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守るべき存在、失われる世界  作者: 上月 佑幸
クリスティア編
89/90

希望に抱く想いをもって……

「我らの攻撃が一切効かないだと……」


 シラー、リリアン、シオンの攻撃はもちろん、アルベールの銀の術式やクルトの常世の術式も全く効果が無かった。


「だから私は無意味だと言いました。もう貴方たちの帰る世界は無く、守るべき人も間もなく消滅する。これ以上の抵抗は無駄な労力です。諦めなさい」

「あらあら、ふふふ。無駄な労力なんて勝手に決めないでほしいわねぇ」


 打開策が浮かばぬ中でもリリアンは笑っていた。


「おい、リリアン。そんな余裕な顔して、なんかいい案でもあんのかよ」

「ないわ」


 即答する。


「たんなる強がりといったところねぇ。だって嫌でしょ、このまま諦めるなんて」

「当然だぜ。ここで諦めたら死んでいった仲間たちに顔向けできないしな」


 シラーはいつも一緒に過ごしていたエリーザとアズデイル。そして彼らを庇い先に散ったヘルの顔が思い浮かび、情けない姿は見せられないと自身に喝を入れる。


「グレイ、ステラ、ジークリート……俺は、四十字騎士団として、一人の勇者として戦うから見守っててくれ」


 シンは光神剣・破帝をゆっくりと構える。


 その刃は邪神によってひび割れていたが、その煌きは一切失われてはいなかった。


「アルベール、お前の最強の術式でなんとかなりそうか?」

「わからぬな。我を除くこの世界全てを銀に変える力だが、それでは貴公等も巻き込んでしまう」

「つまり、俺達はお荷物ってことか?」


 意地悪く笑うクルトに、肩をすくませ軽い溜息を吐く。


「冗談はほどほどにしておくのだな」

「ふふふ、ごめんね。正直言って俺はアイツを恐れている。ほら……」


 そういってクルトはローブの袖を捲ると、白い細腕が震えていた。


「クルト……」


 クルトは人差し指を口元にあてる。


「シオン達には内緒だ」

「わかった」

「お話しは終わりましたか? 友との別れの言葉は必要ありません。貴方たちは一切の痕跡も残さずに消え去るのですから」


 邪神はクルト達のやりとりを黙って視ているだけで、攻撃する素振りも見せなかった。


「ハッ! 余裕ですって感じだな。おい、シオン。もう一回攻撃を一点に合わせてぶつけてみるか?」

「何度だって、やってやるよ! せめて、これ以上クリスティアが悲しまないように終わらせてやる」


 世界は失われてしまった。だが、せめてこれ以上皆の輝きである少女を苦しませたくはないという意思をシオンは仲間たちに訴える。


「あらあら~、シオンってばクリスティアちゃんに優しいのね。お姉さん嫉妬しちゃうわぁ」

「うっせぇ、黙ってテメェも死ぬ気でやれ!」

「お姉さんだって本気なんだけどね、あれはちょっと規格外なのよ」

「リリアンにしては珍しく弱気じゃねーか」


 普段の様子ではないリリアンをシラーは指摘する。


「そうねぇ~ちょっとこれは泣き言も言いたくなるわよ」


 リリアンは手に持った愛用の因果創神器である女神の大鎌に視線を移すが、そのいかなる攻撃も受け付けなかった邪神にリリアンは困ったような表情を浮かべる。


「でも、帰る世界も無いし、ここは死ぬ気でいってみようかしらね」


 純白の床が映しだした荒廃した世界。


 それはもう、戻らない現実。


「シオンの言う通りだな。決死の覚悟で我もクリスティアを救済する」

「銀聖の影法師よ。俺も続くぜ!」

「シン、何故に今更異名で呼ぶんだ?」

「カッコいいからに決まってるだろ!」


 シンはグッと親指を立てる。


「ハッ! シン、本当にカッコいいところを見せるのはこれからだろ、それをきっとクリスティアも望んでるぜ」


 シラーは全魔力を込めて雷を生成し、それを凝縮させ放つ。


「テメェ等、三下は俺の活躍を輝かせる踏み台でしかねぇって事が分かってねぇみたいだなァ!」


 シオンも続いて、異空間を展開しシラーの放った雷を飲み干し、邪神の背後に出口としての異空間を開く。


「お姉さんは、近づきたくないからこうするわねっ!」


 女神の大鎌を大きく振りかぶり、そのまま投擲する。


 まるで首を刈り取るように弧を描きながらカーブし邪神の細い首筋を鋭利な刃が迫る。


「俺達もいくぞ、アルベール、シン!」

「おう!」

「うむ!」


 シンは大剣を握り、地を駆ける。


「ケアリア レア アモリアーラ ストゥルト エヴァンジュ ローデ ヴァイド カウンテルト:ヴィヤージュ・セトメトラ(常世の因果終焉) 」

 常世言語を持ってクルトは未来創造を展開する。

「これが、俺の本来の未来創造の術式だ! 邪神、お前を滅する未来は創れない……だが、多少の動きは抑制できるはずだ」


 黄金の双眸には数多の未来と膨大な情報量が瞬時に映し出され、クルトは刹那の時も掛けることなく、望む未来を組み立てていく。


「なにっ!?」


 効果はあった。


 邪神は己の身体に信号を送ってもそれに従わず、身動きを取る事は出来ない。


「お前はまだ完全じゃない。クリスティアが反発していて、本気はおろか身体を自由に動かすのも苦労しているんだろ? そこに俺の力が加わればいくら邪神といえど、動きを抑制できるという俺の読みは当たったみたいだな」


 動きを封じられた所に全魔力を注ぎ込んだ雷とリリアンの放った大鎌。そして雷に打たれ、自身の能力により強化されたシンが邪神と共に雷光の飲まれる。


「次元召喚:リード・アルーマ」

「シンに当てるなよ」

「問題ない。我には見えている。いや……クリスティアが射るべき場所を示してくれている」


 その迷いのない澄んだ翡翠色の瞳は雷光に目を眩ませることなく命じる。


「射れ!」


 成人男性ほどの長さを誇る矢先が直線状に存在する邪神の胸を射抜かんとその不可視の力が発揮する。


こんばんは上月です(*'ω'*)ノ

とうとう次回が最終話となります。

次の投稿は9月5日の月曜日となります

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