はどんどんスピードを上げてゆく。

「けっこうこの子加速いいね。」

助手として横にいる優美が言う。

「確かにな。さすが、最新型だな。」

俺はそう言う頃にはもうすでに200㎞/hを超えていた。順調だな。

さらに列車はスピードをあげてゆく。

「300まで行ったね。」

「まだこんなの序の口だな。」

俺はそう言って不気味な笑みを浮かべる。

そして370㎞/h、380㎞/h、390㎞/hとどんどん400㎞/hへ迫ってくる。

そして問題の400㎞/hへ到達したところに…

「400㎞/hになったので、そのまま惰行…」

車内電話で三沢さんはそう言うが俺は

「惰行なんてしませんよ!!このまま力行ですよ!!」

俺は電話口にそう叫び、そのまま力行を維持する。

「危険だからやめてください。このままだと前方列車に当たります!!」

「危険なところへ突っ込んでこその高速度試験でしょ!!181系も681系も高速度試験を車両はみんな限界突破をしました。こんな最新技術を結集した車両がこんな制限つけてちゃ意味はないです!!」

言い合いをしてる間に410㎞/h、420㎞/hと上がってくる。

「こんな技術は上がっているけど、安全性の観点でも試験あってもこのままスピードを上げるのは危険です!!今すぐ落としてください。」

「こんなスピード化の社会からすれば400㎞/hなんか物足りないです!!それに高速化を追いかける技術者がこんな制限設けていいんですか?技術者たちには『限界』はあっても、『制限』なんてないはずです!!そんな制限を設けてばかりいると社会、いや未来は広がりませんよ!!電車スピード大国、『狭軌最強鉄道』と言われる日本をまた世界に見せつける時です!!」

「そうは言われても…」

三沢さんは黙ってしまうが

「新一の言う通りです。この車両でまた世界に見せつけましょう。これが俺らの『狭軌最強鉄道』ですから。」

真がそう言うと

「そうですよ。三沢さん。俺らには制限なんてありませんよ。」

「俺たちが追い越せないぐらいなスピードで走りましょう。」

「ここでやらないとまた他の国に負けますよ。」

他の技術者も口々に言う。それを聞いた三沢さんはため息をつき

「わかりましたよ。ここで事故でも起こしたら連帯責任ですからね。」

三沢さんが言うと真は無線を手に取り

「新一、いいぞ。行け!!」

と言った。

「了解!!」

俺は大きな声で返事をする。

「新一ファイト!!」

横で優美がエールを送る。

「行くぞ!!この狭軌最強鉄道と呼ばれる日本を舐めんなよ~!!」

ファ~ランファ~ランファ~ン!!

E657系はミュージックホーンを鳴らしながら加速を続ける。

列車のスピードは500㎞/hまでも達した。

「新一、まだ行くの?」

優美が聞く。

「当たり前だろ。まだ限界まで達してないからな!!」

「それにしても早いね。」

優美はどんどん通り過ぎていくレールを見つめながら言う。

「そうだろ。今や、地上の鉄路最高のスピードの世界だからな。」

国鉄とJR東海が開発したリニアモーターカーが600㎞/hのスピードで走るが、このE657系もそれに匹敵するスピードを出している。

そして列車は550㎞/h、560㎞/hとさらにスピードが上がる。あまりもの猛スピードで走るので定期列車はあちこちで臨時退避を行う。

「超特急はやてまで退避してる!?」

郡山のホームにいたキハ183を見て優美がびっくりする。

「そりゃ、こんな270㎞/hで走ってる超特急となんかじゃ比にならないようなスピードを出してるからな。」

そうこう言っているうちにスピードは595㎞/hまで上がっていた。もう少しで600㎞/h、あと少しだ!!

596、567、698、599…

「600㎞/h!!」

俺はメーターにそう出た瞬間にそう叫んだ。

「新一やったね!!」

優美はにっこり笑う。

「おう!!じゃあ、あと、数㎞/h攻めるか!!」

俺はそう言って加速を続けた。

そして列車は結局、最高時速607キロを出した。もう少し出せたかもしれないが、黒磯にあるデットセクションでは力速では走れないのもあったり、さすがに俺でも限界を感じた。

