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狭軌最強鉄道伝説~新幹線がない世界~  作者: ムラ松
第5章 消える伝説の車両たち
15/20

レッドトレインと一緒に

今回は狭軌最強鉄道の世界だからこそ、普通列車もこうであろうと思い、このお話を書いてみました。

東北本線の列車は何色?と聞かれると、関東に住んでる人はオレンジと緑、南東北に住んでる人は緑と赤と答えるだろうと思います。でも北東北の八戸で育った私から言わせれば、東北本線の列車は赤一色だと思います。だって私が住んでる盛岡~八戸~青森は…


2006年の夏の猛暑の日の盛岡駅で

「はぁ~今日も暑い~!!なんで機関車の中は冷房効かないの~!!」

私は影森美希。東北本線の盛岡機関区で東北本線の機関士をやっています。

「やっぱり、もう私たち機関士なって3年だけど、この暑さには耐えられないよ~。本当にこの時期けっこう痩せるもん!!」

「わかる!!」

横にいるのは同僚かつ、私の親友の白旗真央ちゃん。真央ちゃんは別の運用があるから私の列車に便乗乗車中です。

2人でいろいろ話していると…

「こちら、車掌。上り224列車発車~!!」

「了解!!上り224列車、盛岡、4番発車!!」

ピー!!

私は掛け声と共に汽笛を鳴らし、ノッチを力速に入れ、盛岡駅を発車します。


私が乗務しているのは盛岡8:05発、上り224列車、普通列車一ノ関行き。列車番号の通り、ED75と50系客車5両の客車列車です。まだ東北や北海道、九州、四国、山陰にはまだまだ多くの客車列車が残っていて、時代のニーズに合わせて少しずつ更新工事を行い、まだ現役バリバリで走っています。

そんなJRの客車普通列車網を支えるのは赤い車体が目印の50系客車。1978年に手動ドアで保安的に危険だった43系をはじめとする旧型客車を置き換えるために導入された車両です。当時財政難だった国鉄が高価な交流電車を導入するのには無理があって、全国の客車列車が走るところに50系を導入しました。車体は交流機関車と同じ色の赤2号。赤い客車ということでレッドトレインという愛称がつけられました。

民営化後もJR東海以外の会社に引き継がれ、使用されていますが、だんだん、電車が導入され、運用は年々減っています。

それでも時代のニーズに合わせ、(451系列の廃車部品から出た)冷暖房装置の取り付けや、化粧板や座席モケットの変更、方向幕の設置、JR西日本だと転換クロスシートの設置など、更新工事を重ねに重ね、今もなんとかやっていってます。

そして、私が乗務しているED75と50系。私にとっては小さい頃から見てきた車両なので、正直、仙台地区で走っている715系や701系などの電車は新鮮に感じます。でも、50系の方が好きです。


私が運転してる横で

「やっぱり、子どもの頃と比べると電車増えたね。」

真央ちゃんが声をかけてきます。

「確かに増えてきたね~。」

「特に仙台から南とか、ほとんど、電車でしょ?」

「そうそう。211系の交流バージョンみたな715系とあとはオールロングシートの701系。この二つが大活躍だもんね。」

「そうね。でも、それに対して、一ノ関超えると少しは701系いるけど、盛岡から北からは特急と急行除けば、みんな客車だもんね。」

「まぁね。でも、私からすればまだそのままがいいんだけどね…。」

「私も美希ちゃんの気持ちわからなくないけど、時代だからね…。」

「そうだよね…。」

客車列車はスピードも遅く、コストも高く、折り返しに時間を要する。それが客車列車の欠点です。そんな欠点があるから、どんどん、電車や気動車が導入されて客車の数は急激に減っています。

