44部
山本と上田は身を屈めて拳銃を構えた。
ドアの外で待機していた三浦が入ってきて、状況を確認して、大井のところに駆け寄った。
大井は左腕から血を流してうずくまり、唸り声をあげていた。
三浦は割れた方の窓を確認して、大井を物陰に連れ込んだ。
その様子を見て山本が
「三浦、大井さんは?」
三浦は持っていたハンカチを裂いて大井の左腕を縛りながら、
「左腕に負傷してます。出血が多いですが、命には別状無さそうです。」
「わかった。
上田、狙撃手は?」
割れた窓際に立って、窓の外を見ていた上田に確認すると、
「ダメです。
付近にそれらしい人影はないです。
狙撃が外れたということは遠いところから狙った可能性もありますから、迂闊には移動できません。」
「応援を呼んで、待機だ。
三浦、大井さんの出血量だとどれくらいもつ?」
「医者じゃないから正確にはわかりませんけど、出血箇所は止血はしました。でも、できるだけ早く処置した方が良いと思います。」
山本は立ち上がり、窓の所に立った。急に真横に来た山本を見て上田が焦りながら、
「な、何してるんですか!?
危ないですよ!」
「この状況で俺が狙撃されれば、狙撃手はこの辺にいる。
でも、既に逃げてる可能性もあるだろ?」
山本が落ち着いて言い、上田は真剣に
「いや、それだと警部が撃たれるじゃないですか。
応援の到着を待ちましょう。」
「大井さんのケガが悪化する前になんとかしないといけないんだろ。
悠長にやってられるかよ。人命最優先だからな。」
「いや、警部の命が危ないって言ってるんですよ。」
山本は窓の外を見渡しながら、
「こんだけ撃てる暇があったのにアクションがないってことはもう逃げたんだろう。
救急車を呼んでくれ。」
上田は携帯を取り出して、救急に電話をしてから、応援の要請をした。
20分くらいして、パトカーのサイレンの音が近づいてきた。
車のドアを勢いよく閉める音が鳴り響き、会社のドアから藤堂と今川が駆け込んできた。
「皆さん、大丈夫ですか?」
今川が問いかけたが、割れた窓から外を眺めている山本を見て驚いた。藤堂が
「警部、何をやってるんですか!
狙撃犯がまだ近くにいるかもしれないんですよ?」
上田がため息をついて
「今川、藤堂、これについては俺がもう何回も言ってるから変わらないぞ。
それより、負傷者を安全な所に移動させてくれ。」
山本が何かを思いついたように
「大井さんの周りにブルーシートとかで目隠しをしてくれ。
外に出た瞬間を狙ってる可能性があるから、車に乗せるまでは目隠しを続けてくれ。」
「了解しました。
すみません、ブルーシートを用意してください!」
今川が他の警官に大声で言い、準備が整ったので無事に大井さんは救急車に乗った。
山本が部屋をうろつきながら、
「盗聴機がないか探してくれ。
大井さんが『社長』については話はじめてから狙撃されたってことは、ここの状況を監視していた可能性が高いからな。」
「警部、ここに弾痕があります。」
三浦が割れた窓の反対側の壁を指差して行った。
「入射角はわかるか?」
山本が聞き、三浦がペンを壁に垂直に当てて、
「やや、斜め上ですね。
でも、ほぼ平行に入ってると思います。」
山本は窓際に立って弾痕の場所を見てからそれと水平方向を確認した。ちょうどビルの隙間があり、その向こうにビルの屋上がある。
上田に向かって、
「あのビルの屋上に人をやって調べてきてくれ。」
「わかりました。」
上田はそう言って出ていった。
その後、盗聴機を探す機械で調べたところ会社の至る所から盗聴機が見つかった。




