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守るべき存在、失われる世界  作者: 上月 佑幸
クリスティア編
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森の狩人

 太陽がちょうど真上に差し掛かった辺りで、ようやく例の森にたどり着く事が出来た。


「この森に居るのだな! よっしゃ、早く倒して帰ろうぜ」


 大剣を肩に担ぎながらも、抑えることの出来ない諸突猛進の猪体質であるグレイは1人はしゃいでいた。


「結局リリアンは姿を見せませんでしたね」


 貴重な戦力であるリリアンはヴァナトリア帝国首都で姿を消してから一度もその姿を見ていない。そのせいで、今現在は魔王であるヘルと人間のステラ、グレイと3人だけになってしまっていた。


「あいつ……いなくて、も……問題、ない」


 抑揚なく言葉を途切れさせながらもヘルは、不安げなステラを気遣うように言葉を紡ぐ。


「ヘル殿が同行してくれて、とても助かっています」

「気に……する、な。俺は……友の期待、応えるだけだ」


 照れ隠しなのか、言葉を取り造りつつ顔を背ける。


 姿が鎧なのでその表情は分からないのだが、その人間らしい仕草にステラはクスリと微笑む。


「おーい、ヘル、ステラ。早く来ないと置いてくからな!」


 既に森に足を踏み入れていたグレイにステラはグレイの命が心配になる。


「安心、しろ……仲間、守る」

「まったく、グレイはいつも勝手に突っ走っていくのですから!! ヘル殿、万が一の時はグレイだけでも逃がしてあげてください」


 ヘルはステラの顔を一瞬見たが、何も答えることなく重量のある足を進めていき、ステラもそれに続く。


 森の中は正に天然そのもので、道なんてものは舗装されておらず、ただただ、ヴァナトリアの調査隊が通ったであろう、草木が掻き分けられた道を歩んでいた。


「マジ、この獣道通って行かなきゃいけないのかよ」


 先程までの意気込みはどこに行ったのか、生い茂った草を鬱陶しそうに手で払いながらも、進んでいく。


 隊列はグレイ、ヘル、ステラの順番で進み、ヘルの巨体に踏み潰され背後を歩くステラは快適に歩を進めていた。


「グレイ、そろそろぼやくのはその辺にしてください。此処は敵の潜む領域内なので、集中力を欠くわけにはいけないのですから」


 先頭を歩くグレイからやる気の感じられない返事が返ってくる。


「ま……て」

「ぐぅえ!」


 ヘルは前方を歩くグレイの首根っこを掴み停止させる。


急に気道が閉まったせいで酸素が入ってはいけない場所に入り込んだお陰で、思いっきりむせ返っていた。


「なにするんだよヘル! いきなり首元が絞まったら、かなりびっくりするだろっ!」


 首を擦りながらグレイが涙目で訴えかけるが、そんなもの聞こえていないかのようなヘルは意識に収めることなく、そのままグレイを後方へと押しのき、煉獄の熱を纏う魔力を放出させる。


「ヘル殿、まさか……!?」


 こんなにも早く敵にお会いできるとは思っていなかった3人は正面に最大の警戒を敷く。


「くる……ぞ」


 ヘルが人間では扱うことの出来ない程の大剣を引き抜き、魔力をたぎらせる。


「あがぁ! ぐぉぉぉぉぉぉ!!」


 人の声ではない。かといって獣のそれでもない。


 耳に響く甲高い声にステラとグレイも剣を構える。


「おいおいおいおい、どこにいるんだよ!」

「落ち着きなさい。グレイ」


 ヘルは微動だにせず正面だけを向いていた。


 まるで此方を監視するかのように周囲から草木が揺れる音が不気味に耳に入る。


「一体じゃないのか!?」

「グレ、イ……ステラ、このま、ま……一気に、駆け……抜けろ」


 呆然とその意味を理解しかねているグレイにステラはグレイの手を取り、言われたように草木が生い茂る道を正面に駆け抜ける。


 すると、少し開けた場所に出る事が出来たが、同時に見たくもない光景が広がっていた。


「なんだ……これ」

「これは酷いですね」


 見渡す限り人間の死骸が散乱していた。彼等がヴァナトリアの調査隊だという事をすぐに理解する。


 皆なにか鋭利なモノで切り裂かれていて、身を守る鎧でさえ意味を成していない状態だった。


「やっぱり……」


 ステラが1つの死体に近づき傷口をよく観察すると、ヴァナトリアの医師が言っていたように灰のようなモノが塗りたくられていた。


 少し遅れてヘルもステラ達に合流し、その凄惨な場面を目にするが特に反応を見せない。


「殺意、感じる」


 ヘルの言葉と同時に上空より咆哮が轟く。


「がぁぁぁぁぁぁ!」


 風切り音と共に地面に着地し、ようやく姿を現した。


「なんだ、コイツはっ!?」


 グレイの言葉にステラも同意する。


 それはもはや、人間という枠組みから外れた存在。


 一見人の形を成してはいるが、その姿勢は狼や犬のように四つん這いであり、手首や足首から先は指の代わりに5本ずつの鋭利な刃が生えており、口は耳元まで大きく裂けており肉食獣のような鋭い牙からは涎が垂れ落ちる。


「人……ならぬ、者」


 ヘルの呟きに反応したのか、その化け物はヘルを威嚇するかのように低く唸る。


 それに正面に向き直るヘルも不動を感じさせる煉獄の熱を呼び起こすかのように、魔力を解放する。


こんばんは上月です(*'ω'*)ノ

とうとう姿を現したヴァナトリア帝国領辺境の森に潜む者。次回もこの続きを書いていきます。

次の投稿日は8月15日の夜となりますので、是非とも一読くださいませ。

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