42部
「被害者の身元は?」
「大隈保信、都内在住で38歳。
株式会社蝶々という会社の代表をしているようです。」
「死因は?」
「詳しくはまだわかりませんが、溺死の可能性が高いということでした。目立った外傷はありませんが場所から考えても事故ではないと思われます。」
「所持品は?」
「財布はポケットにありましたが、その他のスマホや鞄等は見つかっていません。
現在、ダイバーが海底を探索中ですが、どこから流れて来たのかは不明ですので、何か見つかるかはわかりませんね。」
刑事が報告を一通り聞いてから、
「東京湾に死体が浮くなんてことがまだあることにも驚きだよ。」
「蝶々の大隈さんが東京湾で水死体で発見されたそうです。
周囲の状況からでは事故と他殺の両方の可能性が考えられるらしく、捜査は続いているみたいですね。」
上田が言うと、山本が
「どんな人だったんだ?
ひきこもり支援をしていた人だろ?」
「ひきこもりの人の側に立って親身に相談にのっていたらしいです。
蝶々の顧客を回って話を聞いていても、会社自体に文句を言う人はいても大隈さん個人の悪口を言う人はいませんでした。」
三浦が言うと大谷が
「対象者によって、身の上話に少しずつ変化を加えていたようですが、その話を聞いて立ち直るきっかけをつかんだ人も多かったみたいですね。」
「つまり、殺されたとするなら理由は影山関係か?」
山本が聞くと上田が
「影山が人を入れ替える事業を、ひきこもり支援の事業に隠れて行っていたことに対して文句や批判をしたために殺されたと考えるのが一番あり得るかと思います。
ただ、あの会社への影山の関与が立証できていないので推測の域は越えないんですけど。」
「その会社には既に捜査員が行ってるのか?」
山本が聞き、大谷が
「都内にある事務所には社員にアリバイの確認や事情を聞きに行ったみたいですが収穫はなかったみたいですね。」
「よし、俺らも行ってみよう。」
山本はそう言ってドアの方に向かおうとしたのを上田が止めて、
「い、いや、待ってくださいよ。
捜査一課が動いてるのに勝手に捜査に首突っ込むのは良くないですよ。」
「俺らが行くのは大隈という人間の死んだ件ではなく、失踪者捜索のためと表向きに言っとけば大丈夫だろ。」
「そ、それは………………そうですね。」
上田も妙に納得してしまってそれ以上止める言葉が見つからなかったので一緒に行くことにした。




