聖女と魔王の告白
「アルベール。どうやらクリスティアが目を覚ましたぞ」
早朝にクルトがアルベールの部屋に姿を見せ告げる。
「本当か!? では、早速見舞いに行こう」
普段がゆっくりと支度を進めるアルベールだが、今回はすぐに準備をしてクルトと共に医務室へと向かう。
「クリスティア、大丈夫なのか!?」
扉を勢いよく開け放ち、アルベールが早足にクリスティアが横たわっているベッドに歩み寄る。
「えっ、あ、うん大丈夫だよ」
突然の事で目を大きく見開き、何度も頷く。
「まったく、アルベール。そんな力任せに扉を開けたらびっくりするじゃないか」
少し遅れてクルトも医務室に到着し、主治医に変わったことがなかったか確認をする。
「私、意識失っちゃってたんだよね?」
「うむ、心配したのだぞ」
「あはは、ごめんね」
困ったように笑うクリスティアの姿を見て、アルベールもクルトも安堵する。
だが、その瞬間とも呼べる安らぎは、クリスティアの次の一言によって崩れ去る。
「でも、私もう駄目かもしれない」
あくまで笑顔のままそう告げる。
「クリスティア、いったい何が駄目なんだい?」
「夢でね、一週間後くらいに私が皆を……世界を壊してたんだ」
その言葉にクルトは悲し気な色をその黄金色の瞳に宿し、クリスティアの頭を優しく撫でる。
「クリスティア。お前は気にしなくていい。俺たちが必ず助けるって約束しただろ?」
「うん……」
少しでも気が紛れてくれればと声を掛けたが、効果は見受けられず、仕方ないとアルベールの方へ向き直る。
「アルベール、クリスティアと二人っきりで少し一緒にいてくれないか?」
「む? それは構わぬが、クルトはどこかに行くのか?」
「ああ、聖域にちょっとな。シオン達を向かわせているから、そろそろ俺も合流しようと思っていた所なんだ」
確かに気にも留めなかった訳ではないが、彼らの姿を見ていないなと思ったら聖域に向かっていたのかと理解し頷く。
「うむ、ここは任せよ」
アルベールの頷きを確認し、困惑する主治医を連れてクルトは部屋を出る。
「世界を壊すのは邪神じゃなくて……私なんだね」
医務室に2人だけ残され、クリスティアの表情が一段と曇る。
「たかが夢だ。その全てが確実に現実となるとは限らないであろう。まだ、諦めるには早い」
さすがに無理があった。こんな言葉でクリスティアの心が晴れるはずもない、という事はアルベールにも分かっていた。
「私自身分かってるんだよ。私の身体が誰かに……ううん、邪神に少しずつ蝕まれてることに」
「……」
これ以上なんて声を掛けてあげればいいのか分からなくなった。
「ねぇ、アルベール君」
「む?」
「隣に座ってほしいな」
ベッドの縁に腰掛けるクリスティアは、ここに座ってほしいというようにとなりの場所をポンポンと軽く叩く。
「で、では」
なぜか緊張してしまうが、無事に隣に腰を下ろし互いの身体が密着するが、アルベールにはその人間の、クリスティアの温もりを感じられない。
「アルベール君に伝えておきたい事があるんですけど、聞いてくれますか?」
改まるクリスティアに、だまって頷く。
「ありがとう。こんな時だから伝えておきたいんだ」
と言うと一拍の間をあける。
「大好きだよ、アルベール君」
「!?」
声が震えていた。
緊張からか、恐怖からか。それともその両方からか、クリスティアの瞳涙が浮かび。頬を伝い落ちる。
「それは、友と」
「ううん、一人の男性として、だよ」
鼓動が跳ねる。
今まで恋なんて言うものから無縁だと思っていた自分がまさか、異性に男性として好きだと言われるとは思ってもいなかった故に、どう反応していいのか分からず瞳が宙を泳ぎ頭が真っ白となる。
「え、あ、いや、我をか?」
「うん。アルベール君は私の事どう思ってますか?」
クリスティアの事をどう思っているのか。アルベールは深呼吸を数回繰り返し、心を落ち着かせては、自身の素直な気持ちを視るべくゆっくりと瞳を伏せる。
初めての出会いは偶然だった。
それから、別れては再び再開し、共に助け合い困難を乗り切り、人魔平等を謳う国を作り上げることができた。それまでの彼女と共に過ごした時間はアルベールにとって、なくてはならない日常だった。
一緒に過ごすうちに胸が締め付けられるような感覚を時々感じ、永劫離れたくはないという気持ちがアルベールの奥底から強く芽吹いていた。
「我は……」
その芽吹いた気持ちこそが、今アルベールがクリスティアに対する素直な想い。
「我もクリスティアを愛している」
口に出してしまったら、体が自然と動き、隣に座る少女の身体を力強く抱きしめる。
「あ、アルベール君!?」
「我はクリスティアを失いたくはない。共に永劫世界の果てまで我の隣にいてほしいのだ!」
ウチに渦巻く気持ちの全てを乗せ、告白する。
「ふふ、ありがとうございます」
抱きしめられたクリスティアの瞳からまた一滴の涙が流れ、その涙をアルベールは温かいと感じた。
「温もり……か」
この温かさは体で感じたのではなく心で感じたものだとアルベールは理解した。
「我が一緒にいる。なんとしてもだ」
「うん、うん!」
クリスティアの心が満たされた時、純白の世界に立ち尽くす神はそっと冷たく微笑む。
こんばんは上月です(*'ω'*)ノ
もうすぐ完結します!!
ラストまで頑張って書き続けますので、最後まで付き合っていただけたら嬉しいです。
そんなわけで、次の投稿日は8月20日となります。




