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split tears~西暦2055年香港劇場火災事故の真相~  作者: shiori@


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第八話『招かれざる者達』3

 広大な面積を誇るドームの地下にある静けさに包まれた駐車場。そこは地上の熱気とは真逆の冷たい空気が漂う。

 一般客は使用できず、関係者のみが利用可能となっているこの地下駐車場でジュピタークラウンのメンバーは車内でじっと息を潜め待機していた。

 催眠から洗脳まで使いこなすことの出来る超能力を持った彼らにとっては関係者と偽り、会場内に忍び込むことは造作もないことだった。


「始まったようだな……我々は会場の混乱に乗じて目的となる標的を狩りに出る。準備はいいな?」


 公演開始時刻を迎え、緊張が高まる中、ワゴン車の運転席に座るライルがメンバーに最終確認を取る。

 暗い車内の中で、助手席に座った杖を手にしたレイラも、アリシア達も凛々しい表情を浮かべ頷く。

 

 これから魔女狩りを実行に移す彼らは一般人を襲うつもりは毛頭ない。

 ただ、標的となる魔女を狙い、その眷属である魔法使いを殲滅する。

 テロ行為に興じる反アリス派組織とは違い、それが彼らの目的だった。


「いつもながら、無差別な殺人とは趣味が悪いぜ……死体を見て喜ぶような人間にはなりたくねぇな」


 気持ちが落ち着かず声を漏らすポルフ。

 初の海外任務で緊張しているのは、ポルフだけではない。

 

「人殺しっていうのは、自然とやってるうちに慣れていくんだろうが。

 テロイズムに染まったあいつらに真っ当な感情なんてないだろ」


 ポルフと同じくまだ十四歳の少女であるレディアンも言葉を続ける。

 超能力研究機関で訓練を受けてもなお、若さから恐怖心は拭えてはいない。

 何とか薬を頼り、興奮を抑えて冷静さを維持させているのが現状だった。


「肩の力を抜いて。リファちゃんも焦る必要はないわよ。訓練通りにやれば大丈夫よ」

「はい、シスター。微力ながら組織の助けになれるよう、全力を尽くします」


 重苦しい戦いの前の慣れない空気に暗い表情を浮かべ、身体を固くさせるリファを心配して声を掛けるシスター、レイラ。

 金色の長い髪を下ろした、幼さの残るリファは声が僅かに震えてしまうが、勇気を振り絞って返事をした。

 

 刻々と迫る、作戦開始予定時刻。

 テロ実行部隊と直接の連絡は取らない取り決めとなっている以上、ファイアウォールで視覚認識遮断を施したワゴン車の中で待機するのが最も任務に支障が出ないで済む方法となる。

 こうしてワゴン車の中にいる以上は、周りからはワゴン車の姿は可視化されることがないため、全員見つかる可能性がなくなる。


 指揮官であるライルの言葉に従い、待機する一同。

 窮屈な車内の中で、作戦開始の時を待つ。

 

 ――本公演が予定通り開始されて約十分、予定調和のまま設置された爆弾が爆発する轟音が地下駐車場まで鳴り響いた。


 一気に緊張感が増す中、ライルによって車のエンジンが切られる。

 待ちくたびれたとばかりにワゴン車から一斉に降りていくメンバー達。


 予定通り、地上階に仕掛けられた爆弾は爆破され、戦端は開かれた。


 対策は講じられたものの、予告されたテロ行為を阻止することが出来ず、魔女狩りを執行するジュピタークラウンのメンバーは黒衣の衣装を身に纏い、作戦遂行のため動き出した。

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