森を侵す煉獄の熱世界
「お前、達は……下がって、いろ」
ステラ達と異形なる狩人の間にヘルが割って入った。
「ぐぉぉぉぉ!」
獅子のように地を4つ足で駆け、その鋭利なる爪牙をヘルに振り下ろす。
「……」
寸前の所でヘルの扱う鉄板のように巨大な大剣に阻まれ、諸劇を外し低く唸りながらもヘルとの距離を開ける。
「俺の、剣……」
ただ頑丈性に特化した鉄の塊である大剣が深々とその爪痕を残していた。
「おっ、おい。あの爪どんだけ切れ味良いんだよ!」
グレイが後方でツッコミを入れる。
「ヴァナトリアの騎士達の鎧が引き裂かれていたわけが分かりましたね。あれの前では如何なる物理防御も意味をなさないでしょうね」
そして、あの2人の戦いに中途半端な自分たちが割り込まない方が良いという事も同時に理解する。
「紅蓮 燃焼 灰 終焉 無 ━━━━ホミュラー アルミュリウス(焔纏いし鎧)」
ついにヘルは自身の術式を展開する。
次第に彼自身の熱を加速的に上昇させ、周囲には蜃気楼が生まれ、草木は自然と燃え瞬く間に灰燼と帰
していた。
「ここ、森だけどヘルの術式はまずいんじゃね?」
「もう遅いですよ。クリスティア様には申し訳ないですが此度の人選はちょっと失敗だったかもしれません。というより、リリアンがいないのも問題ですが」
煉獄の熱世界は範囲を広げ、ステラ達まで飲み込もうとしていた。
「ヘル! ちょい、落ち着け。俺たちまで溶けちゃうだろ!!」
「……?」
何のことだという風に首だけ振り返り、首をかしげる。
「いやいや、森が燃え……いや、溶けてるって。俺たちも溶けちゃうから!」
「溶けたく、ないな……ら、逃げ……ろ」
ようやく理解したが、どうしようもないという諦観をその声に滲ませ逃げることを勧める。
「グレイ、下がりますよ!」
「おっ、おう」
その場に転がっている無数のヴァナトリア兵の死体も自然発火したかと思えば、その形はみるみるうちに無形へと変えていく。
「うぐぉ!?」
化け物もその異常な熱にさらに距離を取る。
「逃が……さない」
ヘルは熱によって赤く変色するこぶしを地面に思い切り叩き付ける。
「うががぁ!?」
地は揺れ、化け物の足元に亀裂が走り、炎なんて比べようもない熱を持つ溶岩の柱がいくつも吹き出しては、意思を持っているかのように鎌首をもたげ蛇のような動きで襲い掛かる。
「ががぁ!!」
俊敏な動きで溶岩の蛇を交わしていくが、間近で溶岩の熱を感じていればその消耗は普段の比ではなく、瞳は乾燥し、喉は焼け、滝のように溢れる汗が衣服に貼り付き、動きを鈍らせる。
溶岩に手間取っている間にもヘルの煉獄の熱は範囲を広げ、ついには化け物を引きずり込むことに成功する。
「後は、溶けろ……」
「がぁぁぁぁぁあああああ!!」
足と手の刃は煉獄の熱に包まれていても、溶けることはしないが、それ以外の場所は発汗さえも蒸発させ、皮膚を肉を骨を臓器をその全てを爛れさせ溶かし、地面に垂れては液状と化す。
「ぐぅ……ぐぁあ!!」
溶け行く最期の瞬間までヘルを睨み据えては、とうとう鋭利な刃を除くその全てがこの世に存在していた痕跡ごと消え去る。
「終わっ、た……?」
腹に違和感を感じたヘルは視線を、兜を下に向けると腹部には一本の刃が刺さっていた。
きっと、死ぬ直前に最後の抵抗として投擲したのだろう。
ヘルはそれを乱雑に引き抜き捨てる。
「俺、に肉体は……ない」
術式を解き、それでも燃え広がる木々にヘルは先ほどと同じように熱を失った拳を地面に叩き付ける。
再び地面は強く揺れ、燃え盛る木々が収まる範囲内の地形を崩し、日が燃え移るのを抑える。
こんばんは上月です(*'ω'*)ノ
戦闘シーンを次回まで続けようか悩んだのですが、今回の話しで決着をつけさせました。
次回はアルベールとクリスティア達の話しとなります!
次の投稿は8月17日の日曜日の夜です




