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守るべき存在、失われる世界  作者: 上月 佑幸
クリスティア編
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聖女と魔王の変装

 少し襲い昼食を済ませ、この街の人達にオススメの観光スポット等を聞いて回る。

 クリスティアとアルベール。この2人が並び道を往来すればやはり、自然と視線を集めてしまう。

「ねぇ、あのお二方って、聖女様と魔王様じゃない?」

「確かに似てるけど、こんな街に来ないだろ」

「だよねー」

 人々の感心を一心に浴びては恐縮してしまうクリスティアと、全く気にも止めぬ自然体のアルベール。だが、この二人から隠しても隠しきれぬ下々の者達とは一線を画く品性がありありと溢れ出していた。

「すごく視線を集めちゃってますね」

 俯き加減のクリスティアが隣を歩くアルベールに小声でそっと呟く。

「ふむ、気にすることではないだろう。常日頃から民に見られているではないか」

「そうなんだけどね……。う~ん、今日のはいつもとは違って好奇心の視線っぽいからなんか恐縮しちゃって」

「そうか」

 アルベールはその翡翠色の瞳で周囲を見渡せば、人々はそっと白々しく視線を背ける。

 彼らにはその気はないのだろうが疎外感のようなものを感じてしまい、少々ヘコんでしまう。

「であれば……だ」

 アルベールはクリスティアの手を引き、路地を曲がり裏道に入る。

 表通りと比べれば多少は人が少なくそこまでの視線を集めることはなかった。だが、安心するのはまだ早く、このままではアルベール達の事が気になって仕方がないという好奇心旺盛な者達にストーカーの如く付きまとわれかねないので、視線を裏通りに並ぶ店の看板へ巡らせては目当ての店に駆け込む。

「いらっしゃいませ。おや……?」

 来客に店員が接客しようと会計場を離れアルベール達に近づいては小首を傾げる。

「貴方がたが今噂の観光客ですか?」

「うむ、噂が流れるのは早いのだな」

「えぇ、この街もそう広くはないですからね」

 妙齢の女性が屈託のいない笑顔を向ける。

「あまり目立たない男性用と女性用の服、そしてウィッグなるものを購入したいのだが」

「承りました。ではこちらへどうぞ」

 店員がアルベールとクリスティアを店の奥の方へに設置された試着室に入るよう促す。

「目立ちたくないんですよね? なら、服とウィッグは私が持ってきますので、しばらくここで待っていてください」

「あっ、ありがとうございます」

「いえいえ、私たちの聖女様と魔王様のお願いを断ることなんて出来ませんしね」

 店員の心遣いに感謝して静かに待たせてもらうことにする。しばらくして、カゴいっぱいに詰め込まれた衣服と様々な種類のウィッグが目の前に置かれる。

「お好きなものをお選びください」

「中々に量が多いのだな……我にセンスというものはないのでクリスティアに選んでもらうとしよう」

「わっ、私がアルベールくんの服を選ぶの!?」

「嫌か?」

「ううん、嫌じゃないよ。でも私もあまりセンスが……」

 この大量の衣服の中からアルベールに似合う一品を選ぶとなるとかなりの時間がかかってしまうと困惑していると、店員がそれに見かねて声をかける。

「じゃあ、私があまり目立たずお二方に似合うモノをお選びしましょうか?」

「是非、お願いします」

「うむ、頼む」

 それから数十分が経過し、店員は満足気な笑みを浮かべてはその衣服とウィッグを纏った2人の姿に自信アリと大きく頷く。

「ふふふ、これで誰がどう見ても聖女様と魔王様には見えませんので大丈夫だとは思います」

 そう言うなり二人の前に縦長の鏡を持ってくる。

「「!?」」

 そこに映しだされた姿……、主にアルベールの方に視線が行ってしまう。

「なんなのだ……この姿は」

 初めて見たアルベールの絶望に彩られた表情。

「お似合いだと思いますよ?」

 店員がニヒッと確信的に笑う。

「でっ、でもアルベール君確かに似合ってるよ! うん、今日はこのままで過ごそう」

「むむ……だが、しかし」

 鏡に映し出されたアルベールの姿とは、どこからどう見ても女性そのものだった。

 銀色の長髪は茶色のショートヘアーに変わり、薄化粧を施し、足元がスースーして落ち着かない膝上までしか長さのないスカート。そう、これこそ正に俗に言う女装というモノで、悔しいことに鏡に映ったアルベールはとても美しかった……。

 そして、それ以上にアルベールを困惑させる事といえば、何故か興奮気味のクリスティアだった。

「我は男物の服を所望した……はずなのだが」

「申し訳ありません。当店は女性服専用の店となっておりますので、"致し方なく"女装させていただきました」

 仕方なかったのだという部分を強調し、有無を言わさぬ何とも言いようのない迫力がアルベールの二の句を封じる。

「いいものを見せて貰ったので、お代金の方はタダにしておきますので、是非とも観光を楽しんできてください」

「ありがとうございます! 店員さんのお陰で助かりました」

 クリスティアはペコリと頭を下げる。

「いえいえ、お気になさらないでください」

 店を出る二人に、こやかに手を振り見送る。

 晴れやかなクリスティアと、魂の抜けたように生気を感じさせないアルベールは再び表通りへと足を運んだ。

こんばんは上月です(*゜∀゜*)ノ

日常パートにもう少しお付き合いくださいませ。

さて次回は変装した2人が観光しつつも、不穏な影を発見する話しとなります。

次の投稿は7月22日の金曜日となりますので、どうか最後までお付き合いください(*´д`*)

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