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後見人による本人到達代理確認は、本人の空白を閉じる証明ではありません

『旧台所係本人未読欄、重複保留が長期化した場合、伯爵家後見人による本人到達代理確認を可とする』


紙には、父エルンストではなく、伯爵家後見人の名が印刷されていた。


当主が駄目なら後見人。本人が読まないなら、本人を知っている家の大人に読ませる。そうすれば、リディアの空白は長引かず、晩餐会当日の台帳から消せる。


王宮書記は、声を低くした。


「後見人は、あなたが伯爵家で働いていたこと、料理帳を扱っていたこと、屋敷を出たことを確認できます。本人到達代理としては十分ではありませんか」


「後見人が確認できるのは、後見人が見た範囲です」


リディアは、前の紙で置いた青い点を動かさなかった。


「私が母の料理帳をどこで読むのか。前掛けをどの棚で受け取るのか。計量匙を誰の手順へ返すのか。賃金袋が私の手に届いたのか。帰着先机が本当に私の机になったのか。そこは、後見人の到達では閉じません」


書記は、後見人確認欄の下へ線を引いた。


「では、この欄は無効ですか」


「無効ではありません。家側の見た範囲を、本人到達と混ぜないだけです」


リディアは表を三つに分けた。


後見人確認欄。


本人到達欄。


生活影響未了欄。


一つ目には、こう書く。


『後見人確認――伯爵家在籍、旧台所係勤務、退去日、携行品袋の所在まで。本人読了・受領・帰着の証明には使わない』


二つ目は、まだ空ける。


『本人到達――母の料理帳閲覧、前掛け返還、計量匙用途確認、賃金手渡し、帰着先机読了まで未完了』


三つ目には、ニアたちの札を戻した。


ニアの夜薬棚。


カイルの帰宅灯。


エダの賃金袋。


メイの母の匙。


「後見人が私を知っていても、ニアの薬を飲めません。カイルの帰り道を歩けません。エダの袋を受け取れません。メイの匙が家族手順へ戻る音を聞けません」


ニアが、小瓶を胸に抱いた。


「家の人が『リディア様なら届いた』って言ったら、私の薬も終わりになるんですか」


「ならないわ」


「よかった。私、まだ今日の薬名を自分で読んでいます」


カイルは、帰宅灯の油皿を少しだけリディアの机へ近づけた。


「俺の帰る道も、伯爵家の後見人には見えないですね」


「見えません。だから、あなたの帰着欄はここに残します」


エダは賃金袋の紐を握ったまま、息を吐いた。


「後見人って、偉い人ですよね。それでも、私の受け取る手にはなれない」


「なれません。偉い人の確認は、偉い人が見た場所までです」


メイは、母の匙を包む布をそっと直した。


「じゃあ、リディアさんの前掛けも、家の人が『返したことにした』って言うだけでは、返らないんですね」


「返りません」


リディアは、本人到達欄の空白の端に、青い点をもう一つ置いた。


「私が自分で受け取り、読むまで、この空白は閉じません」


その言葉で、小竈横の机に並ぶ札が少し静かになった。


後見人の確認を破らない。家が知っている事実は事実として残す。けれど、その事実を、本人が受け取ったことや、誰かの生活が届いたことにしない。


書記は、しばらく三つの欄を見ていた。


「後見人確認は、家側資料として保管。本人到達代理には使用不可」


「はい」


「本人欄は、空白のまま保護」


「本人が読めるものが届くまで」


羽根ペンが、ようやく青い点の横へ小さく記録した。


『後見人確認済みは、本人到達済みではない』


小さな報酬は、その場で一つだけ出た。


エダの賃金袋に、後見人確認印ではなく、本人手渡し待ちの青札が貼られた。ニアの薬棚には、家側確認済みの写しが入らず、本人が読む薬名札が前へ出された。カイルの帰宅灯は、伯爵家確認済みの紙束へ戻されず、今夜点く油皿として机の端に残った。メイの母の匙も、家財確認済みではなく、家族手順未到達の布包みとして小竈の横に置かれた。


後見人の紙があるから、何かが片づくのではない。


後見人の紙があるから、どこまでしか片づいていないかが見える。


リディアは、自分の本人到達欄にも同じ青札を貼った。


『本人が読める形で、本人の机へ届くまで保留』


そのとき、封筒の底から、硬い紙片が一枚落ちた。


『本人到達代理不可の場合、旧台所係携行品は伯爵家保管品として一括返納済みに変更』


リディアは、前掛けのない自分の胸元に指を置いた。


今度は、届いていない物を、返したことに変えるつもりなのだ。


「返納済みという言葉も、生活に届くまで閉じません」

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