邪神への宣戦布告
それは意外な出会いだった。
今唐突に現れたクリスティアに誰が予想できようか。アルベール達は咄嗟のことに言葉を忘れ、ただただクリスティアに視線を向ける。
「えっと……みんな固まってるけどどうしたの?」
流石に皆の視線を一身に浴びていることに気まずくなり、この状況を打破しようと声を駆け一番に反応を示したのはアルベールだった。
「いや、すまない。まさかこのような場所でクリスティアと出会うことができるとは思っていなかったのでな、少々驚いていたのだ」
「うん、それは私もだよ。まさか私の夢の中に皆がいるなんて思ってもいなかったよ」
「夢?」
クルト、リリアン、アルベールは同時に怪訝な表情を浮かべる。
「クリスティア、ここは本当にお前の夢の中なのか?」
「えっ、うん。そうだと思うけど」
自分たちは聖域にいたはずなのに、何故クリスティアの夢の中にいるのだろうかと考えれば考えるほど理解が出来ず、考えうる常識から大幅に外れていた。
「クリスティアちゃん。お姉さん達ね、さっきまで聖域にいたんだけどぉ、どうしてクリスティアちゃんの夢の中にいるのかな?」
「う~ん、ごめんなさい。私に聞かれても分からないです」
リリアンは気にした様子もなく、クルトとアルベールがするように何かを考え始める。
「なぁ、アルベール。もし此処がクリスティアの夢の中だったら、何でその本人が現れる前からこの場所は存在しているんだと思う?」
「む? それは……」
言葉に詰まる。
それもそうだ。夢とはその本人が眠りにつきそこで初めて見れるモノだ。その本人が来る以前にこの世界にアルベール達が存在しているのは矛盾以外のほかでもない。そもそも、アルベール達がこの場所に来たきっかけは聖域の最奥部に居たクリスティアと同じ容姿を持つ邪神にあった。
それを考えると、夢の世界だと思い込んでいたこの場所は邪神の創りあげた世界だという結論に至る。そして、クリスティアがこの場にいる理由は彼女が眠り意識を閉じた時に魂か精神かそれに類似した何かをこの場に転生させているのではないかというのがクルトの至った答えだった。
「なるほどね~、確かにそれならば説明がつくわね。つまり此処は現世で意識が無い状態なら来れるってわけね」
「ふむ、そうなると我々の身体は現実世界で意識を失っている……という事か?」
「まぁ、所詮は推測だけどね。だとしたら、その邪神は本当にヤバイな。中央教会と聖域はかなりの距離がある。その離れた所にいる俺達とクリスティアに干渉出来るってことはかなりの広範囲での力を行使できるって事になるね」
今までは神話や語り聞いた情報で邪神の力量を測っていたが、実際に体験してみて本当にヤバイ存在なのだなと改めて認識する。
「それでも、我等は世界とクリスティアを守るために戦わねばならない」
「そうねぇ~お姉さんもまだ遊び足りないし、勝手に色々と壊されるのって面白くないし困るのよねぇ」
リリアンからも同じ意志を感じクルトとアルベールは頷き合う。その間クリスティアだけは1人蚊帳の外で彼らの話す夢の内容に小首を傾げていたが、自分と世界を守る為に魔王が団結してくれているという事に嬉しさから涙が溢れる。
「むっ!? クリスティア、何故泣いているのだっ! 我等が何か気の触ることでも言ったのか?」
慌てふためくアルベールにリリアンとクルトは可笑しそうに笑い、やれやれと肩をすくめ合う。
「ううん、違うよ。ただ嬉しかったんだ。皆がその……私屋世界の為に一致団結してくれていることに」
「当然だろ。クリスティア、お前は俺達やこの世界にとっての希望なんだから、そう安々と奪われるわけにはいかないんでね」
「まぁ、お姉さん的には~さっきも言ったけど勝手に壊されるのって好きじゃないのよね。相手が強大なら1人より皆で立ち向かったほうが楽が……ううん、より確実かなって思ったのよ」
リリアンの本心がポロリと一瞬顔を出したが、言葉を濁し言い換える。
「うむ、クルトとリリアンの言う通りだ。此度の敵は魔王である我等を遥かに凌ぐ異端の神。故に皆が1つとなり小さき力を兄弟にしてぶつからねば勝利は掴めぬのだ。それに我は……いや、何でもない気にするな」
「?」
後半のアルベールは妙にぎこちなかったがクリスティアはそれに対し追求することなく、今ここに集いし英雄達に最大級の微笑みを向ける。
「私たち勝とうね!」
クリスティア、クルト、リリアン、アルベールは手を重ね合わせる。
絶対に邪神という非常識に打ち勝ち、守るべきクリスティアと世界に繁栄と平和を願う。
「不要な……世界……認めない。……私は秩序……統一……」
彼らの団結を否定するように淡々と感情の見せぬ声音が白く歪んだ空間に響き渡る。
「うっ……」
クリスティアの表情が強張るのが見て取れ、3人は彼女を中心に囲み、来るのであれば迎え撃とうという意思を見せ、各々が魔力を展開させる。
「怖がるな、安心しろ。俺たちが絶対にクリスティアの指一本にさえ触れさせないからね」
「そうよぉ~私が手のひらで踊るんじゃなくって、邪神を私の手のひらで踊らせるのが面白いじゃない? クリスティアちゃんもそう思わない?」
「来るなら掛かってくるがよい! 我等が全身全霊を持って相手してやろう」
自分を守るように囲み構える心強い仲間達の背を見渡し、自分は昔の弱かった自分じゃない事を思い出し、勇気を振り絞り天井に向かって声高らかに宣告する。
「私は中央教会聖女クリスティア・ロート・アルケティア! 同じ名と容姿を持つ古き神に告げます。貴方はこの世界を滅ぼさんとする邪神。私たち人類は貴方の存在を認めませんッ!」
クリスティアの思わぬ言葉に純白の空間に静寂が満る。
そして、その世界は揺らぎ、亀裂が入っては明るく優しい光に包まれ、その眩さに皆視界を塞ぐ。
一瞬の出来事だった。
眩い光に包まれたと思った次の瞬間には、先程居た聖域にアルベール、クルト、リリアンは呆然と立っていた。
「戻ってきたみたいだな。さて、考えるのは後にして今は早急に中央教会へと戻り、エリーザ達に一刻も早くこの事を伝え、対策を練らないとな」
「対策は任せるわ。私は考えるより行動する方が好きだから。話しが纏まったら簡単に教えてちょうだいね」
「ふむ、ではその間リリアンにはある頼み事をしたいのだがよいか?」
アルベールが珍しく他人に頼み事をするので、リリアンは何か面白そうだというように笑顔を浮かべて肯定する。
こんばんは上月です。
次回から少し日常パートも挟みつつ邪神との戦いに備えていこうと思いますので、頑張って書いていこうと思います。
あくまでこの作品は第1部であって、第2部へと続く物語となりますのでもしよろしければ投稿し始めましたら一読くださいませぇ(*゜∀゜*)
次の投稿日は7月6日~7日くらいになると思います




