第九話『魔女狩りと魔法使いの開戦』1
大ホールに地響きが轟き、爆発音が響き渡ったのは、本公演『タイタニック』が上演開始された直後のことだった。
まだ冒頭部分の乗客がタイタニック号に乗り組んでいく途中のことで、異音はすぐに観客まで伝わり、遠くからは火災報知器が鳴る警告音が聞こえて来る。
ホール中がざわつき始め、演技も一時ストップされると、安全確保のために客席の照明が再点灯された。
舞台上に上がっている演者たちもどうしていいか分からず、立ちつくしてしまうと、客席に座る観客達は何が起こったのか分からず立ち上がり始めた。
そして、慌てふためいた人からホールを飛び出していくと、それが周りに連鎖反応を起こし、会場アナウンスの”案内に従い落ち着いて行動してください”という言葉も無視して次々にホールから引き揚げていく。
不審な爆発音のみで具体的な状況がまるで分からないまま、あっという間に混乱の渦に包まれる劇場。その只中で唯花は一人、声を失うほどの不安に襲われていた。
(私……行かなきゃ、生き残らなきゃ!)
周りに頼る相手のいない唯花はどうしていいか分からず、辺りを見渡すが、自分で判断して行動するしかないと本能的に判断すると、舞台上へと向かって混乱する人混みを掻き分け必死に走った。
内から湧き出る恐怖はあったが身体は自然と反応した。
観客席と舞台とを遮る柵を乗り越え、集成材を素材としたフローリングが張られた舞台上へと唯花は難なく上がることが出来た。
「真理さん!! 真守さん!! 私です!! 永弥音唯花です!! どこにいらっしゃいますか?!」
危機感を煽って来る不快な物音に聴覚が襲われる中、唯花は信頼する真理と真守に判断を仰ごうと声を張り上げ、二人の姿を必死になって捜した。
何がこの劇場で起こっているかは分からない。
でも、それは誰もが同じだと考えると、まずは二人の合流しなければとならないと唯花は判断した。
そして、劇団員が唯花の姿に気付き、腕を掴むと、そのまま唯花は舞台袖へと連れ出されていった。