「それに新車入るんでしょ?」

「新しい電車?」

「そう。確かE721系っていう車両だった気がするんだけど…。」

「その電車がこの50系を置き換えるの?」

「そうぽいよ。」

「そうなんだ…。」

やっぱり、時代が時代なんだ。私はそう思いました。


一ノ関に到着し、真央ちゃんは仙台からやってくる列車に乗務するために私と別れ、私は盛岡方面に戻るために機回しをやります。

客車を切り離し、機関車は引き上げ線に引き上げ、私は反対側の運転室に向かい、盛岡方面の引き上げ線に向かいます。引き上げ線に向かい、逆転機を「前」から「後」に切り替え、バックで客車のところへ戻ります。作業員の旗の合図と共に、客車に機関車を少しずつ近づけます。

ガチャ

連結が完了し、あとは出発を待つのみです。ちなみにこの間15分。電車ならこの3分の1の時間で折り返していきます。これが客車列車が非効率と言われてしまう理由の一つです。でもこんな大変な作業でも昔からやっていることだから、私は大変だとは思いません。


折り返しの列車で盛岡へ戻ります。この時点でもうお昼前。ということでお昼休憩をし、次の運用へ向かいます。次の運用は357列車普通列車青森行き。私は八戸までの乗務です。

盛岡から北の運用に入ると花輪線のキハ40や58、110の気動車と出会う以外の普通列車はみんなED75かEF81が牽引する50系の普通列車。電車なんて走っていません。

私は小さい頃からこんな東北本線を見てきたから東北本線=レッドトレインというイメージがあります。小さい頃からどこかに出かけるために乗ってたレッドトレインの50系。そして高校の時は通学のためにいつも乗っていたのでとても愛着があります。正直、今の私がいるのはこの列車のおかげなんだなと思いました。

でもそんな思い出の列車が消えるのは悲しいです。できるだけ、長く乗務できたらいいなと思います。


そして2006年、11月、E721系が仙台地区に導入されました。それによりダイヤ改正が実施されました。このダイヤ改正によって50系客車が仙台から南の運用から引退しました。それにより、E721系が盛岡~黒磯という長距離運用に就く列車が登場するなど、東北本線の仙台以南は大きく変わりました。そして盛岡以南も客車列車は少し、減少はしたけど、まだまだ残っています。そして盛岡~青森はと言うと…


2006年12月頃、今日は真央ちゃんが運転してる普通列車に便乗乗車し、盛岡から八戸へ向かっています。

「ダイヤ改正したのはいいけど、盛岡以北はまだまだだね…。」

「ま、まぁそうだね…。」

2人ですれ違うEF81牽引の普通列車を見て言います。盛岡以北は少しは701系が導入されたけど、そんなの盛岡~青森間で走る運用の1割ぐらいしかいません。

「でも、まだ客車列車は安泰だからいいな~。」

「美希ちゃんは本当にポジティブだね~。でもいいか。」

「うん!!まだまだ、乗るよ!!」

「美希ちゃんがそう言うなら、私も少しは頑張らないとね!!」

「頑張ろうね!!」

「うん!!」

そう言って2人でにっこり笑いました。


結局、客車列車は、まだまだ残りそうです。これからも私はレッドトレインと一緒に東北本線を駆け抜ける日々が続きそうです。いつまでいてくれるかわからないけど、少しでも長く一緒に過ごせたらいいな。


「そういえば、美希ちゃん、そろそろ結婚とか考えてないの?ずっと私、仕事のことばかりだし、そっちも考えなきゃね。」

真央ちゃんが唐突に言います。それに対して私は…

「あ…。」

仕事に夢中でそんなことを忘れてました。

「やっぱり忘れてたか。美希ちゃんらしい。」

真央ちゃんは笑います。

「はぁ…。そっちも考えなきゃね…。私だって幸せな家庭も築きたいし。誰かいい人知らない?」

「そうね~…」

私たちはまだやらなければいけないことがあるみたいです。できれば50系が引退するまでには結婚したいな…。

狭軌最強鉄道の世界では新幹線が開通していない=455系などの急行車両が余剰にならないから未だに客車列車が残るのかなと感じて執筆しました。書いてて感じたのが、客車列車っていいなってことです。僕は、東北本線などでの現役時代の50系には乗ったことがなくて、ちょっとこの世界が羨ましいなと感じます。

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