第14話 地図にない島と、山のてっぺんの怪鳥
霧が、ゆっくりと晴れていく。
「……見えてきたな」
ダーボンが、船首から前方を見つめた。
そこにあったのは――
地図には載っていない、小さな島。
切り立った岸壁。
中央には、一本の山が突き刺さるようにそびえている。
「……あんな島、
聞いたことないぞ」
パパイヤが目を丸くする。
「私も」
リィナが頷いた。
「王都の資料にも、
そんな島はなかったはずよ」
「……でも」
俺は、島を見つめる。
「誰か、
住んでる感じしない?」
よく見ると、
海岸付近に小さな桟橋があり、
煙が細く上がっていた。
⸻
船を寄せ、
俺たちは島に上陸した。
砂浜は整っており、
足跡も新しい。
「……人、いるな」
慎重に進むと、
簡素な集落が見えてきた。
「……来客だ!」
最初に声を上げたのは、
年配の島民だった。
すぐに何人かが集まり、
警戒しながらこちらを見る。
「我々は敵ではありません」
ダーボンが、
穏やかに名乗る。
「漂流者を探して、
ここに寄っただけです」
「……漂流?」
島民たちは顔を見合わせ、
やがて一人が言った。
「……なら、
ちょうどいい」
「ちょうどいい?」
嫌な予感しかしない。
⸻
集落の長老らしき人物が、
俺たちを家に通した。
「この島は、
昔から地図に載せるのを避けてきた」
「なぜ?」
リィナが尋ねる。
長老は、
山の方を指差した。
「……あの山の頂上に、
怪鳥が棲みついておる」
「怪鳥?」
「巨大で、
空を覆うほどの翼を持つ」
島民の声が、
少し震える。
「定期的に村を襲い、
家畜を奪い、
人を傷つける」
「……討伐依頼、
ってことだな」
パパイヤが呟く。
長老は、
深く頭を下げた。
「旅の方々。
どうか――
あの怪鳥を倒してほしい」
沈黙。
リィナが、
俺の方を見る。
「……どうする?」
「……」
俺は、
窓の外に見える山を見た。
頂上は雲に隠れ、
時折、
大きな影が横切る。
「……放っておけないな」
「でしょうね」
リィナは、
ため息交じりに笑った。
「どうせ、
あなたが放っておいたら
後で大変なことになる」
「それ、
信頼されてる?」
「悪い意味でね」
ダーボンが静かに言う。
「怪鳥が空を支配しているなら、
正面から登るのは危険だ」
「でもよ!」
パパイヤが拳を握る。
「困ってる人がいるなら、
行くしかないだろ!」
「……一致したな」
俺は、
小さく頷いた。
⸻
こうして俺たちは、
地図にない島で、
山の頂上に棲む怪鳥の討伐を
引き受けることになった。
まだ戦ってもいないのに、
なぜか分かる。
――
普通には終わらない。
山は高く、
空は広く、
怪鳥は空を支配している。
だが。
俺たちには、
これまで通り――
だいたい全部壊してきた実績がある。
問題はただ一つ。
今回は、
どこまで被害を抑えられるかだ。