「お疲れ様です。このままスピードを落としてください。」

「了解です。」

列車はゆっくり速度を落とす。


それからしばらくして、大宮に到着し、車庫へ戻す。

「いや~派手にやっちゃったな~。」

俺は笑いながらE657系の車体をなでる。

「本当ですよ…。」

三沢さんが苦笑いする。

「でもおもしろかったからよかったですよ。」

「おもしろいじゃないですよ…。」

そう言って三沢さんはまた苦笑いする。

「でも世界記録更新できたからいいんじゃないですか?」

優美が言う。

「まぁそうですね。予想外のデータができてびっくりですよ。」

三沢さんの苦笑いは止まらない。

「まぁ無事に帰れたし、結果オーライですね。」

俺はそう言って両手を頭の後ろにやる。

「確かにそうだな。」

真が横でうなずく。

「いろいろぶっ飛びすぎたデータですが、量産車に生かしてみます。」

「期待してますよ!!」

三沢さんが言うと俺はにっこり笑う。


三沢さんたち一行は頭を下げて車両の点検へ向かった。

そして俺らは運転所へ戻る。

「いや~スッキリした~。」

俺は背伸びする。

「本当に、新一は怖いもの知らずだな。」

真が笑う。

「確かにね~。でも新一、夢、叶ってよかったじゃん。」

優美が言う。俺はそう言われてそのことを思い出す。

「世界最速スピードを出すか。確かに形は違っても叶ったな。それにF1の倍ぐらいのスピード出せたしな。」

「本当に倍近くだな。」

真は笑う。

「本当にこの仕事に就いてよかった。お前ら今後も頑張ろうぜ!!」

「うん!!」

「おう!!」

俺が言うと2人はにっこり笑った。


この試験で東北本線のダイヤは乱れたものの、線路には異常は出なかった。東北本線のダイヤを巻き込んでの試験となったが、この件では会社側からは全く怒られなかった。マスコミからは少し叩かれたものの、特に問題はなかったという。さすがJR東日本…。


この実験結果を生かし、秋からは量産車が導入され、12月からは特急はつかりやつばさを中心に慣らしとして、運用に入った。このことにより、485系とキハ183は東北本線から3月に引退が決定。ということで沿線にはたくさんの撮影者が沸いた。


そして485系のラストランの2016年3月25日、上野駅13番線で…

「まもなく、13番線から特急はつかり41号、函館行きが発車します!!ご乗車のお客様はお急ぎください~!!写真撮影のお客様は黄色い線の内側に下がってください~!!」

その放送と共に発車メロディーの「あゝ上野駅」が流れる。まるで、485系と上野駅の思い出を振り返るように。

「13番線ドアが閉まります。ご注意ください。」

「13番線ドア閉めま~す!!前寄り5番オーライ!!」

ドアが閉まり、運転台のドア灯が光る。

「41M、13番線、出発進行~!!」

ファーーーーーーーーーン!!

大きな汽笛と共に485系、最後の上野駅を発車する。


この日で東北を走る485系が団臨用を残し全て引退し、キハ183もまだ北海道に残るものの、本州では撤退し、後輩のE657系とH657系に道を譲った。


そして次の日からは…

「まもなく7番線から室蘭本線回り、超特急はやて1号札幌行きが発車します!!ドアが閉まりま~す!!」

ドアが閉まり、ドア灯が点灯し

「1001M、7番線、発進行~!!」

ファ~ランファ~ランファ~ン!!

たくさんの鉄ヲタと報道陣に見送られ、E657系の超特急はやては定刻通りに東京駅を発車する。


2016年3月26日、E657系での本格的な運用が始まり、それと同時にダイヤ改正が行われた。これにより、スピードが上げられた。東北本線内で、特急は270㎞/h、超特急は320㎞/hで運転することになり、速達化が図られた。


そして485系はと言うと…

「ついに485系、みんな廃車か…。」

 優美が寂しそうに485系を見る。

「そうだな。」

ピー!!

するとそこにEF64-1032(死神)が汽笛を鳴らして東大宮にやってくる。東大宮車両センターに所属する485系は長野車両センターでみんな解体することになった。ということでそれの第一陣が今日、廃車回送される。廃車回送は6両、6両で分けてそれぞれ長野へ回送する。

連結合図で485系と連結する。

「もう行っちゃうのか。」

俺はそう言って車体をなでた。

「本当にあっという間だったな。」

真が言う。

「そうだな。去年の今頃は廃車が出るなんて思わなかったな。」

俺が言う。

「ありがとうな。」

そう485系に呟く。

その1時間後

ピー!!

EF64-1032(死神)が汽笛を鳴らして485系を引っ張って、東大宮を発車する。俺らは寂しそうに485系を見送った。

「本当に行っちゃったな。」

「そうだね。」

「あいつが半世紀近く東北本線を支えたんだな。」

俺ら3人は遠くを見つめる。

「でも、俺らにはE657系がいる。485系には優秀な後輩がいるから大丈夫だよ。」

「次の東北本線のスターだもんね!!」

優美はにっこり笑う。

「次の時代が来たんだな。」

真はうなずく。

「じゃあ、俺らも新しい仲間と頑張るか!!」

「うん!!」

「おう!!」

俺が言うと2人はうなずく。


時代は変わるもの。それは仕方がない。例えどんなことがあってもまた前を向いて歩いていかなきゃいけない。俺らは今後もマスコンを握ってゆく。それが俺ら、時代を走る運転士の定めだから───

次回から最終章に突入です!!

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