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女子校で男子は僕だけですが、言霊チートがあるので問題ありません  作者: 黒海苔


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六話:もやし

 次は数学の時間だ。数学も文系と理系で分かれているので、久遠さんたちは帰ってこない。


 しばらくすると、早乙女先生がやってきた。どうやら数学の担当はこの先生らしい。


「は〜い、それじゃあ皆さん席に座ってくださぁ〜い」


 そしてチャイムが鳴り、号令をする。


「今回は二学期最初の授業なので、復習をしたいと思いま〜す。じゃあ、不定積分の練習問題のプリントを配るので、解いてくださ〜い。一人で解いてもいいですし、ペアとかグループで解いても大丈夫ですよ〜。決して、二学期最初の授業でめんどくさくなって、練習問題を解かせているわけではないので、勘違いしないでくださいね〜。それじゃあ、30分後くらいに答え合わせするので、それまで解いていてくださ〜い。それまで私は寝てるので、それじゃあおやすみなさい」


挿絵(By みてみん)


「……ん?」


 先生が寝だしたぞ……?


 周りを見渡しても、みんな普通にプリントを解いている。これが普通なのか?


 ちょっと九条さんに聞いてみよう。


「九条さん?」


「……何? なにか分からないことでもあった?」


「いや、授業の雰囲気がさっきと全然違ってて……」


「ああ、早乙女先生はそういう人だから……」


「え?」


「早乙女先生って、真面目そうに見えて意外とサボり魔だから……それで『決して、二学期最初の授業でめんどくさくなって、練習問題を解かせているわけではないので、勘違いしないでくださいね〜』みたいなこと言ってるけど、それで本気でサボってるのを誤魔化せていると思っている人だから……まあ、みんな面白がって指摘してないんだけどね……本人は真面目な先生を演じきれているって本気で思っているそうだよ……」


「……そうなんだ」


 人の世には、こんな面白い人間もいるのか……。


「まあ、みんなもう一年半ぐらい先生と付き合っているから慣れて、黙々とプリントをやるようになったけど……」


「なるほど……」


「せっかくだし、一緒にプリント解く? 今回はそんなに難しい内容じゃないから解けると思う……」


「うん。それじゃあ一緒に解こうか」


 九条さんと机をくっつけて、プリントの問題を見る。


挿絵(By みてみん)


 うん? 分数の横になんか変なもやしみたいなものがついているんだけど? 印刷ミスかな?


「……どうしたの?」


「いや、なんか分数の横になんか変なもやしみたいなものがついてるんだけど……」


「ああ、それは∫(インテグラル)って言って、積分の記号……これはそんなに難しくないから、今から説明する……」


 そう言って、九条さんによる説明が始まった。


「まあ、積分は連続的な総和って意味なんだけど、そういう細かい話は置いておいて、最初はパズルみたいなものだと考えたらいい……」


「パズル?」


「うん……まず、積分をやるにはこれらの公式を覚えて……」


 そう言って、九条さんは8個の公式を書く。


 ①∫xⁿdx = xⁿ⁺¹/(n+1) + C

 ②∫(1/x)dx = log|x| + C

 ③∫sinx dx = -cosx + C

 ④∫cosx dx = sinx + C

 ⑤∫1/cos²x dx = tanx + C

 ⑥∫1/sin²x dx = -1/tanx + C

 ⑦∫eˣdx = eˣ + C

 ⑧∫aˣdx = aˣ/loga + C


「そして、積分ってこれらの公式をいい感じに当てはめて解くだけだから……そう考えると簡単でしょ? まあ、これらの公式が使えない時も出てくるんだけど、その時の話は置いておいて……まずこの問題を見てみようか……」


 問題を見ると、


 ∫ (x-1)² / x³ dx


 と書かれている


「これ、そのままだと無理」


「うん。」


「でも――分けたら解ける」


 九条さんは式を書き換える。


(x-1)² = x² - 2x + 1


「これをx³で割ると」


 x²/x³ - 2x/x³ + 1/x³


 ↓ 約分すると


 1/x - 2/x² + 1/x³


「分母にxがあるなら、マイナス乗で考える……つまり、x⁻¹ − 2x⁻² + x⁻³」


「1/xは、公式の②をそのまま使えば良くて、- 2/x²と、+ 1/x³は、− 2x⁻² + x⁻³と表せるから、公式の①を使える」


「……!」


「だからあとはそのまま」


 ペンが走る。


 ∫1/x dx = log|x|

 ∫ − 2x⁻² dx = 2x⁻¹

 ∫ x⁻³ dx = − 1/2 x⁻²


「だから答えは」


 log|x| + 2x⁻¹ − 1/2 x⁻² + C


「はい、終わり」


「……え?」


「簡単でしょ?」


 簡単ではない。


 でも――


 さっきまで意味不明だった“もやし”が、

 ちゃんと意味のあるものに変わっていた。


「こんな感じで、最初の方の問題は公式を使えば解けるようなものばっかりだから……朝倉くんでも解けると思う……後半は三角関数の半角の公式とかを使うから今は無理かもだけど……でも、家で三角関数とかを勉強したら簡単に解けるようなものばっかりだから……朝倉くんなら解けるようになると思う……それじゃあ、この問題を解いてみようか……」


 そしてそんな感じで説明が続き――


 最初は何も分からなかったはずなのに、気づけばペンが止まらなくなっていた。


 完璧ではない。

 それでも――解けている。


 30分後には、公式を見ながらではあるが、自力で何とか解けるまでに成長できていた。


「うん……朝倉くんには才能がある……こんな感じならすぐに授業についていけるようになるよ……まあ、家での復習は必須だけど……応援してる……」


「いや、本当にありがとう。ここまでできるようになったのも九条さんのおかげだよ。なんてお礼すればいいのか……」


「別にすぐにお礼しなくても大丈夫……人は誰しも支えながら生きているから……下水処理の人とか、すべての恩を返し切るのは不可能だと言ってもいい……それでも、恩を返したいなら、誰かに同じことをやったらいいと思う……それで、またその人が誰かに同じことをする……それが繰り返されれば、世界平和も夢ではない……」


 いや、スケールがデカいな。

 でも、確かに――みんながそういう考えを持っていたら、世界は平和になるのかもしれない。


「確かに……そうか。それなら一日一善で、毎日一つ、どんな小さいことでもいいから、誰かにいいことをしようかな?」


「うん……いいと思う……」


「じゃあ、今回は本当にありがとう……またね」


「うん……また……」


 そう言って机を離し、自分の席に戻る。


 そして先生が時間通りに起き、問題の解説をする。


 前半の問題しか解くことはできなかったけど、だいぶ成長することができた。三平方の定理とかで調子に乗っていた過去の自分をぶん殴りたい。


 そして、数学の時間が終了した。


 次は三時間目と四時間目――体育の時間だ。

x²とかいちいち打つのめんどくさいので、詳しく数学を解説する話は多分これ以降出てきません。

面白いと感じましたら、ブクマ、評価、コメント等をよろしくお願いします。

次話の投稿はだいぶ先になりますので楽しみにお待ち頂けたら幸いです。

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