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黒幕ー山本警部の事件簿⑥ー 『C.O.L』  作者: TAKEMITI


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40/57

40部

「………………と言うわけで、加藤へのお咎めは無しとなった。」

 竹中と伊達、松前以外が揃った特別犯罪捜査課で上田が武田から聞いた加藤の処遇を説明した。

 加藤は黙って頭を下げている。山本が

「辛気くさい話はここまでにして捜査に戻るぞ。」

 そう言って立ち上がると、藤堂が

「警部はそれで良いんですか?

 加藤さんが知らなかったことだったとしても、警部は犯人扱いされたんですよ?」

「俺が気にしないことを、お前がとやかく言う必要はないだろ。」

 山本が冷静に言うと、藤堂が何かを言おうとしたがその前に今川が

「捜査一課が納得した理由は片倉さんが知ってるんですよね?

 それは教えて貰えないんですか?」

 今川はまっすぐに片倉を見ていった。片倉は眼鏡をなおして、

「そのためにこの場にいるとは思われませんでしたか?」

「話して良いことなのか?」

 山本が一応確認した。片倉が知っているということは公安関係のことである可能性が高く、機密事項である場合もある。

 片倉は何事もなかったように

「構いません。

 皆様は既に機密事項の大半をご存知になられていますので、中途半端に知っているよりはしっかりと理解していただいた方が良いでしょう。」

「警察の上層部に政府転覆を狙う人間がいるってやつですか?」

 上田が聞き、三浦が

「本当にそんな人達がいるってことなんですか?」

「それはまだわかりません。

 ただ、加藤さんの先輩である木下警部補は悪人ではありません。」

片倉は静かにそう言い、

「木下警部補は、私と同じ公安の人間でした。

 今回の彼の役割は影山とそれに連なるグループの中に潜入して、真の黒幕を暴くことでした。

 正直に言うなら、立場が、役割が違えば死んでいたのは私になっていたかもしれません。」

「二重スパイ………………?」

 加藤が呟き、今川が

「公安の人間が潜入して、犯罪グループや監視対象を調べる話は聞いたことがありますが、加藤の先輩はずっと警察官だったんですよね?

 いつから公安の人間になったんですか?」

「警察の中から優秀な人材を引き抜くことはあることです。

 木下警部補に関して言うなら、5年前には既に公安の人間として捜査をしながら、警察官としても頑張って活動されてました。」

「木下さんは……………………誰を調べていたんですか?」

加藤が小さな声で聞いた。片倉は少し考えてから、

「武田総監、上杉刑事部長の二人です。

 あの二人が、私に事情を聞けと言われたのは、おそらく自分達が調べられていたことを知っていたからでしょう。

 どのように説明しても言い訳にしか聞こえなくなる可能性がありますし、もし容疑が本当なら自白に繋がる可能性がありますからね。」

「政府の転覆を警視総監が企む理由は?」

山本が聞き、片倉が落ち着いて

「それはまだわかりません。

 総監が所属している非公式なグループの一部の人間の考えで、総監達は関与していない可能性もあります。

 他にも可能性がありますが、現在の日本の情勢や世界中で起きていることを考慮すると動きがあるのもそう遠い話ではないかもしれません。」

「日本の変化が政府転覆の予兆だと言うことですか?」

 今川が聞くと、片倉は肩をすくめて

「可能性はあります。

確証ではありません。」

「そんな不確定なことのために木下さんは死んだんですか?」

 加藤が勢いよく言った。片倉は冷静に

「どんな小さな不安でも放置すれば、やがて大きな脅威となり日本を襲います。

 我々はすべての国民が安心して暮らせる国を維持するために働いているんです。

 木下の仕事のきっかけがどんな小さな出来事であっても、それがもとで国民を苦しめるような大惨事にならないと証明できるまでは、我々は『そんなこと』で片付けることはできないんです。」

 少しの間沈黙が続いて、山本が

「今回の件についてはこれで終わりだ。

 俺達がやらなければいけないのは、過ぎたことに文句を言うことでも、未来に起こるかもしれないな事件を未然に防ぐことでもなく、今、この瞬間に起こってる事件を解決することだ。

 さっさと、捜査に行くぞ。」

 山本はそう言って部屋から出て行った。上田と三浦も続き、片倉が今川に少し頭を下げてから出ていく。

 今川も頭を下げて、部屋を出た。いつまでもその場から動かない加藤の背中を藤堂が勢いよく叩き、

「何してるんですか、加藤さん。

 速く行きましょう、木下警部補の仇は加藤さんが捕まえないと行けませんからね!」

 こんな事態を引き起こしてしまった負い目を感じて、一歩が出なかったが藤堂の一発によっていつの間にか一歩踏み出していた。

 さっきまでは踏み出すべき道が見えなかったのに、今は明確に皆が出て行ったドアへと続く道が見える。

 そんなことを考えていると、藤堂が右手を掴み、無理やりにドアの方へと引っ張りながら、

「速くしないと置いてかれるじゃないですか。」

 いつもは振り回されてばかりな気がしていたが、今はその強引さがありがたいと思う。自然と涙がこぼれ出して頬を伝い、それを見た藤堂が慌てふためいて

「えっ、あっ、足の傷が痛みますか?

 それとも……………、えっ?さっきの背中への一発が泣くほど痛かったんですか?」

 そんな様子を見てると今度は笑えてきた。そして涙を拭ってから、

「藤堂………………………」

「な、なんですか?」

「……………ありがとう。」

 藤堂は目を丸くしてから、笑顔で

「加藤さんの世話をするのが僕の役割ですから。」

「いや、お前の面倒を見るのが俺の仕事だよ。」

「いやいや、加藤さんの…………………」

 藤堂が言い返そうとしたところで、今川が戻ってきて、

「二人とも速く来ないと警部がかなり怒ってるぞ。」

「ヤバい、行きましょう加藤さん。」

「そうだな、警部は待たされるの嫌いだからな。」

 加藤と藤堂が二人で笑い合っているのを見て、今川は仲直りできたのかと兄弟喧嘩の後始末に来た長男のような気持ちで二人を見た。

 すると二人が今川の横を勢いよく通り抜け、二人揃って

「今川さん、速く行きましょう!」

 二人を呼びに来たのに置いていかれて、なんとも言えない気持ちになったが、今川も二人を追いかけて走った。


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